結婚について、本気出してみた。
「あ、ごめんなさい。僕の話ばかり」と若井昌磨が頭を下げた。
「筒香さんの趣味はなんですか?」
「うーん、強いて言えば人間観察……ですかね」
「人間観察」
「例えば、駅前のマックとかって二階建てだったり、三階建てだったりするじゃないですか?」
「浦安駅のマックとかですかね?」
「まさに浦安駅のマックとかです。そこの窓際の席に座って、ターゲットを決めるんです」
「ターゲット」
「例えば、スーツを着た男の人だとしましょう。その人をじーっと眺めながら、この人は歳はいくつくらいで、こういうお仕事をしていて、年収はいくらで、家族構成はこうで、これからどこに行くか、何を買うか、休日の過ごし方なんかを想像して楽しむんです」
「なかなか面白い趣味をしてますね」と若井昌磨が言った。
「今度、ぜひご一緒したいもんです」
「いいですよ。船橋からの浦安であれば、競馬もいけますし」
「ボートも行けますね。ボートも結構ロマンがあって面白いんですよ」