結婚について、本気出してみた。
ビールなんて、冷えていればどこだって美味い。
事実、カンバラ息子の言う「美味いビールの置いてあるお店」は、普通の大衆居酒屋だった。
「お通しはカットで」
筒香花菜は、隣のテーブルに座ったばかりのサラリーマンのテーブルの上を見た。お通しはブリ大根らしかった。
ブリ大根。筒香花菜は大好きで、これをビールで流し込めたら……と想像した。このお通しカットは痛い。
「バターコーンと、冷やしトマト、あと焼き鳥の皮を4本……あ、たれの方で」
おまけに注文内容も最悪。これは酔えないと悟った筒香花菜。
「東北の方ではトマトに砂糖かけるって知ってた?」
「あ、はい」
会話もつまらなかった。奢りって言ってたのに、結局割り勘になった。
帰り道も一緒。隣同士。トイレで用を足していると、隣の部屋からAcid Black Cherryのヘタクソな「愛してない」が聴こえてきた。
次の日、筒香花菜は仕事をやめた。