本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第9章 3 電話越しの涙
『…っ』
電話越しからは亮平の悲し気な嗚咽が聞こえて来る。その声を聞いているだけで私の胸も締め付けられそうになってくる。
「あのね、亮平…」
『す、鈴音…。俺…ひょっとすると忍に捨てられてしまうかもしれない…』
「!」
亮平は苦し気に私に訴えて来る。もし、今私に自信があったら…亮平がほんの少しでも私に好意を寄せてくれていると確信が持てたなら迷わず、こう伝えるのに。
『大丈夫、私がいるから』って。だけど悲しいことに亮平は私をただの一度も1人の女性として見てくれたことはない。いつまでたっても幼馴染から抜け出せる日が来る事はない。だから私は言った。
「亮平、大丈夫だよ。少なくとも亮平とお姉ちゃんがディズニーランドへ行った時はお姉ちゃんは亮平の事を<進さん>としてではなく、亮平と認識していたんだから。きっと病状が安定すれば、その内…」
言いながら、思う。私は何をやっているのだろうと。お姉ちゃんは私の事を酷く憎んでいる。そして私にとってお姉ちゃんは恋敵。なのに…私はお姉ちゃんに恋する自分の好きな男性の恋を応援しているのだから。
『そうか?本当にそう思うか?心の病が回復すれば、忍は俺たちが恋人同士だった事を思い出してくれると思うか…?』
涙声で尋ねてくる亮平。お願いだから、そんな声で訴えてこないで。聞いてるこっち迄辛く、悲しくなってしまう。私は自分の心を押し殺しながら亮平に応えた。
「勿論だよ、思い出すに決まってるでしょう?それよりありがとうね。亮平。私の代わりにお姉ちゃんに付き添いしてくれて。わたし、3日後が仕事休みの日だからその日に私物探してナースステーションに届けるね?」
『ああ。ありがとう』
「それじゃ、もう切るね」
『じゃあな』
それだけ短く言うと、私は電話を切って…溜息をついた。
「はぁ…何だか今の電話で食欲無くなっちゃったな…」
だけど、これ以上痩せてしまったら皆に心配かけさせてしまう。だから無理してでも食べなくちゃ。
こうして私は40分近く時間をかけて、何とか夜ご飯を食べ終えた。
食事を終えた後、ぼんやりとインターネットの配信ドラマを眺めていた。けれども内容は少しも頭に入ってこなかった。
「…何かお酒でも飲もうかな…」
けれど冷蔵庫の中に買い置きのお酒が1缶も無いことに気が付いた。そうだ、お酒無かったんだっけ。どうしよう?諦めようかな…。
だけど一度お酒を飲もうかと思った以上、その気持ちを抑える事は無理だった。
「コンビニに買いに行こう」
テーブルに手をついて立ち上がると、ハンガーラックに吊り下げていた分厚いダウンコートを羽織りマフラーを巻き付けた。そしてポシェットを肩から下げると玄関を出た。
「うわああ…綺麗な星…」
外に出て白い息を吐きながら見上げる夜空には美しい星々が見えていた。
「やっぱり冬場は星がきれいに見えるな」
そう言えば、川口さん…プラネタリウム喜んでくれたっけ。夜空を見上げ、ふと川口さんの事を思い出した。元カノとの仲はどうなったのだろう……?
****
「ありがとうございましたー」
コンビニの店員さんの声を聞きながら店を出た私は缶チューハイが3缶入ったレジ袋を持ってブラブラとマンションへの道のりを歩いていた。
あと少しでマンションという所までやってきた時、住宅街の街灯の下に1組の男女が立っているのが目に入った。
「え?」
けれど次の瞬間、私は目を見張った。
その男性は川口さんだった――
電話越しからは亮平の悲し気な嗚咽が聞こえて来る。その声を聞いているだけで私の胸も締め付けられそうになってくる。
「あのね、亮平…」
『す、鈴音…。俺…ひょっとすると忍に捨てられてしまうかもしれない…』
「!」
亮平は苦し気に私に訴えて来る。もし、今私に自信があったら…亮平がほんの少しでも私に好意を寄せてくれていると確信が持てたなら迷わず、こう伝えるのに。
『大丈夫、私がいるから』って。だけど悲しいことに亮平は私をただの一度も1人の女性として見てくれたことはない。いつまでたっても幼馴染から抜け出せる日が来る事はない。だから私は言った。
「亮平、大丈夫だよ。少なくとも亮平とお姉ちゃんがディズニーランドへ行った時はお姉ちゃんは亮平の事を<進さん>としてではなく、亮平と認識していたんだから。きっと病状が安定すれば、その内…」
言いながら、思う。私は何をやっているのだろうと。お姉ちゃんは私の事を酷く憎んでいる。そして私にとってお姉ちゃんは恋敵。なのに…私はお姉ちゃんに恋する自分の好きな男性の恋を応援しているのだから。
『そうか?本当にそう思うか?心の病が回復すれば、忍は俺たちが恋人同士だった事を思い出してくれると思うか…?』
涙声で尋ねてくる亮平。お願いだから、そんな声で訴えてこないで。聞いてるこっち迄辛く、悲しくなってしまう。私は自分の心を押し殺しながら亮平に応えた。
「勿論だよ、思い出すに決まってるでしょう?それよりありがとうね。亮平。私の代わりにお姉ちゃんに付き添いしてくれて。わたし、3日後が仕事休みの日だからその日に私物探してナースステーションに届けるね?」
『ああ。ありがとう』
「それじゃ、もう切るね」
『じゃあな』
それだけ短く言うと、私は電話を切って…溜息をついた。
「はぁ…何だか今の電話で食欲無くなっちゃったな…」
だけど、これ以上痩せてしまったら皆に心配かけさせてしまう。だから無理してでも食べなくちゃ。
こうして私は40分近く時間をかけて、何とか夜ご飯を食べ終えた。
食事を終えた後、ぼんやりとインターネットの配信ドラマを眺めていた。けれども内容は少しも頭に入ってこなかった。
「…何かお酒でも飲もうかな…」
けれど冷蔵庫の中に買い置きのお酒が1缶も無いことに気が付いた。そうだ、お酒無かったんだっけ。どうしよう?諦めようかな…。
だけど一度お酒を飲もうかと思った以上、その気持ちを抑える事は無理だった。
「コンビニに買いに行こう」
テーブルに手をついて立ち上がると、ハンガーラックに吊り下げていた分厚いダウンコートを羽織りマフラーを巻き付けた。そしてポシェットを肩から下げると玄関を出た。
「うわああ…綺麗な星…」
外に出て白い息を吐きながら見上げる夜空には美しい星々が見えていた。
「やっぱり冬場は星がきれいに見えるな」
そう言えば、川口さん…プラネタリウム喜んでくれたっけ。夜空を見上げ、ふと川口さんの事を思い出した。元カノとの仲はどうなったのだろう……?
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「ありがとうございましたー」
コンビニの店員さんの声を聞きながら店を出た私は缶チューハイが3缶入ったレジ袋を持ってブラブラとマンションへの道のりを歩いていた。
あと少しでマンションという所までやってきた時、住宅街の街灯の下に1組の男女が立っているのが目に入った。
「え?」
けれど次の瞬間、私は目を見張った。
その男性は川口さんだった――