本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第10章 11 スーパー銭湯
「あ~……幸せ」
広くて大きな薬草の湯に浸かって呟くと、近くにいたおばあさんが声をかけてきた。
「お嬢さん、ここへ来るのは初めてかしら?」
突然話しかけられて驚いたけれども返事をした。
「はい、初めてです」
「あら、やっぱりそうだったのね。実は私、このお風呂屋さんが出来てからは毎日同じ時間に通っているのだけど初めて会う人だったから」
「すごい……毎日来てるんですか?」
思わず感心してしまった。
「ええ、そうなの。お陰で腰の痛みも無くなったし、お肌も若返った気がするの」
「そうなんですか。良い事づくしですね」
「外にある露天風呂は試したかしら?」
「いえ、まだです。と言うか…今夜はすごく寒く感じて、露天風呂に行って風邪を退いたら行けないかと思って」
「あら、でも十分に温まって行けば大丈夫よ?」
おばあさんは妙に露天風呂を進めて来るけれども……。湯気でもわっとする壁を見た。そこには大きな壁掛け時計がぶら下がっている。今の時間は20時を少し過ぎていた。露天風呂に行っていたら亮平を待たせてしまいそう……。
「あの、私20時半にフロントの前で待ち合わせしてるんです。だから露天風呂はまたの機会にします」
「あら……という事は男の人と一緒に来てるのね? ひょっとすると新婚さんかしら?」
「い、いえ! まさか……ただの幼馴染ですよ」
「あら、そうなの? てっきり私はこういう場所は夫婦か恋人同士で来るものだと思っていたけど、そんな事は無かったのねぇ」
「はい、そうですよ」
大体、亮平は私の事なんか眼中にないんだから。いつだって亮平の目はお姉ちゃん一筋だ。
「あの、それじゃそろそろ私、上がりますね」
「はい、さようなら。お嬢さん、少しでもお話し出来て楽しかったわ」
「私も御話出来て良かったです」
挨拶すると、湯船からあがった――
お風呂からあがって更衣室に行くとそこには誰もいなかった。ふと見ると体重計が置いてある。そう言えば、私今体重どれくらいなんだろう? すっかりあばらが見えてしまった身体をじっと見て、そっと体重計に乗ってみた。
「え…? …嘘……」
体重を測ってみたら38㎏しかなかった。私の身長は158㎝、以前の私の体重は46㎏だったのに……いつの間にこんなに体重が減ってしまったのだろう。こんな状態では皆に心配されるのも無理はないかもしれない。
「決めた。今夜はカロリーが高そうな料理を食べよう」
そして手早く着がえを済ませ、化粧コーナーへ向かった――
フロントへ行くと、時間は20時15分だった。まだ亮平の姿は見えない。
「ちょっと早かったかな……」
でも、まぁいいか。フロントから少し離れた場所で亮平を待ちながらスマホでネットサーフィンをしていると、不意に視界が暗くなって声をかけられた。
「ねぇ、君。ここで何してるの?」
「え?」
顔をあげると、見知らぬ若い男性が立っていた。
「うわお、君……美人だねえ。遠目から見てたんだよね……細くてモデルみたいな体型だったから顔が見てみたいな~って思って声をかけてみたんだけど。ねえ、ここで何してるの?」
随分馴れ馴れしく声をかけてくる人だなぁ……。亮平、早く来ないかな。男湯の入り口をチラリと見ても、まだ亮平が出てくる気配が無い。
「あの……私、人と待ち合わせをしていて……」
「そうなの? 友達と来てるの? 女の子?」
すると――
「俺と一緒に来てるんだけど?」
背後で亮平の声が聞こえた。
「え?」
思わず振り向くと、突然グイッと亮平が私の肩を掴んで自分の方へ引き寄せてきた。
「おい、お前……人の女に手、出すなよ」
「え?」
私は耳を疑った。
「な、何だよ。男連れかよ……」
男性は舌打ちすると、そそくさと去って行った。
「亮平……」
思わず見上げると亮平がため息をついた。
「まったく。お前をナンパするとは、物好きな男がいるもんだな」
「……」
やっぱり亮平は相変わらずだ。思わず、じっと亮平を見た。
「な、何だよ……」
きっと亮平には私の気持ちなんて分らないんだろうな。
