本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第12章 7 私がICUを出る日
それは私が交通事故から目覚めて1週間が経過した時の出来事だった。
「加藤さん、今日からいよいよ個室に移りますよ」
看護師さんがベッドで横たわる私に声をかけてきた。
「は……はい」
弱々しくも私は何とか返事をした。いまだに私の身体には血圧計と脈拍系のモニターに点滴が繋がれていたけれども、先生の話ではようやく危険な状態を切り抜ける事が出来たみたいで、今日ICUから個室へと移ることが出来るようになったらしい。
先生や看護師さんの話によると、私は交通事故で意識を失ってから3か月ちょうどで目が覚めた。3か月を超えてしまうと回復するのが難しくなり、最悪植物状態に陥ってしまう事があるとの事だった。だから私は本当に助かるギリギリのラインで突然目が覚めたので、先生やICUに勤める看護師さんたちは全員口をそろえて奇跡が起こったと、大喜びしたそうだ。
「もうこれは必要なくなりましたから外しますね」
看護師さんは私の腕からそっとモニターを外してくれた。その時、私は自分の腕を見てギョッとしてしまった。そこにあった私の腕はまるで針金の様だったからだ。
怖い……。
一体今の私はどれだけ痩せてしまったのだろう? 自分の姿を鏡で確認するのが怖くてまだ一度も私は鏡を見ていない。
私のベッドの周囲に4人の看護師さんが付いた。これからベッドごと私はICUの隣の個室に移される。まだ私の腕には点滴やらいろいろチューブが付いているから4人がかりでベッドを移動することになったみたいだった。
「ではベッドを動かしますね」
枕元に立っていた看護師さん声をかけてきた。
「は、はい……お願い……します……」
何とか返事をすると、看護師さんは笑みを浮かべた。
ガコン……
やがて私を乗せたベッドはゆっくり動きだした。するとICUにいた先生や看護師さんたちが皆私の方を向いてパチパチと拍手をして見送ってくれる。中にはおめでとうと声をかけてくる先生もいた。
どうして拍手をするんだろう……? 私が不思議そうな顔をしているのが分かったのか先ほどと同じ看護師さんが教えてくれた。
「あのね、ICUに一度入院した患者さんは回復するのが難しい人達ばかりなの。それで3か月以上経過すると意識が戻らなくても個室に移動することがあるのだけど……加藤さんみたいに意識が戻って個室に移動するケースは珍しいのよ? だから皆拍手をして加藤さんを祝ってくれているの……ってどうかしたの!?加藤さん、どこか痛むのっ!?」
ベッドを移動させながら看護師さんは私を見て驚いている。
「い、いえ……そうじゃ……ないんです……。皆が……私の意識が戻った事……こんなにもお祝いしてくれることが……う、嬉しくて……」
私は必死で言葉を絞り出しながら涙を流していた。目が覚めてから1週間……全身の激しい痛みと戦って、時にはあのまま死んでいた方がましだったと思うような辛かった日々もあったけど……こんなに皆が私を心配してくれていたなんて……。
「あ……ありがとう……ございます……本当に……」
泣きながら私はお礼を言うと、私のベッドを動かしている看護師さんたちも、皆赤い目で私を見下ろしていた……。
「はい、加藤さん。今日からここが貴女の部屋よ。明日から少しずつリハビリしていきましょうね」
私についている点滴の残量を確認しながら看護師さんが話しかけてきた。
「リハビリ……ですか……?」
そんな事、今の私に出来るのだろうか……腕だって鉛のように重くてまともに動かすことも出来ないのに……。
「大丈夫、今日から高カロリーの点滴の量も増やしていくから……ちょっとずつ体力も追いついて来るから心配しないで?」
「はい……分かりました……」
すると看護師さんは私を見てニコリと笑みを浮かべる。
「本当に加藤さんって素直な人よね? それに我慢強いし……だから色々な人に好かれるのかしら?」
「え……?」
それは一体どういう意味なのだろう…?
