本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第12章 1 強引な誘い
笠井先生との面談が終わって1週間が経過した頃――
「「あ」」
仕事帰りに立ち寄ったスーパーのお酒売り場で偶然川口さんとばったり会ってしまった。ダウンジャケットを羽織った川口さんは大きなリュックサックを背負っている。
「こんばんは、偶然だね」
川口さんは笑顔で話しかけてきた。何となく出会った場所がお酒売り場で気恥ずかしくなった私は俯き加減で返事をした。
「う、うん。こんばんは。今仕事帰りなの?」
「そうだよ。何かアルコールとつまみでも買って宅飲みでもしようかと思っていたんだ。ちょうど明日は仕事が休みだし」
「そうなんだ……偶然だね。私も明日は仕事が休みだから。それじゃまたね」
足早に去ろうとしたら、呼び止められた。
「待って」
「何?」
「アルコール……買って帰らないの?」
「そ、そうだね……でもまたでいいかなと思って」
「それならさ、どこかで2人で居酒屋に行こうよ。安くて旨い焼き鳥屋がこの近くにあるんだ。加藤さんは焼き鳥好き?」
「う、うん……好き……だけど……」
すると川口さんは途端に笑顔になった。
「よし、なら決まりだな」
すると川口さんは折角カゴに入れた缶ビールやらチューハイを棚に戻していく。
「え、ちょ、ちょっと待って。私まだ行くとは……」
しかし私の言葉が耳に入っていないのか川口さんは出入口に向かって歩いて行く。仕方無いので私も川口さんの後を追った。
「あの、川口さん。私は……」
前方を歩く川口さんに声をかけると、ぴたりと足を止めて振り返った。
「この間のバレンタインのお返し……今日させてよ」
「え? お返しって……そんな、あれだけしかあげていないのに」
「いいんだって。とにかくさ、本当に旨い焼き鳥屋なんだよ。ほら、大体もう着いたし」
「え?」
見ると私たちの眼前には赤ちょうちんがぶら下がったお店が立っていた。店内からは炭火の焼ける匂いが漂ってきている。
「こんなところに……」
「それじゃ、入ろう」
私の返事も聞かずに川口さんはガラガラと店の扉を開けて入って行く。
なかなか強引な人だなぁ……。
でも既に中に入ってしまったので私も引き返すわけにはいかず、店内に入ると後ろ手に扉を閉めた。
今どき自動ドアじゃなくて引き戸なんて変わったお店だと思った。
川口さんは何処だろう……?
店内に入り、きょろきょろと見渡した。右側がカウンター席で、その向かい側で何人かの人達が焼き鳥を焼いている。右側を見ればテーブル席で、川口さんは2人掛けの一番奥のテーブル席にいつの間にか座っていて、手を振っている。
「川口さんて……結構強引な人だね?」
向かい側に座り、足元の籠に荷物と脱いだ上着を入れた。すると川口さんが笑う。
「ハハハ……ごめん。実は以前たたまたま入ったらすごく美味しくて、それ以来時々買って帰ったりはしていたんだけど……やっぱり焼き立てにはかなわないなって思ってたんだけどさ。いくら男でもなかなか一人で店に入るって勇気がいるから」
そこへ男性店員が2人分のお水を持って来た。
「いらっしゃいませ、ご注文は何にしますか?」
「う~ん……それじゃとりあえず焼き鳥の盛り合わせと……ビールでいいかな?」
「うん、何でもいいよ」
「それじゃ、後は生ビールをジョッキとグラスで1つずつ」
「はい、かしこまりました」
男性店員は伝票にサラサラと書くと、伝票立てに差すと去って行った。
「なかなか混んでるね。人気あるお店なのかな?」
店内を見渡すとカウンター席はほぼ満席で、テーブル席は半以上が埋まっていた。
「そうなんだよ。だから意外と一人じゃ入りずらくてね」
「それじゃ以前は誰かと一緒にこのお店に入ったって事だね?」
「ああ、そうなんだ。……気になる?」
川口さんは意味深な言葉で尋ねてきた。う~ん……きっとこの言い方だと『気になる』って言って貰いたいのだろうけど……。
