万能王女は国のために粉骨砕身頑張ります
そのころ、城下町の一角では、黒い鳥が集まっていた。
死肉を喰らい疫病を撒き散らすこともあり、不吉とされる鳥だが、民は追い払うこともしない。
飢えて、あるいは、病で死んだ民が出た。
死人が出たが、埋葬するための墓地を持っていないため城下の外れに穴を掘って埋めるしかなかった。しかし、穴を掘った人間の体力不足で深い穴が掘れず、遺体は鳥や獣に掘り返されてしまった。
さすがにそれはまずいので、棒や小石で追い払うが、獣の方も人間たちの方に徹底的にやり返す気力がないことを察しているので、少し逃げては戻ってくる。
「今日は……王城でパーティーらしい」
頬がこけた男が言う。傍らの男も似たようなものだ。だが、彼らはパンを買い、家で待つ子どもたちの靴も買えた。
ここ最近は王女の希望で王城にいながら川遊びができるよう、川の流れを変える大規模工事が行われている。
そのため、上級・中級スラムに住む男性には作業員としての声がかかり、女性や高齢者にも事務仕事が大量に回ってきている。そのため、彼らは久しぶりにまともに食事をしているが――もとより体力の落ちた人々、工事現場で命を落とす者も少なくない。
「グウェイン公爵やティートン伯爵家なら、施しがあるんだが……」
「ああ、王家主催だとそれも期待できんが……行ってみるか、近くまで」
道端を歩いていた幼子が、ぱたっと倒れた。慌てて母が助け起こすがその母も、やせ衰えている。
「……可哀想になぁ……。あそこは、亭主が王女に意見して、等級も最下級に落とされて大変だな」
「ああも痩せてたんじゃ、上級スラムの娼館でも働けんだろう」
男の一人が、ポケットから渇いたパンを一つ、取り出した。
「おい、最下級に無断で施すと、罰則が……」
「構うもんか。それに、等級にやかましい王女殿下は今頃、社交界の準備で浮かれて俺たちのことにまで気が回らんさ」
「それもそうだな……」
絵にかいたような、困窮した国土と腐った王侯貴族の構図である。
天の庇護、天が示す道や道理から漏それてしまった国は、こうも悲惨なのかと、雲海から覗いている天女たちは嘆く。
「莉々が覚醒しないから、あの子がどんどん国庫を圧迫しているわ……莉々、どうしたの……お母さんの声、聞こえないの?」
死肉を喰らい疫病を撒き散らすこともあり、不吉とされる鳥だが、民は追い払うこともしない。
飢えて、あるいは、病で死んだ民が出た。
死人が出たが、埋葬するための墓地を持っていないため城下の外れに穴を掘って埋めるしかなかった。しかし、穴を掘った人間の体力不足で深い穴が掘れず、遺体は鳥や獣に掘り返されてしまった。
さすがにそれはまずいので、棒や小石で追い払うが、獣の方も人間たちの方に徹底的にやり返す気力がないことを察しているので、少し逃げては戻ってくる。
「今日は……王城でパーティーらしい」
頬がこけた男が言う。傍らの男も似たようなものだ。だが、彼らはパンを買い、家で待つ子どもたちの靴も買えた。
ここ最近は王女の希望で王城にいながら川遊びができるよう、川の流れを変える大規模工事が行われている。
そのため、上級・中級スラムに住む男性には作業員としての声がかかり、女性や高齢者にも事務仕事が大量に回ってきている。そのため、彼らは久しぶりにまともに食事をしているが――もとより体力の落ちた人々、工事現場で命を落とす者も少なくない。
「グウェイン公爵やティートン伯爵家なら、施しがあるんだが……」
「ああ、王家主催だとそれも期待できんが……行ってみるか、近くまで」
道端を歩いていた幼子が、ぱたっと倒れた。慌てて母が助け起こすがその母も、やせ衰えている。
「……可哀想になぁ……。あそこは、亭主が王女に意見して、等級も最下級に落とされて大変だな」
「ああも痩せてたんじゃ、上級スラムの娼館でも働けんだろう」
男の一人が、ポケットから渇いたパンを一つ、取り出した。
「おい、最下級に無断で施すと、罰則が……」
「構うもんか。それに、等級にやかましい王女殿下は今頃、社交界の準備で浮かれて俺たちのことにまで気が回らんさ」
「それもそうだな……」
絵にかいたような、困窮した国土と腐った王侯貴族の構図である。
天の庇護、天が示す道や道理から漏それてしまった国は、こうも悲惨なのかと、雲海から覗いている天女たちは嘆く。
「莉々が覚醒しないから、あの子がどんどん国庫を圧迫しているわ……莉々、どうしたの……お母さんの声、聞こえないの?」