結婚について、本気出してみた。
「なんだ、来てたのか」
「あ、はい」「まあな」
カンバラ息子の問いに、筒香花菜が答えた。それと同時に、なぜか若井昌磨も反応した。そこで、「え?」と顔を見合わせる筒香花菜と若井昌磨。
「え、筒香さん。コイツと知り合いですか?」
「お隣さんなんです。え、『コイツ』って、まさか若井先生もですか?」
「ええ、コイツとは高校の同級生なんですよ」
「へえ、高校の」
「筒香さん、若井とはどこで?」
「ああ、以前、若井医院に入院してた時の主治医なんです。あ、あの時はどうもお世話になりました」
「いえ、元気になられて何よりです。しっかし、こうして同じ映画の前で同時に手が止まるだけでも珍しいのに、4人一気に、しかもそれが、全員知っている人なんてすごい奇跡ですよ」
「全員? あの、若井先生もこの女性と知り合いなんですか?」
「あ、ええ、宗教の勧誘で一度」
「なんだ、お前もか」
「『お前もか』ってカンバラさんも?」
「宗教の勧誘でな。ひょっとして、筒香さんもか?」
「宗教です」