本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第11章 6 会いたくない人
亮平とはあの後、気まずい思いをしたまま2人で無言で家まで帰り、別れ際にお休みなさいと挨拶だけして私は家の中へ入ってしまった。
その翌日。
井上君が何か言いたげな目で私を見ていたけど、私はその視線に気づかないふりをし……何事も無かったかのように井上君の前で振舞った。
そして気づけば、早いものであの夜から1週間が経過していた――
****
午後3時――
今日は仕事が休みの日で、いつものようにお姉ちゃんの新しい着替えをボストンバックに入れて病院を訪れていた。エレベーターホールで上行のボタンを押して、少しだけ待っているとやがてエレベータが到着して目の前でドアが開き、私は中に乗り込んだ。
「そう言えば亮平…笠井先生とお話出来たのかな……?」
あの夜から私と亮平は一度も連絡を取り合っていない。亮平は私との約束を守ってくれているようだった。でも、せめて笠井先生との面談が終わったかどうか位連絡入れて欲しいのに。先生からは亮平に伝えてもらうように頼まれていたし、私の方からだって亮平に連絡を入れにくいのにな……。
ピンポーン
やがてエレベーターが5階に到着する音を鳴らし、すーっと目の前でドアが開いた。エレベーターから降りた私はナースステーションへ向かった。
ナーステーションには3人の女性看護師さんたちが仕事をしていた。
「あの、加藤ですけど。いつも姉がお世話になっております。姉の荷物をお届けに伺いました」
すると1人の看護師さんが私を見てギョッとした顔をした。
「え……? か、加藤さんの?」
何故か慌てた様子を見せる。
「どうかしましたか?」
「ええ……実は今、お姉さんと岡本さんが……」
岡本というのは亮平の苗字だ。
「今2人は一緒にいるんですか?」
看護師さんの言葉に耳を疑った。
「はい。午後1時から笠井先生と岡本さんの面談があったんです。それで1時間ほど前に面談が終わって、今お2人は談話室でお話をしています」
「そうなんですか?」
大変だ! すぐに病院を出なくちゃ、最悪鉢合わせしてしまうかもしれない!
「あ、あの……それで姉の洗濯物は?」
「はい、こちらでお預かりしています」
看護師さんは足元に置かれた紙袋をカウンター越しから渡してくれた。
「ありがとうございます。それではもう行きます」
「そうですね。はい、ご苦労様でした」
ここの病棟の看護師さんたちは皆私とお姉ちゃんの関係を把握してくれているから助かる。コートのフードを被り、足早にエレベーターホールへと向かった。
エレベーターホールの近くには談話室がある。ひょっとすると2人はそこで話をしているかもしれない。ホールに着くと、焦る気持ちで下行のボタンを押すと、ゆっくりとエレベータは1階から登って来た。
お願い……早く来て……!
なのにこんな時に限ってエレベーターは焦らすようにジリジリとゆっくり上に向かって上がって来る。そしてようやくエレベーターが到着したので、素早く乗り込んで閉のボタンを押したとき…。
「すみませんっ! 乗せて下さいっ!」
何と亮平が息を切らせながら閉じかけていたエレベーターのドアに手を掛けて来た。
「!」
りょ、亮平……!
心臓が一瞬止まるかと思った。慌てて俯くと私は黙ってうなずき、エレベーターの一番奥へと移動する。そんな私を訝し気に見つめて来る亮平の視線が痛い。
やがてドアはピタリと閉じ、狭い空間に私と亮平の2人きりになった。
階下に着くまでの間…息の止まるような時間が流れた。亮平は私の前に立ち、じっとドアの方を向いている。
やがて……。
ピンポーン
エレベータのドアが開く音がした――
その翌日。
井上君が何か言いたげな目で私を見ていたけど、私はその視線に気づかないふりをし……何事も無かったかのように井上君の前で振舞った。
そして気づけば、早いものであの夜から1週間が経過していた――
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午後3時――
今日は仕事が休みの日で、いつものようにお姉ちゃんの新しい着替えをボストンバックに入れて病院を訪れていた。エレベーターホールで上行のボタンを押して、少しだけ待っているとやがてエレベータが到着して目の前でドアが開き、私は中に乗り込んだ。
「そう言えば亮平…笠井先生とお話出来たのかな……?」
あの夜から私と亮平は一度も連絡を取り合っていない。亮平は私との約束を守ってくれているようだった。でも、せめて笠井先生との面談が終わったかどうか位連絡入れて欲しいのに。先生からは亮平に伝えてもらうように頼まれていたし、私の方からだって亮平に連絡を入れにくいのにな……。
ピンポーン
やがてエレベーターが5階に到着する音を鳴らし、すーっと目の前でドアが開いた。エレベーターから降りた私はナースステーションへ向かった。
ナーステーションには3人の女性看護師さんたちが仕事をしていた。
「あの、加藤ですけど。いつも姉がお世話になっております。姉の荷物をお届けに伺いました」
すると1人の看護師さんが私を見てギョッとした顔をした。
「え……? か、加藤さんの?」
何故か慌てた様子を見せる。
「どうかしましたか?」
「ええ……実は今、お姉さんと岡本さんが……」
岡本というのは亮平の苗字だ。
「今2人は一緒にいるんですか?」
看護師さんの言葉に耳を疑った。
「はい。午後1時から笠井先生と岡本さんの面談があったんです。それで1時間ほど前に面談が終わって、今お2人は談話室でお話をしています」
「そうなんですか?」
大変だ! すぐに病院を出なくちゃ、最悪鉢合わせしてしまうかもしれない!
「あ、あの……それで姉の洗濯物は?」
「はい、こちらでお預かりしています」
看護師さんは足元に置かれた紙袋をカウンター越しから渡してくれた。
「ありがとうございます。それではもう行きます」
「そうですね。はい、ご苦労様でした」
ここの病棟の看護師さんたちは皆私とお姉ちゃんの関係を把握してくれているから助かる。コートのフードを被り、足早にエレベーターホールへと向かった。
エレベーターホールの近くには談話室がある。ひょっとすると2人はそこで話をしているかもしれない。ホールに着くと、焦る気持ちで下行のボタンを押すと、ゆっくりとエレベータは1階から登って来た。
お願い……早く来て……!
なのにこんな時に限ってエレベーターは焦らすようにジリジリとゆっくり上に向かって上がって来る。そしてようやくエレベーターが到着したので、素早く乗り込んで閉のボタンを押したとき…。
「すみませんっ! 乗せて下さいっ!」
何と亮平が息を切らせながら閉じかけていたエレベーターのドアに手を掛けて来た。
「!」
りょ、亮平……!
心臓が一瞬止まるかと思った。慌てて俯くと私は黙ってうなずき、エレベーターの一番奥へと移動する。そんな私を訝し気に見つめて来る亮平の視線が痛い。
やがてドアはピタリと閉じ、狭い空間に私と亮平の2人きりになった。
階下に着くまでの間…息の止まるような時間が流れた。亮平は私の前に立ち、じっとドアの方を向いている。
やがて……。
ピンポーン
エレベータのドアが開く音がした――