本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第9章 4 私を責める言葉
何だか遠くの方から様子を見ると川口さんと女の人は少し険悪なムードに見えた。私はその場をやり過ごす為、俯いて2人から距離を取って歩いていた。それなのに…。
「加藤さんでしょう?」
通り過ぎる瞬間、川口さんから声をかけられてしまった。名前を呼ばれたのならしようがない…。
「あ…こんばんは…」
ペコリと頭を下げて、私は女の人とまともに目が合ってしまった。セミロングのストレートの黒髪にアイボリーのウールのコートを着たその人は泣いていたのか目が赤くなっている。これはもしかして修羅場だろうか?こういう時はすぐに立ち去った方がいいよね?
「あの、それでは失礼します」
ペコリと頭を下げて足早に立ち去ろうとした次の瞬間。
「待って」
何と、今度は女の人から呼び止められてしまった。でも本当に私の事を呼んだのかな…?恐る恐る振り向くと、じっとその視線はこちらを見ている。やっぱり私の事を見つめているのは一目瞭然だった。
「あ、あの…な、何か?」
何だか言いようのしれない嫌な予感を感じ、ついぎこちない返事になってしまう。
「貴女ですか?彼の好きな女性って」
「え?私が?」
突然の女の人の質問に訳が分からず、私は助けを求めるべく川口さんを見た。
「やめろ、すみれ」
すみれ…やっぱりあの女性が川口さんとプラネタリウムに行った時に電話を掛けてきた女性なんだ。
「加藤さんは何の関係も無い」
川口さんの言葉にすみれさんは声を荒げた。
「嘘よっ!今だってこんなに外は暗いのに、直人は彼女だとすぐに分かって声を掛けたじゃないのっ!」
「そ、それは・・・」
川口さんは困ったように俯く。いやいや、一番困っているのは私なんですけど。ただ缶チューハイを買いにコンビニへ行っただけなのに、その帰り道に通りすがりでまさかこんな修羅場に巻き込まれるなんて。
「あの…何か勘違いされているようですけど川口さんと知り合ったのは、私の引っ越しの担当をしてくれた方だったからなんです。それで、たまたま近所で会った時にお互いのマンションが隣同士だったってだけの関係ですから」
「本当に?本当にただそれだけの関係なんですか?一緒に出掛けたりしたことは?」
「そ、それは…」
すみれさんは追及の手を緩めない。思わず言いよどんでしまった。
「ほら、やっぱり…」
そして次にすみれさんは川口さんに向き直った。
「直人っ!最近連絡が取れなくなったのはあの人と付き合い始めたからのね?私、もう彼とは別れるって言ったでしょう?お願いだからやり直そうよ…」
そしてシクシクと泣き始め。
「す、すみれ…」
一方の川口さんも困り果てている。だけど一番困っているのは多分私で間違いないだろう。すみれさんは顔を上げて、私を見た。
「あなた…加藤さんていったわよね?酷いじゃないっ!人の彼氏に勝手に手を出して!」
すみれさんは今度は私を責め始めた。そして、何故かその姿がお姉ちゃんとかぶってしまった。以前お姉ちゃんは突然私に電話をかけてきて私から大切なものを奪っていくと言われてしまった。私ってやっぱりそういう人間だったの?無自覚で、誰かから大切な人を奪っていたの…?
「ご、ごめんな…さい…」
気付けば私は謝っていた。謝る?でも一体誰に?目の前のすみれさん?それとも可哀そうなお姉ちゃん?どっちにしろ私は悪い人間なのかもしれない。
「え?加藤さん…?」
川口さんの困惑する声が聞こえてくる。
「ほら!やっぱり謝った!貴女が原因だったのね?直人が私を振ったのはっ!」
すみれさんの非難する声が、お姉ちゃんの声とダブって私の心をえぐっていく。
「本当に…ごめんなさいっ!」
私は踵を返し、自分のマンションへ向かって駆けていく。
「待って!加藤さんっ!」
背後から川口さんの追いすがる声が聞こえてくる。だけど、私は振り向かずに走り続け…。
バンッ!
