本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第10章 13 側にはいられない
夜道――
片側1車線の公道の歩行者道路を歩いていた。
「う~……お腹苦しい……」
スーパー銭湯で亮平が注文した料理が予想以上に重く、半分も食べきれなかった私は苦しいお腹を抱えて亮平の後ろをついて歩いていると不意に亮平が振り返った。
「何だよ、たったあれっぽっちでもう苦しいのかよ。体重も小学生並みだけど、胃袋も小学生並みだな? ほら、荷物持ってやるよ。苦しいんだろう?」
亮平は私に手を差し出してきた。
「ありがとう……」
荷物を渡すと、亮平は私を見てため息をついた。
「全く……そんな痩せっぽちだから体力も力も無いんだろう? やっぱりお前に1人暮らしは無理だったんじゃないか?」
「そんな事言われたって……」
亮平はまだ何も分かっていないのだろうか? 私があの家を好きで出たわけじゃないって事を。
「だからさ、俺んちで暮らさないか?」
亮平が振り返る。その顔には優し気な笑みが浮かんでいた。
「え?」
街灯の下で笑顔で言う亮平は何だかいつもと違って見えた。そうか……うん、きっと亮平は酔っぱらっているんだ。
「大丈夫? 亮平。ひょっとして酔ってるんでしょう?」
「え? 何でそう思うんだよ」
「私が亮平の家でお世話になるわけにいかないでしょう?」
「だから、どうして駄目なんだよ。父さんも母さんも鈴音の事、本当の娘のように思っているんだぞ?」
亮平の言葉に胸がズキリとなる。うん……本当にそう思うよ。私と亮平が本当の兄や妹のような関係だったら、こんな辛い思いをする事は無かったはずなのに……。
「だから……余計お世話になることが出来ないんだってば……」
俯きながら道路で立ち止まっている亮平を追い抜く。
「父さんと母さんが言ってるんだぞ? 鈴音にここに住んでもらえって。どうせ部屋は余ってるんだし」
背後で亮平が少し苛立ちを含めた声を出す。ああ……そっか。一緒に暮らすって言う案はおじさんとおばさんだったんだ。なら亮平はどう思っているのだろう?
「それじゃあ亮平はどう思ってるの? 私が一緒に暮らす事について」
「いや? 別に構わないんじゃないか? もともと俺は忍と結婚したら、お前たちの家で暮らすつもりだったんだから」
「!」
思わず、その言葉に肩がピクリと跳ねてしまう。
そうだった……。亮平は以前にそんな事を言っていた。だけど私にはそんな生活は耐えられない。自分の大好きな人が、私ではない他の誰かを愛し気に見つめて仲睦まじく暮らす様をすぐそばで見ているなんて……。私はそんなに強い人間じゃない。今だってお姉ちゃんの事で悩んで、自分でも気づかないうちにこんなに体重が落ちてしまうくらいにもろい精神しか持っていないのだから。
「お姉ちゃんが私の事を嫌っているのに亮平の家でお世話になるなんて事、出来るはずがないでしょう? もし、そのことがお姉ちゃんにばれたら、どうするつもりなの?」
「ばれる事は無いだろう? 俺がそんな話忍にするはずないじゃないか?」
だけど私はお姉ちゃんがずっと秘密にしていたあの事を知ってしまった。それが分かった時は本当に背筋がさむくなり、つくづくお姉ちゃんが怖いと思った。
けれど、それでも私はお姉ちゃんを嫌う事が出来ない。だって、お姉ちゃんがあんな風になってしまったのはきっと私が原因だから。私の事がずっと憎かったはずなのに、お父さんとお母さんが死んでしまった後、私の面倒を一生懸命見てくれた。お姉ちゃんには感謝しているし、今もその気持ちに変わりはない。
私が亮平の隣に住んでいる限り、おじさんとおばさんは私に良くしてくれるだろう。そして亮平も……。でも、お姉ちゃんがいない隙を狙って亮平やおじさん、おばさんの懐に入るような真似は私にはやっぱり出来ない。
「亮平」
「何だ?」
後ろを歩く亮平の声が聞こえる。そこで私は振り向いた。
