本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第12章 2 約束
「どう? この店の焼き鳥、美味しいだろう?」
川口さんが私に追加で注文した焼き鳥の乗ったお皿を差し出した。すでに私たちのテーブルの上には空になった焼き鳥の盛り合わせの皿が5枚積み重なっている。
「うん、とってもおいしいね。特にこの手羽に塩焼きが最高! ビールにすごく合うね?」
真冬にビール? なんて思っていたけど、これが焼き鳥に断然あう。ついつい美味しい焼き鳥にビールで気分が良くなった私は楽しい気分になってきた。
「ねえ、ここの鳥の鶏もものから揚げもすごく美味しいんだけど食べてみる?」
川口さんがメニュー表を見せてきた。
「へ~焼き鳥屋さんなのに鶏のから揚げもあるんだね」
「一応焼き鳥屋ではあるけどね、いろいろな鶏肉料理をやってるよ」
「ふ~ん。ねえ、それじゃ親子丼はあるの?」
「うん、あるけど? 加藤さんは親子丼が好きなの?」
「うん、大好き。あの甘じょっぱい味が良く染みたところにとろとろの卵でとじた親子丼最高だと思うよ。毎日食べても飽きないかな~」
ビールで熱くなった頬を押さえながらうっとりと親子丼の事を考えていると、向かい側の席に座る川口さん私の事をじっと見つめながら口を開いた。
「勇気出して……良かったな……」
「何が良かったの?」
「いや。加藤さんを焼き鳥屋に誘う事だよ」
「え? 私を誘うのに勇気? またまた大げさだな~」
私は2本目の手羽先を串からフォークで抜き取って口に入れた。うん、美味しい。レモンも絞ったらもっと美味しいかも。
「あの……さ」
川口さんは神妙な顔つきでビールのジョッキを握りしめながら私を見た。
「何?」
「また……加藤さんさえよければ一緒にこの店に食べに来ないかい? 今親子丼が好きだって言ってただろう?」
「うん。確かに言ったけど」
川口さんは余程この店の焼き鳥が気に入ってるんだろうな。でもここのお店の親子丼……すっごく食べてみたい!
「そうだね? それじゃ今度機会があったら行ってみようか?」
あくまでその場限りの社交辞令で私は言ったつもりなんだけども……。
「それじゃ、いつにする?」
「え?」
あまりの突然の話に一瞬戸惑ってしまった。
「え……と……。突然そんな事言われても……。今決めなくちゃダメ?」
「できれば今決めて貰いたい。また今度って言葉で片付けられたら……何だかそれきりになりそうだから……」
真剣な目で私を見ている。困ったな……。
「……そ、それじゃ……来月はどう?」
苦し紛れに何とか答えた。
「え? 来月? そんなに間を開けなくちゃ駄目なのかい?」
「う、うん。ほら、シフトの問題とか色々あるから、ちょうど一カ月後なら大丈夫だと思うから」
「そっか……」
川口さんは目を伏せ、その声にはどこか落胆が含まれていた。う……困ったな。折角さっきまで楽しい雰囲気で飲んでいたのに……。もう、こんな時は……。
「ほ、ほら!川口さん。もう少しお酒飲もうよ。そうだな~今度は私熱燗にしてみようかな。身体があったまりそうだし」
「うん……そうだね。それじゃ頼もう」
そして2人で熱燗を頼み、半分ずつ分け合って飲んで、私たちは店を後にした。
電灯に照らされた住宅街。長い影を作りながら私たちはお互いのマンションを目指し、白い息を吐きながら歩いていると、やがてマンションが見えてきた。すると不意に川口さんが顔を上げて夜空を見上げた。空には満点の星が輝いている。
「やっぱ冬の星空は綺麗だな」
「うん、そうだね」
私も夜空を見上げながら返事をした。
「約束……」
「え?」
「来月……必ず一緒にあの店へ行こう。約束だよ?」
真剣な顔でじっと私を見つめてくる。
「も、勿論だよ」
「よし、それじゃ……また!」
川口さんは元気よく手を振ると、マンションの中へと入って行った。
