本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第9章 11 私の本心
駅までの道のりを気まずい思いで川口さんの後ろを黙ってついて歩いていた。
「…」
前を歩く川口さんは何を考えているのだろうか…。ずっと前を向いて黙って歩いている。
やがて駅前に出て来て人通りが激しい場所に出ると私はホッと安堵のため息をついた。そしてそのまま私達は駅へ向かって歩き続ける。そして改札の前にやって来ると川口さんはピタリと足を止めた。
「あ、あの。荷物、どうもありがとう」
背後から声を掛けると、初めて川口さんは私を振り向いた。
「…っ!」
振り向いた川口さんの顔はすごく悲しげだった。え…?どうしてそんな目で私を見るの?
「加藤さん」
突然川口さんが口を開いた。
「な、何?」
「ひょっとして俺…迷惑だった?」
「え…?」
いきなり何を言い出すのだろう?
「俺の事…迷惑に思ったから連絡もくれなかったのかな?そして、あのマンションを出るのも…」
「そ、それは違うから…っ!」
私があのマンションを一時的に出るのは…出るのは…?
「加藤さん?」
川口さんは怪訝そうに私を見ている。
そうだ。やっぱり私が実家に戻るのは…本当は亮平の傍にいたかったからだ。
亮平はお姉ちゃんの恋人なのに、お姉ちゃんの留守をいいことに実家に戻るなんて私は卑怯者。酷い人間だ。こんなだから私はお姉ちゃんに憎まれるのかもしれない。だけど…。
「ごめん」
突然川口さんが謝ってきた。
「え?何で謝るの…?」
「だって…加藤さん泣いているから。俺…泣かすつもり、全く無かったのに…」
え?私…泣いていたの…?
驚いて頬に触れるとそこは涙で濡れていた。慌ててポケットからハンカチを出して涙をぬぐった。
「ううん、この涙は…そ、その…違うから。川口さんのせいなんかじゃないから」
声を詰まらせながら首を振る。
「…はい、荷物」
川口さんは私にボストンバックを差し出して来た。
「あ、ありがとう」
私は手を伸ばしてボストンバックを受け取とった。
「加藤さん。俺は…加藤さんさえ良かったら特別な関係になりたいと思っていたんだ。ただのご近所さんでなければ…知り合いでも無く…」
「…」
何と返事をすればよいか分らず私は無言で川口さんを見た。
「でも今の加藤さんは俺の事を考えられる余裕もなさそうだね」
そして私を見るとニッコリ笑った。
「ごめんなさい…」
項垂れると、川口さんは溜息をついた。
「別に謝らないでよ。俺の方が余程加藤さんに迷惑を掛けちゃったんだから。だからもし相談したい事があるなら俺で良ければ話に乗るよ。少しでも加藤さんの力になりたいからさ」
「川口さん…」
「ごめんね。引き留めちゃって。それじゃ気を付けて実家に帰ってね」
それだけ言うと川口さんはにっこり笑い、くるりと背を向けると去って行った。
「ごめんなさい。川口さん」
ポツリと口の中で呟くと、私は改札を潜り抜けてホームへ向かった――
千駄ヶ谷へ降りった私はおばさんに電話を入れようとしたと時…。
「鈴音ーっ!」
改札を出ると亮平が人混みをかき分けながらこちらに向かってくる姿が目に入った。
「え?亮平…もう迎えに来てくれてたの?」
慌てて私も改札を抜けると、亮平が駆け寄って来た。
「もう来ていたの?私何時の電車に乗るかも言ってなかったのに。大分待ったんじゃないの?」
「ああ、全くだ。遅かったじゃないか、鈴音。どんだけ待ったと思ってるんだ?」
「え…でも駅に着いたら電話しようと思っていたんだけど?どうしてもう駅に来ていたの?」
「仕方無いんだよ。母さんに言われたんだから。鈴音を待たせない為にもう駅で待ってろって。ほら、それじゃ行こうぜ。車駐車場に停めてあるんだよ」
「うん。分った」
そして私と亮平は2人並んで駐車場を目指して歩き始めた――
「…」
前を歩く川口さんは何を考えているのだろうか…。ずっと前を向いて黙って歩いている。
やがて駅前に出て来て人通りが激しい場所に出ると私はホッと安堵のため息をついた。そしてそのまま私達は駅へ向かって歩き続ける。そして改札の前にやって来ると川口さんはピタリと足を止めた。
「あ、あの。荷物、どうもありがとう」
背後から声を掛けると、初めて川口さんは私を振り向いた。
「…っ!」
振り向いた川口さんの顔はすごく悲しげだった。え…?どうしてそんな目で私を見るの?