玄関に走りこむと、ずるずるとその場に座り込んでしまった――
「加藤さんでしょう?」
通り過ぎる瞬間、川口さんから声をかけられてしまった。名前を呼ばれたのならしようがない…。
「あ…こんばんは…」
ペコリと頭を下げて、私は女の人とまともに目が合ってしまった。セミロングのストレートの黒髪にアイボリーのウールのコートを着たその人は泣いていたのか目が赤くなっている。これはもしかして修羅場だろうか?こういう時はすぐに立ち去った方がいいよね?
「あの、それでは失礼します」
ペコリと頭を下げて足早に立ち去ろうとした次の瞬間。
「待って」
何と、今度は女の人から呼び止められてしまった。でも本当に私の事を呼んだのかな…?恐る恐る振り向くと、じっとその視線はこちらを見ている。やっぱり私の事を見つめているのは一目瞭然だった。
「あ、あの…な、何か?」
何だか言いようのしれない嫌な予感を感じ、ついぎこちない返事になってしまう。
「貴女ですか?彼の好きな女性って」
「え?私が?」
突然の女の人の質問に訳が分からず、私は助けを求めるべく川口さんを見た。
「やめろ、すみれ」
すみれ…やっぱりあの女性が川口さんとプラネタリウムに行った時に電話を掛けてきた女性なんだ。
「加藤さんは何の関係も無い」
川口さんの言葉にすみれさんは声を荒げた。
「嘘よっ!今だってこんなに外は暗いのに、直人は彼女だとすぐに分かって声を掛けたじゃないのっ!」
「そ、それは・・・」
川口さんは困ったように俯く。いやいや、一番困っているのは私なんですけど。ただ缶チューハイを買いにコンビニへ行っただけなのに、その帰り道に通りすがりでまさかこんな修羅場に巻き込まれるなんて。
「あの…何か勘違いされているようですけど川口さんと知り合ったのは、私の引っ越しの担当をしてくれた方だったからなんです。それで、たまたま近所で会った時にお互いのマンションが隣同士だったってだけの関係ですから」
「本当に?本当にただそれだけの関係なんですか?一緒に出掛けたりしたことは?」
「そ、それは…」
すみれさんは追及の手を緩めない。思わず言いよどんでしまった。
「ほら、やっぱり…」
そして次にすみれさんは川口さんに向き直った。
「直人っ!最近連絡が取れなくなったのはあの人と付き合い始めたからのね?私、もう彼とは別れるって言ったでしょう?お願いだからやり直そうよ…」
そしてシクシクと泣き始め。
「す、すみれ…」
一方の川口さんも困り果てている。だけど一番困っているのは多分私で間違いないだろう。すみれさんは顔を上げて、私を見た。
「あなた…加藤さんていったわよね?酷いじゃないっ!人の彼氏に勝手に手を出して!」
すみれさんは今度は私を責め始めた。そして、何故かその姿がお姉ちゃんとかぶってしまった。以前お姉ちゃんは突然私に電話をかけてきて私から大切なものを奪っていくと言われてしまった。私ってやっぱりそういう人間だったの?無自覚で、誰かから大切な人を奪っていたの…?
「ご、ごめんな…さい…」
気付けば私は謝っていた。謝る?でも一体誰に?目の前のすみれさん?それとも可哀そうなお姉ちゃん?どっちにしろ私は悪い人間なのかもしれない。
「え?加藤さん…?」
川口さんの困惑する声が聞こえてくる。
「ほら!やっぱり謝った!貴女が原因だったのね?直人が私を振ったのはっ!」
すみれさんの非難する声が、お姉ちゃんの声とダブって私の心をえぐっていく。
「本当に…ごめんなさいっ!」
私は踵を返し、自分のマンションへ向かって駆けていく。
「待って!加藤さんっ!」
背後から川口さんの追いすがる声が聞こえてくる。だけど、私は振り向かずに走り続け…。
バンッ!
玄関に走りこむと、ずるずるとその場に座り込んでしまった――