「約束……か……」
だけど、その約束が守られることは無かった――
川口さんが私に追加で注文した焼き鳥の乗ったお皿を差し出した。すでに私たちのテーブルの上には空になった焼き鳥の盛り合わせの皿が5枚積み重なっている。
「うん、とってもおいしいね。特にこの手羽に塩焼きが最高! ビールにすごく合うね?」
真冬にビール? なんて思っていたけど、これが焼き鳥に断然あう。ついつい美味しい焼き鳥にビールで気分が良くなった私は楽しい気分になってきた。
「ねえ、ここの鳥の鶏もものから揚げもすごく美味しいんだけど食べてみる?」
川口さんがメニュー表を見せてきた。
「へ~焼き鳥屋さんなのに鶏のから揚げもあるんだね」
「一応焼き鳥屋ではあるけどね、いろいろな鶏肉料理をやってるよ」
「ふ~ん。ねえ、それじゃ親子丼はあるの?」
「うん、あるけど? 加藤さんは親子丼が好きなの?」
「うん、大好き。あの甘じょっぱい味が良く染みたところにとろとろの卵でとじた親子丼最高だと思うよ。毎日食べても飽きないかな~」
ビールで熱くなった頬を押さえながらうっとりと親子丼の事を考えていると、向かい側の席に座る川口さん私の事をじっと見つめながら口を開いた。
「勇気出して……良かったな……」
「何が良かったの?」
「いや。加藤さんを焼き鳥屋に誘う事だよ」
「え? 私を誘うのに勇気? またまた大げさだな~」
私は2本目の手羽先を串からフォークで抜き取って口に入れた。うん、美味しい。レモンも絞ったらもっと美味しいかも。
「あの……さ」
川口さんは神妙な顔つきでビールのジョッキを握りしめながら私を見た。
「何?」
「また……加藤さんさえよければ一緒にこの店に食べに来ないかい? 今親子丼が好きだって言ってただろう?」
「うん。確かに言ったけど」
川口さんは余程この店の焼き鳥が気に入ってるんだろうな。でもここのお店の親子丼……すっごく食べてみたい!
「そうだね? それじゃ今度機会があったら行ってみようか?」
あくまでその場限りの社交辞令で私は言ったつもりなんだけども……。
「それじゃ、いつにする?」
「え?」
あまりの突然の話に一瞬戸惑ってしまった。
「え……と……。突然そんな事言われても……。今決めなくちゃダメ?」
「できれば今決めて貰いたい。また今度って言葉で片付けられたら……何だかそれきりになりそうだから……」
真剣な目で私を見ている。困ったな……。
「……そ、それじゃ……来月はどう?」
苦し紛れに何とか答えた。
「え? 来月? そんなに間を開けなくちゃ駄目なのかい?」
「う、うん。ほら、シフトの問題とか色々あるから、ちょうど一カ月後なら大丈夫だと思うから」
「そっか……」
川口さんは目を伏せ、その声にはどこか落胆が含まれていた。う……困ったな。折角さっきまで楽しい雰囲気で飲んでいたのに……。もう、こんな時は……。
「ほ、ほら!川口さん。もう少しお酒飲もうよ。そうだな~今度は私熱燗にしてみようかな。身体があったまりそうだし」
「うん……そうだね。それじゃ頼もう」
そして2人で熱燗を頼み、半分ずつ分け合って飲んで、私たちは店を後にした。
電灯に照らされた住宅街。長い影を作りながら私たちはお互いのマンションを目指し、白い息を吐きながら歩いていると、やがてマンションが見えてきた。すると不意に川口さんが顔を上げて夜空を見上げた。空には満点の星が輝いている。
「やっぱ冬の星空は綺麗だな」
「うん、そうだね」
私も夜空を見上げながら返事をした。
「約束……」
「え?」
「来月……必ず一緒にあの店へ行こう。約束だよ?」
真剣な顔でじっと私を見つめてくる。
「も、勿論だよ」
「よし、それじゃ……また!」
川口さんは元気よく手を振ると、マンションの中へと入って行った。
「約束……か……」
だけど、その約束が守られることは無かった――