私が看護師さんの言葉の意味を知るのは、その翌日の事だった――
「加藤さん、今日からいよいよ個室に移りますよ」
看護師さんがベッドで横たわる私に声をかけてきた。
「は……はい」
弱々しくも私は何とか返事をした。いまだに私の身体には血圧計と脈拍系のモニターに点滴が繋がれていたけれども、先生の話ではようやく危険な状態を切り抜ける事が出来たみたいで、今日ICUから個室へと移ることが出来るようになったらしい。
先生や看護師さんの話によると、私は交通事故で意識を失ってから3か月ちょうどで目が覚めた。3か月を超えてしまうと回復するのが難しくなり、最悪植物状態に陥ってしまう事があるとの事だった。だから私は本当に助かるギリギリのラインで突然目が覚めたので、先生やICUに勤める看護師さんたちは全員口をそろえて奇跡が起こったと、大喜びしたそうだ。
「もうこれは必要なくなりましたから外しますね」
看護師さんは私の腕からそっとモニターを外してくれた。その時、私は自分の腕を見てギョッとしてしまった。そこにあった私の腕はまるで針金の様だったからだ。
怖い……。
一体今の私はどれだけ痩せてしまったのだろう? 自分の姿を鏡で確認するのが怖くてまだ一度も私は鏡を見ていない。
私のベッドの周囲に4人の看護師さんが付いた。これからベッドごと私はICUの隣の個室に移される。まだ私の腕には点滴やらいろいろチューブが付いているから4人がかりでベッドを移動することになったみたいだった。
「ではベッドを動かしますね」
枕元に立っていた看護師さん声をかけてきた。
「は、はい……お願い……します……」
何とか返事をすると、看護師さんは笑みを浮かべた。
ガコン……
やがて私を乗せたベッドはゆっくり動きだした。するとICUにいた先生や看護師さんたちが皆私の方を向いてパチパチと拍手をして見送ってくれる。中にはおめでとうと声をかけてくる先生もいた。
どうして拍手をするんだろう……? 私が不思議そうな顔をしているのが分かったのか先ほどと同じ看護師さんが教えてくれた。
「あのね、ICUに一度入院した患者さんは回復するのが難しい人達ばかりなの。それで3か月以上経過すると意識が戻らなくても個室に移動することがあるのだけど……加藤さんみたいに意識が戻って個室に移動するケースは珍しいのよ? だから皆拍手をして加藤さんを祝ってくれているの……ってどうかしたの!?加藤さん、どこか痛むのっ!?」
ベッドを移動させながら看護師さんは私を見て驚いている。
「い、いえ……そうじゃ……ないんです……。皆が……私の意識が戻った事……こんなにもお祝いしてくれることが……う、嬉しくて……」
私は必死で言葉を絞り出しながら涙を流していた。目が覚めてから1週間……全身の激しい痛みと戦って、時にはあのまま死んでいた方がましだったと思うような辛かった日々もあったけど……こんなに皆が私を心配してくれていたなんて……。
「あ……ありがとう……ございます……本当に……」
泣きながら私はお礼を言うと、私のベッドを動かしている看護師さんたちも、皆赤い目で私を見下ろしていた……。
「はい、加藤さん。今日からここが貴女の部屋よ。明日から少しずつリハビリしていきましょうね」
私についている点滴の残量を確認しながら看護師さんが話しかけてきた。
「リハビリ……ですか……?」
そんな事、今の私に出来るのだろうか……腕だって鉛のように重くてまともに動かすことも出来ないのに……。
「大丈夫、今日から高カロリーの点滴の量も増やしていくから……ちょっとずつ体力も追いついて来るから心配しないで?」
「はい……分かりました……」
すると看護師さんは私を見てニコリと笑みを浮かべる。
「本当に加藤さんって素直な人よね? それに我慢強いし……だから色々な人に好かれるのかしら?」
「え……?」
それは一体どういう意味なのだろう…?
私が看護師さんの言葉の意味を知るのは、その翌日の事だった――