本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

第11章 14 バレンタインの夜

 その日の夜――

家に帰る途中、スーパーに寄って買ってきた缶チューハイとエスニック風ラップサラダをおつまみに私は1人、ネットの動画で映画を観ながらお酒を飲んでいた。亮平のメールが気になってしまって、とてもシラフではいられない気分だったからだ。

「お姉ちゃんと亮平……今日バレンタインの日に会ったって言う事は、きっと2人は元の恋人同士に戻れたって事だよね……」

おつまみのサラミにフォークを刺しながらポツリと呟く。でも一体いつの間に2人は再び恋人同士に戻れたのだろう? この間カフェで会った時はそんな話はしていなかったのに。

「これって、お姉ちゃんが回復してきてるって事なんだよね……?」

本当は喜ぶべき事なのかもしれないけれど、私の本心は複雑だった。お姉ちゃんは本気で亮平の事を好きなのだろうかと……そして亮平はお姉ちゃんを好きになるようにマインドコントロールで呪縛されているだけなのでは無いだろうかと。

「……馬鹿みたい。これじゃ私の単なる嫉妬だよね……」

テーブルの上に置いてあった缶チューハイに手を伸ばすと、私は一気に煽るように飲み干し……次の缶チューハイに手を伸ばした。

プシュッ!

プルタブが開けられ、中から炭酸がはじける音と共に、梅チューハイの香りが冷た冷気と共に香る。

「うん……美味しそう……」

そしてゴクゴクと一気に飲み干してしまった。

「はぁ~……飲んだ飲んだ……」

思わずベッドにゴロリと横になると一気に酔いが、回り始めた。

「調子に乗って飲みすぎたかな……」

おでこに手を当てながらポツリと呟く。でも良かった……シャワー浴びてパジャマに着替えておいて。この格好だったらいつでも眠れるもんね。昨夜遅くまでバレンタインのチョコを作っていて寝不足気味だったし。ぼんやりする頭で目覚まし時計を見ると時刻はまだ21時を少し過ぎたばかりだった。

「せめて歯磨きくらいして寝なくちゃね……」

ふらつく頭でベッドから起き上がった時。

トゥルルルルル……

突然センターテーブルに置いておいたスマホが鳴りだした。

「あれ……? 誰かなぁ?」

何とかスマホを手に取り、着信相手も見ずにタップして電話に出た。

「はい、もしもし?」

『鈴音、俺だよ』

え? 俺? 俺……誰だろう? でも適当に話あわせておこう。

「そう……? 元気にしてた?」

『え? ああ……まあ元気にはしていた……って何でそんな事聞いて来るんだ? この間会っているだろう?』

この間会った……と言う事は……。

「何だ。亮平か……誰かと思っちゃったよ」

『え? お前一体誰だと思っていたんだよ?』

何故か語気を強める亮平。

「う~ん……誰だろう……?」

『おい、鈴音。ひょっとして井上って男と間違えてるのか?』

あれ……井上君……? 私井上君と話していたんだっけ……? あ、そうだ。

「ねえねえ、あれから家に帰ってまたバレンタインチョコ食べたの?」

『はぁ?』

「はぁ? って今日帰る時井上君にあげたじゃない。私が作ったバレンタインのチョコ」

『何!? お前、井上って男にバレンタインチョコやったのか!?』

受話器越しから怒気の混ざった声で亮平の声が聞こえてきた。

……え? 亮平?

一瞬で酔いが覚めたので慌てて居住まいをただしながら返事をした。

「う、うん……あげたよ? バレンタインチョコ。でも職場の人全員にあげたんだよ? 何も井上君だけにあげたわけじゃないから」

って言うか、どうして私亮平に言い訳じみた話をしているんだろう……?

『だけど、今の口ぶりだと井上って男には余分にあげているように聞こえたぞ?』

「それはチョコが余ったからだよ」

『余ったなら俺が貰ってやったのに』

何故か上から目線的な物言いをしてくる亮平。流石にこれはどうかと思う。

「ねえ、そんな事よりもさ……本当はもっと別の話で電話してきたんでしょう? お姉ちゃんの事なんだよね?」

『あ? ああ、そうなんだ。今日の忍、まるで以前のように戻ったみたいな様子だったんだ。いたって普通に見えたんだよ。それにネット通販でバレンタインプレゼントを俺の為に用意してくれていて……』

亮平は嬉しそうに語り始めた――

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