「ううん。何でもないよ。食事して帰るんだよね?」
私は亮平を置いてさっさとお食事処に向かった――
広くて大きな薬草の湯に浸かって呟くと、近くにいたおばあさんが声をかけてきた。
「お嬢さん、ここへ来るのは初めてかしら?」
突然話しかけられて驚いたけれども返事をした。
「はい、初めてです」
「あら、やっぱりそうだったのね。実は私、このお風呂屋さんが出来てからは毎日同じ時間に通っているのだけど初めて会う人だったから」
「すごい……毎日来てるんですか?」
思わず感心してしまった。
「ええ、そうなの。お陰で腰の痛みも無くなったし、お肌も若返った気がするの」
「そうなんですか。良い事づくしですね」
「外にある露天風呂は試したかしら?」
「いえ、まだです。と言うか…今夜はすごく寒く感じて、露天風呂に行って風邪を退いたら行けないかと思って」
「あら、でも十分に温まって行けば大丈夫よ?」
おばあさんは妙に露天風呂を進めて来るけれども……。湯気でもわっとする壁を見た。そこには大きな壁掛け時計がぶら下がっている。今の時間は20時を少し過ぎていた。露天風呂に行っていたら亮平を待たせてしまいそう……。
「あの、私20時半にフロントの前で待ち合わせしてるんです。だから露天風呂はまたの機会にします」
「あら……という事は男の人と一緒に来てるのね? ひょっとすると新婚さんかしら?」
「い、いえ! まさか……ただの幼馴染ですよ」
「あら、そうなの? てっきり私はこういう場所は夫婦か恋人同士で来るものだと思っていたけど、そんな事は無かったのねぇ」
「はい、そうですよ」
大体、亮平は私の事なんか眼中にないんだから。いつだって亮平の目はお姉ちゃん一筋だ。
「あの、それじゃそろそろ私、上がりますね」
「はい、さようなら。お嬢さん、少しでもお話し出来て楽しかったわ」
「私も御話出来て良かったです」
挨拶すると、湯船からあがった――
お風呂からあがって更衣室に行くとそこには誰もいなかった。ふと見ると体重計が置いてある。そう言えば、私今体重どれくらいなんだろう? すっかりあばらが見えてしまった身体をじっと見て、そっと体重計に乗ってみた。
「え…? …嘘……」
体重を測ってみたら38㎏しかなかった。私の身長は158㎝、以前の私の体重は46㎏だったのに……いつの間にこんなに体重が減ってしまったのだろう。こんな状態では皆に心配されるのも無理はないかもしれない。
「決めた。今夜はカロリーが高そうな料理を食べよう」
そして手早く着がえを済ませ、化粧コーナーへ向かった――
フロントへ行くと、時間は20時15分だった。まだ亮平の姿は見えない。
「ちょっと早かったかな……」
でも、まぁいいか。フロントから少し離れた場所で亮平を待ちながらスマホでネットサーフィンをしていると、不意に視界が暗くなって声をかけられた。
「ねぇ、君。ここで何してるの?」
「え?」
顔をあげると、見知らぬ若い男性が立っていた。
「うわお、君……美人だねえ。遠目から見てたんだよね……細くてモデルみたいな体型だったから顔が見てみたいな~って思って声をかけてみたんだけど。ねえ、ここで何してるの?」
随分馴れ馴れしく声をかけてくる人だなぁ……。亮平、早く来ないかな。男湯の入り口をチラリと見ても、まだ亮平が出てくる気配が無い。
「あの……私、人と待ち合わせをしていて……」
「そうなの? 友達と来てるの? 女の子?」
すると――
「俺と一緒に来てるんだけど?」
背後で亮平の声が聞こえた。
「え?」
思わず振り向くと、突然グイッと亮平が私の肩を掴んで自分の方へ引き寄せてきた。
「おい、お前……人の女に手、出すなよ」
「え?」
私は耳を疑った。
「な、何だよ。男連れかよ……」
男性は舌打ちすると、そそくさと去って行った。
「亮平……」
思わず見上げると亮平がため息をついた。
「まったく。お前をナンパするとは、物好きな男がいるもんだな」
「……」
やっぱり亮平は相変わらずだ。思わず、じっと亮平を見た。
「な、何だよ……」
きっと亮平には私の気持ちなんて分らないんだろうな。
「ううん。何でもないよ。食事して帰るんだよね?」
私は亮平を置いてさっさとお食事処に向かった――