「加藤さん」
突然川口さんが口を開いた。
「な、何?」
「ひょっとして俺…迷惑だった?」
「え…?」
いきなり何を言い出すのだろう?
「俺の事…迷惑に思ったから連絡もくれなかったのかな?そして、あのマンションを出るのも…」
「そ、それは違うから…っ!」
私があのマンションを一時的に出るのは…出るのは…?
「加藤さん?」
川口さんは怪訝そうに私を見ている。
そうだ。やっぱり私が実家に戻るのは…本当は亮平の傍にいたかったからだ。
亮平はお姉ちゃんの恋人なのに、お姉ちゃんの留守をいいことに実家に戻るなんて私は卑怯者。酷い人間だ。こんなだから私はお姉ちゃんに憎まれるのかもしれない。だけど…。
「ごめん」
突然川口さんが謝ってきた。
「え?何で謝るの…?」
「だって…加藤さん泣いているから。俺…泣かすつもり、全く無かったのに…」
え?私…泣いていたの…?
驚いて頬に触れるとそこは涙で濡れていた。慌ててポケットからハンカチを出して涙をぬぐった。
「ううん、この涙は…そ、その…違うから。川口さんのせいなんかじゃないから」
声を詰まらせながら首を振る。
「…はい、荷物」
川口さんは私にボストンバックを差し出して来た。
「あ、ありがとう」
私は手を伸ばしてボストンバックを受け取とった。
「加藤さん。俺は…加藤さんさえ良かったら特別な関係になりたいと思っていたんだ。ただのご近所さんでなければ…知り合いでも無く…」
「…」
何と返事をすればよいか分らず私は無言で川口さんを見た。
「でも今の加藤さんは俺の事を考えられる余裕もなさそうだね」
そして私を見るとニッコリ笑った。
「ごめんなさい…」
項垂れると、川口さんは溜息をついた。
「別に謝らないでよ。俺の方が余程加藤さんに迷惑を掛けちゃったんだから。だからもし相談したい事があるなら俺で良ければ話に乗るよ。少しでも加藤さんの力になりたいからさ」
「川口さん…」
「ごめんね。引き留めちゃって。それじゃ気を付けて実家に帰ってね」
それだけ言うと川口さんはにっこり笑い、くるりと背を向けると去って行った。
「ごめんなさい。川口さん」
ポツリと口の中で呟くと、私は改札を潜り抜けてホームへ向かった――
千駄ヶ谷へ降りった私はおばさんに電話を入れようとしたと時…。
「鈴音ーっ!」
改札を出ると亮平が人混みをかき分けながらこちらに向かってくる姿が目に入った。
「え?亮平…もう迎えに来てくれてたの?」
慌てて私も改札を抜けると、亮平が駆け寄って来た。
「もう来ていたの?私何時の電車に乗るかも言ってなかったのに。大分待ったんじゃないの?」
「ああ、全くだ。遅かったじゃないか、鈴音。どんだけ待ったと思ってるんだ?」
「え…でも駅に着いたら電話しようと思っていたんだけど?どうしてもう駅に来ていたの?」
「仕方無いんだよ。母さんに言われたんだから。鈴音を待たせない為にもう駅で待ってろって。ほら、それじゃ行こうぜ。車駐車場に停めてあるんだよ」
「うん。分った」
そして私と亮平は2人並んで駐車場を目指して歩き始めた――