「ううん、気にはならないけど?」
「そっか~」
川口さんは残念そうに私を見た――
「「あ」」
仕事帰りに立ち寄ったスーパーのお酒売り場で偶然川口さんとばったり会ってしまった。ダウンジャケットを羽織った川口さんは大きなリュックサックを背負っている。
「こんばんは、偶然だね」
川口さんは笑顔で話しかけてきた。何となく出会った場所がお酒売り場で気恥ずかしくなった私は俯き加減で返事をした。
「う、うん。こんばんは。今仕事帰りなの?」
「そうだよ。何かアルコールとつまみでも買って宅飲みでもしようかと思っていたんだ。ちょうど明日は仕事が休みだし」
「そうなんだ……偶然だね。私も明日は仕事が休みだから。それじゃまたね」
足早に去ろうとしたら、呼び止められた。
「待って」
「何?」
「アルコール……買って帰らないの?」
「そ、そうだね……でもまたでいいかなと思って」
「それならさ、どこかで2人で居酒屋に行こうよ。安くて旨い焼き鳥屋がこの近くにあるんだ。加藤さんは焼き鳥好き?」
「う、うん……好き……だけど……」
すると川口さんは途端に笑顔になった。
「よし、なら決まりだな」
すると川口さんは折角カゴに入れた缶ビールやらチューハイを棚に戻していく。
「え、ちょ、ちょっと待って。私まだ行くとは……」
しかし私の言葉が耳に入っていないのか川口さんは出入口に向かって歩いて行く。仕方無いので私も川口さんの後を追った。
「あの、川口さん。私は……」
前方を歩く川口さんに声をかけると、ぴたりと足を止めて振り返った。
「この間のバレンタインのお返し……今日させてよ」
「え? お返しって……そんな、あれだけしかあげていないのに」
「いいんだって。とにかくさ、本当に旨い焼き鳥屋なんだよ。ほら、大体もう着いたし」
「え?」
見ると私たちの眼前には赤ちょうちんがぶら下がったお店が立っていた。店内からは炭火の焼ける匂いが漂ってきている。
「こんなところに……」
「それじゃ、入ろう」
私の返事も聞かずに川口さんはガラガラと店の扉を開けて入って行く。
なかなか強引な人だなぁ……。
でも既に中に入ってしまったので私も引き返すわけにはいかず、店内に入ると後ろ手に扉を閉めた。
今どき自動ドアじゃなくて引き戸なんて変わったお店だと思った。
川口さんは何処だろう……?
店内に入り、きょろきょろと見渡した。右側がカウンター席で、その向かい側で何人かの人達が焼き鳥を焼いている。右側を見ればテーブル席で、川口さんは2人掛けの一番奥のテーブル席にいつの間にか座っていて、手を振っている。
「川口さんて……結構強引な人だね?」
向かい側に座り、足元の籠に荷物と脱いだ上着を入れた。すると川口さんが笑う。
「ハハハ……ごめん。実は以前たたまたま入ったらすごく美味しくて、それ以来時々買って帰ったりはしていたんだけど……やっぱり焼き立てにはかなわないなって思ってたんだけどさ。いくら男でもなかなか一人で店に入るって勇気がいるから」
そこへ男性店員が2人分のお水を持って来た。
「いらっしゃいませ、ご注文は何にしますか?」
「う~ん……それじゃとりあえず焼き鳥の盛り合わせと……ビールでいいかな?」
「うん、何でもいいよ」
「それじゃ、後は生ビールをジョッキとグラスで1つずつ」
「はい、かしこまりました」
男性店員は伝票にサラサラと書くと、伝票立てに差すと去って行った。
「なかなか混んでるね。人気あるお店なのかな?」
店内を見渡すとカウンター席はほぼ満席で、テーブル席は半以上が埋まっていた。
「そうなんだよ。だから意外と一人じゃ入りずらくてね」
「それじゃ以前は誰かと一緒にこのお店に入ったって事だね?」
「ああ、そうなんだ。……気になる?」
川口さんは意味深な言葉で尋ねてきた。う~ん……きっとこの言い方だと『気になる』って言って貰いたいのだろうけど……。
「ううん、気にはならないけど?」
「そっか~」
川口さんは残念そうに私を見た――