「私、明日からやっぱりアパートに戻るよ」
亮平の顔には戸惑いの表情が浮かんでいた――
片側1車線の公道の歩行者道路を歩いていた。
「う~……お腹苦しい……」
スーパー銭湯で亮平が注文した料理が予想以上に重く、半分も食べきれなかった私は苦しいお腹を抱えて亮平の後ろをついて歩いていると不意に亮平が振り返った。
「何だよ、たったあれっぽっちでもう苦しいのかよ。体重も小学生並みだけど、胃袋も小学生並みだな? ほら、荷物持ってやるよ。苦しいんだろう?」
亮平は私に手を差し出してきた。
「ありがとう……」
荷物を渡すと、亮平は私を見てため息をついた。
「全く……そんな痩せっぽちだから体力も力も無いんだろう? やっぱりお前に1人暮らしは無理だったんじゃないか?」
「そんな事言われたって……」
亮平はまだ何も分かっていないのだろうか? 私があの家を好きで出たわけじゃないって事を。
「だからさ、俺んちで暮らさないか?」
亮平が振り返る。その顔には優し気な笑みが浮かんでいた。
「え?」
街灯の下で笑顔で言う亮平は何だかいつもと違って見えた。そうか……うん、きっと亮平は酔っぱらっているんだ。
「大丈夫? 亮平。ひょっとして酔ってるんでしょう?」
「え? 何でそう思うんだよ」
「私が亮平の家でお世話になるわけにいかないでしょう?」
「だから、どうして駄目なんだよ。父さんも母さんも鈴音の事、本当の娘のように思っているんだぞ?」
亮平の言葉に胸がズキリとなる。うん……本当にそう思うよ。私と亮平が本当の兄や妹のような関係だったら、こんな辛い思いをする事は無かったはずなのに……。
「だから……余計お世話になることが出来ないんだってば……」
俯きながら道路で立ち止まっている亮平を追い抜く。
「父さんと母さんが言ってるんだぞ? 鈴音にここに住んでもらえって。どうせ部屋は余ってるんだし」
背後で亮平が少し苛立ちを含めた声を出す。ああ……そっか。一緒に暮らすって言う案はおじさんとおばさんだったんだ。なら亮平はどう思っているのだろう?
「それじゃあ亮平はどう思ってるの? 私が一緒に暮らす事について」
「いや? 別に構わないんじゃないか? もともと俺は忍と結婚したら、お前たちの家で暮らすつもりだったんだから」
「!」
思わず、その言葉に肩がピクリと跳ねてしまう。
そうだった……。亮平は以前にそんな事を言っていた。だけど私にはそんな生活は耐えられない。自分の大好きな人が、私ではない他の誰かを愛し気に見つめて仲睦まじく暮らす様をすぐそばで見ているなんて……。私はそんなに強い人間じゃない。今だってお姉ちゃんの事で悩んで、自分でも気づかないうちにこんなに体重が落ちてしまうくらいにもろい精神しか持っていないのだから。
「お姉ちゃんが私の事を嫌っているのに亮平の家でお世話になるなんて事、出来るはずがないでしょう? もし、そのことがお姉ちゃんにばれたら、どうするつもりなの?」
「ばれる事は無いだろう? 俺がそんな話忍にするはずないじゃないか?」
だけど私はお姉ちゃんがずっと秘密にしていたあの事を知ってしまった。それが分かった時は本当に背筋がさむくなり、つくづくお姉ちゃんが怖いと思った。
けれど、それでも私はお姉ちゃんを嫌う事が出来ない。だって、お姉ちゃんがあんな風になってしまったのはきっと私が原因だから。私の事がずっと憎かったはずなのに、お父さんとお母さんが死んでしまった後、私の面倒を一生懸命見てくれた。お姉ちゃんには感謝しているし、今もその気持ちに変わりはない。
私が亮平の隣に住んでいる限り、おじさんとおばさんは私に良くしてくれるだろう。そして亮平も……。でも、お姉ちゃんがいない隙を狙って亮平やおじさん、おばさんの懐に入るような真似は私にはやっぱり出来ない。
「亮平」
「何だ?」
後ろを歩く亮平の声が聞こえる。そこで私は振り向いた。
「私、明日からやっぱりアパートに戻るよ」
亮平の顔には戸惑いの表情が浮かんでいた――