本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第11章 7 亮平から逃げる私
エレベーターのドアが開き、前に立っていた亮平が降りた。私もその後に続き、足早に歩いて亮平を追い抜こうとした矢先。亮平がスマホを取り出して電話をかけ始めた。そして……。
トゥルルルルル……
トゥルルルルル……
最悪なタイミングだった。亮平の傍を通り抜けようとした直前、私のスマホが鳴り響いたのだ。
そんな! まさか亮平が電話をかけた相手が私だったなんて……!
「え?」
私の直ぐ真後ろを歩いていた亮平の声が背後で聞こえた。でも今ここで電話に出れば私が鈴音だって言う事がバレてしまう。知らないふりして急ぎ足で歩き始めた時。
「待てよ!」
亮平の声が聞こえた。それでも聞こえないふりをして歩き続けていると、突然グイッと左腕を掴まれ、振り向かされた。
「鈴音だろうっ!?」
亮平は私が被っていたコートのフードをはいだ。
「……」
思わず顔を伏せる。
「鈴音……何で無視したんだよ?」
自分でも何故逃げ出してしまったのか分からないのに理由なんか応えられるはずは無かった。
「ひょっとして俺に怒られると思ったのか? 忍の日記を笠井先生に渡した事について」
「え……?」
亮平の思いがけない言葉に私は顔を上げた。
「鈴音……忍の事で話があるんだ……。今……時間いいか?」
「う、うん。いいよ?」
本当は断ろうかと思ったけど、今にも亮平が泣きだしそうな顔に見えて、とても放って置くことは出来なかった。
「そうか……なら、この病院の中の喫茶店で……」
「ごめん、亮平。……病院はイヤ」
だって、この間お姉ちゃんは1人で院内を歩き回っていた。ひょっとすると病院の喫茶店も出入り自由の可能性だってあるのだから。
「あ、ああ。そうか、確かにな……病院は……うん、鈴音にとっては嫌かもしれないな。よし、それじゃとりあえず病院を出よう」
「うん……そうして貰えると……助かる」
そして私と亮平は病院を出た。
「俺、車で病院まで来ているんだ。それで……やっぱり鈴音は自分のマンションに帰るんだろう?」
並んで歩きながら亮平が尋ねてきた。
「うん、そうだね」
「なら帰りは駅まで送ってやるよ。とりあえず駐車スペースがあるカフェにでも行かないか?」
「うん……そうだね。いいよ、行こう」
「それじゃ、駐車場へ行こう」
****
駐車場へ向かう時も、車を運転しているときも亮平はずっと無口だった。まるで何か考え事をしているかのようだった。初めは沈黙しているのが嫌だったので、私の方から亮平に色々話しかけてみたのだけど、亮平は全くと言っていい程に無反応だったので私も話しかけるのを放棄して、窓の外の景色を眺めていた。
「よし、ここに入るか。あの喫茶店なら車を止める事が出来そうだしな」
すると今まで一言も口を聞かなかった亮平が不意に口を開いた。
「え?」
見ると、進行方向左側に大手のカフェのチェーン店が見えた。
「鈴音、あのカフェでいいか?」
「うん、いいよ」
「よし、それじゃ入るか。」
亮平は左側にカチカチとウィンカーを出すと、ゆっくり駐車場へと入って行った。
車を駐車スペースに入れ、エンジンを切ると亮平は私に声を掛けて来た。
「よし、降りよう」
「うん…」
こうして私と亮平は2人の間に流れる微妙な空気の中、カフェへと入った――
トゥルルルルル……
トゥルルルルル……
最悪なタイミングだった。亮平の傍を通り抜けようとした直前、私のスマホが鳴り響いたのだ。
そんな! まさか亮平が電話をかけた相手が私だったなんて……!
「え?」
私の直ぐ真後ろを歩いていた亮平の声が背後で聞こえた。でも今ここで電話に出れば私が鈴音だって言う事がバレてしまう。知らないふりして急ぎ足で歩き始めた時。
「待てよ!」
亮平の声が聞こえた。それでも聞こえないふりをして歩き続けていると、突然グイッと左腕を掴まれ、振り向かされた。
「鈴音だろうっ!?」
亮平は私が被っていたコートのフードをはいだ。
「……」
思わず顔を伏せる。
「鈴音……何で無視したんだよ?」
自分でも何故逃げ出してしまったのか分からないのに理由なんか応えられるはずは無かった。
「ひょっとして俺に怒られると思ったのか? 忍の日記を笠井先生に渡した事について」
「え……?」
亮平の思いがけない言葉に私は顔を上げた。
「鈴音……忍の事で話があるんだ……。今……時間いいか?」
「う、うん。いいよ?」
本当は断ろうかと思ったけど、今にも亮平が泣きだしそうな顔に見えて、とても放って置くことは出来なかった。
「そうか……なら、この病院の中の喫茶店で……」
「ごめん、亮平。……病院はイヤ」
だって、この間お姉ちゃんは1人で院内を歩き回っていた。ひょっとすると病院の喫茶店も出入り自由の可能性だってあるのだから。
「あ、ああ。そうか、確かにな……病院は……うん、鈴音にとっては嫌かもしれないな。よし、それじゃとりあえず病院を出よう」
「うん……そうして貰えると……助かる」
そして私と亮平は病院を出た。
「俺、車で病院まで来ているんだ。それで……やっぱり鈴音は自分のマンションに帰るんだろう?」
並んで歩きながら亮平が尋ねてきた。
「うん、そうだね」
「なら帰りは駅まで送ってやるよ。とりあえず駐車スペースがあるカフェにでも行かないか?」
「うん……そうだね。いいよ、行こう」
「それじゃ、駐車場へ行こう」
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駐車場へ向かう時も、車を運転しているときも亮平はずっと無口だった。まるで何か考え事をしているかのようだった。初めは沈黙しているのが嫌だったので、私の方から亮平に色々話しかけてみたのだけど、亮平は全くと言っていい程に無反応だったので私も話しかけるのを放棄して、窓の外の景色を眺めていた。
「よし、ここに入るか。あの喫茶店なら車を止める事が出来そうだしな」
すると今まで一言も口を聞かなかった亮平が不意に口を開いた。
「え?」
見ると、進行方向左側に大手のカフェのチェーン店が見えた。
「鈴音、あのカフェでいいか?」
「うん、いいよ」
「よし、それじゃ入るか。」
亮平は左側にカチカチとウィンカーを出すと、ゆっくり駐車場へと入って行った。
車を駐車スペースに入れ、エンジンを切ると亮平は私に声を掛けて来た。
「よし、降りよう」
「うん…」
こうして私と亮平は2人の間に流れる微妙な空気の中、カフェへと入った――