相会い傘歌
「そんな風に捨て犬みたいな顔されたら、帰りずらいって言ってんの」
………………。
「……え?」
「傘、盗まれた?」
「!」
この時の私の内心を正確に測るのは難しかった。
不意に近づけられた彼の端正な顔。
その口から捨て犬と評されてしまったこと。
そして私が今置かれてる状況を、正確に見抜かれたこと。
それらの事実を起因として一気に感情が生まれ、私の頭の中をぐちゃぐちゃに駆け回っていた。
嬉しいやら、悲しいやら、情けないやら。
私は手に余る感情たちをとっさに分別出来ず、すべて羞恥心の棚に押し込めてしまった。