本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第10章 8 レトロな喫茶店で
「あ…た、隆司さん…」
まさか再びこんな場所で会うなんて…でも考えてみれば隆司さんの勤めている会社も錦糸町だった。今迄気づかないだけで、互いにどこかですれ違っていたかもしれない。
「元気だったか? 鈴音」
隆司さんは白い息を吐きながら近付いて来ると笑みを浮かべた。
「は、はい。元気でした…」
すると隆司さんは少しだけ眉根を寄せた。
「鈴音…顔色が良くないな?それに…随分痩せてしまったようだし…」
「そ、そんな事は…」
私は2人の関係を曖昧にしながら、隆司さんのマンションを出て行ってしまったので、申し訳ない気持ちで一杯だった。すると隆司さんは何かに気付いたのだろう。
「俺…麻由里とやり直すことにしたんだ。今…また一緒に暮らしてる」
「え?」
顔を上げて隆司さんを見た。
「以前のような関係にはまだ戻れていないし、この先どうなるかは分からないけど…そういう事だから、もう俺の事は気にしなくていいからな?」
「隆司さん…」
「どれ。会社の皆にもチラシを見せたいから…とりあえず30部くらい貰おうかな?」
隆司さんは私の足元に置かれた紙袋に目をやった。
「え? そ、そんなに貰ってくれるんですか?」
思わず目を見開いて隆司さんを見る。
「ああ、俺にはもう鈴音にしてやれることは…これ位だからな」
そして隆司さんは身をかがめると、紙袋の中から束でチラシを取り、自分のビジネスバックへしまった。
「じゃあな。鈴音。体調管理に気を付けるんだぞ?」
そして笑顔で手を振ると、町の雑踏の中へと消えていった。
「隆司さん…ありがとうございます」
私は去って行く後ろ姿にそっとお礼を言った――
****
12時になったので、私はビラの入った紙袋を手に持つとお昼を食べに繁華街へと向かった。う~ん…今日は何食べようかな…。出来れば病院に電話もかけたいし。
「よし、今日はカフェに行こう」
繁華街のある一角――
そこには昭和の時代からあるようなノスタルジーな雰囲気満載のどこか懐かしい喫茶店だった。メニューも洋食メインでオムライスやナポリタン、ハヤシライスやカツカレー…さらにはクリームソーダやプリンパフェ…等レトロなものばかりだった。お店の雰囲気もどこかモダンで、椅子もテーブルも年季が入っている。
店内は落ち着いたクラシックの曲が静かに流れ、客層も私以外は皆高齢の人たちばかりだった。
「ここなら電話を掛けても大丈夫そうかな…」
窓際のボックス席に座り、ミックスサンドとウィンナコーヒーを頼んだ私は早速お姉ちゃんの入院している病院に電話を入れた。
「お待たせいたしました」
ロマンスグレーの口髭を生やした年配の男性が飲み物と料理を運んできてくれた。
「ありがとうございます」
会釈をすると男性は笑みを浮かべて、ごゆっくりどうぞと言って頭を下げて去って行く。
「頂きます」
早速私は長方形にカットされたレタスサンドに手を伸ばし、口に入れた。
シャクシャク…
新鮮なレタスの歯ごたえが柔らかいパンによく合っていた。
「美味しい…」
久しぶりのサンドイッチを堪能しながら先程の電話の件を思いだしていた。
病院に電話を入れると、あいにく笠井先生は不在だったけども、アポイントは取る事が出来た。
3日後の午後6時――
この日、会社には申し訳ないけれども、会社に理由を話して早退させて貰おう。そしてあの日記帳を笠井先生に見せるんだ。
「ごめんね…お姉ちゃん…」
私はサンドイッチを口にしながらポツリと呟いた――
まさか再びこんな場所で会うなんて…でも考えてみれば隆司さんの勤めている会社も錦糸町だった。今迄気づかないだけで、互いにどこかですれ違っていたかもしれない。
「元気だったか? 鈴音」
隆司さんは白い息を吐きながら近付いて来ると笑みを浮かべた。
「は、はい。元気でした…」
すると隆司さんは少しだけ眉根を寄せた。
「鈴音…顔色が良くないな?それに…随分痩せてしまったようだし…」
「そ、そんな事は…」
私は2人の関係を曖昧にしながら、隆司さんのマンションを出て行ってしまったので、申し訳ない気持ちで一杯だった。すると隆司さんは何かに気付いたのだろう。
「俺…麻由里とやり直すことにしたんだ。今…また一緒に暮らしてる」
「え?」
顔を上げて隆司さんを見た。
「以前のような関係にはまだ戻れていないし、この先どうなるかは分からないけど…そういう事だから、もう俺の事は気にしなくていいからな?」
「隆司さん…」
「どれ。会社の皆にもチラシを見せたいから…とりあえず30部くらい貰おうかな?」
隆司さんは私の足元に置かれた紙袋に目をやった。
「え? そ、そんなに貰ってくれるんですか?」
思わず目を見開いて隆司さんを見る。
「ああ、俺にはもう鈴音にしてやれることは…これ位だからな」
そして隆司さんは身をかがめると、紙袋の中から束でチラシを取り、自分のビジネスバックへしまった。
「じゃあな。鈴音。体調管理に気を付けるんだぞ?」
そして笑顔で手を振ると、町の雑踏の中へと消えていった。
「隆司さん…ありがとうございます」
私は去って行く後ろ姿にそっとお礼を言った――
****
12時になったので、私はビラの入った紙袋を手に持つとお昼を食べに繁華街へと向かった。う~ん…今日は何食べようかな…。出来れば病院に電話もかけたいし。
「よし、今日はカフェに行こう」
繁華街のある一角――
そこには昭和の時代からあるようなノスタルジーな雰囲気満載のどこか懐かしい喫茶店だった。メニューも洋食メインでオムライスやナポリタン、ハヤシライスやカツカレー…さらにはクリームソーダやプリンパフェ…等レトロなものばかりだった。お店の雰囲気もどこかモダンで、椅子もテーブルも年季が入っている。
店内は落ち着いたクラシックの曲が静かに流れ、客層も私以外は皆高齢の人たちばかりだった。
「ここなら電話を掛けても大丈夫そうかな…」
窓際のボックス席に座り、ミックスサンドとウィンナコーヒーを頼んだ私は早速お姉ちゃんの入院している病院に電話を入れた。
「お待たせいたしました」
ロマンスグレーの口髭を生やした年配の男性が飲み物と料理を運んできてくれた。
「ありがとうございます」
会釈をすると男性は笑みを浮かべて、ごゆっくりどうぞと言って頭を下げて去って行く。
「頂きます」
早速私は長方形にカットされたレタスサンドに手を伸ばし、口に入れた。
シャクシャク…
新鮮なレタスの歯ごたえが柔らかいパンによく合っていた。
「美味しい…」
久しぶりのサンドイッチを堪能しながら先程の電話の件を思いだしていた。
病院に電話を入れると、あいにく笠井先生は不在だったけども、アポイントは取る事が出来た。
3日後の午後6時――
この日、会社には申し訳ないけれども、会社に理由を話して早退させて貰おう。そしてあの日記帳を笠井先生に見せるんだ。
「ごめんね…お姉ちゃん…」
私はサンドイッチを口にしながらポツリと呟いた――