結婚について、本気出してみた。




ビールなんて、冷えていればどこだって美味い。


事実、カンバラ息子の言う「美味いビールの置いてあるお店」は、普通の大衆居酒屋だった。


「お通しはカットで」


筒香花菜は、隣のテーブルに座ったばかりのサラリーマンのテーブルの上を見た。お通しはブリ大根らしかった。


ブリ大根。筒香花菜は大好きで、これをビールで流し込めたら……と想像した。このお通しカットは痛い。


「バターコーンと、冷やしトマト、あと焼き鳥の皮を4本……あ、たれの方で」


おまけに注文内容も最悪。これは酔えないと悟った筒香花菜。


「東北の方ではトマトに砂糖かけるって知ってた?」


「あ、はい」


会話もつまらなかった。奢りって言ってたのに、結局割り勘になった。


帰り道も一緒。隣同士。トイレで用を足していると、隣の部屋からAcid Black Cherryのヘタクソな「愛してない」が聴こえてきた。


次の日、筒香花菜は仕事をやめた。



< 21 / 53 >

この作品をシェア

pagetop