万能王女は国のために粉骨砕身頑張ります
会社で急死!?
ーー新稲莉々(にいなりり)、二十七歳。会社であっけなく人生を終える…………
「なんでよ! こんなに真面目に生きていたわたしが、こんな呆気ない幕切れ迎えなきゃいけないのよっ! 早死にしなきゃいけないようなこと、何かした!?」
莉々は、自分の葬儀を空から眺めながら喚いた。死んだ自覚も記憶もあるとはこれいかに、と思わなくもないが、それよりも妙に腹が立って仕方なかった。
どうやら社葬らしい。
しかもマスコミの姿も見える。
「経費の無駄よ!」
平社員が、逆恨みしてテロリストと化した顧客から会社を守り、会社の玄関先で死んだ。たしかにそう滅多にあることではないが、いくらなんでもこれは仰々しいと思う。
「質素でいいのに……」
とは思うが、莉々には葬儀を執り行う身内がいないのだから已む無し、なのだろう、きっと。
祭壇に飾られた莉々の遺影は、モスグリーンの会社の制服を着て完璧な美しさで微笑んでいる。社内ミスコンで全国一位になったときの写真だ。
スクリーンに流れる映像はつい先日、広報向けに撮った映像だ。
これらは、このような場ではなくて、来月の記者会見で使われるはずだった。
「社運をかけた一大プロジェクトの契約もぎ取ったのわたしだし、業務改革に邁進したり福利厚生充実させたり、ヒット商品出したり、とにかく業績と株価上向きにした功労者なのに、なんであっさり死ななきゃいけないのよ、このわたしが! ここまで、かなり苦労したんだからもっといい暮らしさせてよ! 出世は? 初の女性重役間違いなしって言われてたのもう死んでるってどういうことよ! 理不尽よ、クレームは誰につけたらいいの!」
しかし、会場を見るうちに、怒りは萎んでいく。
上司はぽかんとした表情で莉々の遺影を眺めているし、同期や後輩は目を泣き腫らしている。続々と、取引先の人も駆けつけてくる。みんな、泣いている。
どうやら莉々は、相当周囲の人に愛されていたらしい。
見知った顔が涙にぬれるのは心苦しい。身寄りがないため、嘆き悲しむ親の姿を見なくて済むのが不幸中の幸い……だと思ったのだが。
「莉々、あんたこっち来るの早すぎるでしょう」
忘れかけていた母の声がして、ぎょっとしてそちらを見る。
「……お、お母さん!?」
「もう……ちょっと目を離したすきに来てしまうなんて……。莉々、あんたって子は……」
涙を拭う女性。間違いない、懐かしい母。
思わず「お母さん!」と抱き着いてしまう。母も、しっかりと莉々を抱きしめてくれる。
「久しぶりね……」
「うん、ずっと会いたかったよ」
「美しく賢く育っていくから、お父さんと一緒に安心して見ていたのに……」
五歳の時に死に別れた時の姿で母がそこにいる。
だが、着ているものが――はっきりいって、変だ。
「お、お、お母さん、もしかして……天女だったの?」
「なんでよ! こんなに真面目に生きていたわたしが、こんな呆気ない幕切れ迎えなきゃいけないのよっ! 早死にしなきゃいけないようなこと、何かした!?」
莉々は、自分の葬儀を空から眺めながら喚いた。死んだ自覚も記憶もあるとはこれいかに、と思わなくもないが、それよりも妙に腹が立って仕方なかった。
どうやら社葬らしい。
しかもマスコミの姿も見える。
「経費の無駄よ!」
平社員が、逆恨みしてテロリストと化した顧客から会社を守り、会社の玄関先で死んだ。たしかにそう滅多にあることではないが、いくらなんでもこれは仰々しいと思う。
「質素でいいのに……」
とは思うが、莉々には葬儀を執り行う身内がいないのだから已む無し、なのだろう、きっと。
祭壇に飾られた莉々の遺影は、モスグリーンの会社の制服を着て完璧な美しさで微笑んでいる。社内ミスコンで全国一位になったときの写真だ。
スクリーンに流れる映像はつい先日、広報向けに撮った映像だ。
これらは、このような場ではなくて、来月の記者会見で使われるはずだった。
「社運をかけた一大プロジェクトの契約もぎ取ったのわたしだし、業務改革に邁進したり福利厚生充実させたり、ヒット商品出したり、とにかく業績と株価上向きにした功労者なのに、なんであっさり死ななきゃいけないのよ、このわたしが! ここまで、かなり苦労したんだからもっといい暮らしさせてよ! 出世は? 初の女性重役間違いなしって言われてたのもう死んでるってどういうことよ! 理不尽よ、クレームは誰につけたらいいの!」
しかし、会場を見るうちに、怒りは萎んでいく。
上司はぽかんとした表情で莉々の遺影を眺めているし、同期や後輩は目を泣き腫らしている。続々と、取引先の人も駆けつけてくる。みんな、泣いている。
どうやら莉々は、相当周囲の人に愛されていたらしい。
見知った顔が涙にぬれるのは心苦しい。身寄りがないため、嘆き悲しむ親の姿を見なくて済むのが不幸中の幸い……だと思ったのだが。
「莉々、あんたこっち来るの早すぎるでしょう」
忘れかけていた母の声がして、ぎょっとしてそちらを見る。
「……お、お母さん!?」
「もう……ちょっと目を離したすきに来てしまうなんて……。莉々、あんたって子は……」
涙を拭う女性。間違いない、懐かしい母。
思わず「お母さん!」と抱き着いてしまう。母も、しっかりと莉々を抱きしめてくれる。
「久しぶりね……」
「うん、ずっと会いたかったよ」
「美しく賢く育っていくから、お父さんと一緒に安心して見ていたのに……」
五歳の時に死に別れた時の姿で母がそこにいる。
だが、着ているものが――はっきりいって、変だ。
「お、お、お母さん、もしかして……天女だったの?」
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