相会い傘歌
筋違いなのは承知でも彼が妬ましい。

あなたは濡れずに帰るけど、私はびしょ濡れになりながら帰るんだ。


これだから雨は嫌いなんだ。

情緒が不安定になるから!


「……」

…?

どうしたんだろうか?

彼は傘を広げたっきり、突っ立ったままでその場を動こうともせずそっぽを向いている。


何してるんだろう。

早く行っちゃえばいいのに。


「……」

「……」

「……はぁ」

「……?」


ため息ひとつ。

端正な唇からこぼれるのが見えた。


彼はまるで何かを諦めるような、観念したような様子で私の方に顔を向けて言った。
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