本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第12章 10 姉の知られざる秘密
その日の夕方の事だった。
交通事故の後遺症のせいか入院中、私はウトウトしている時間が多かった。
16時になってバイタルチェックをする為に看護師さんが部屋に入ってくる気配で私は目が覚めた。
「ん……」
思わず口から言葉が漏れると、看護師さんが声をかけてきた。
「あら? 加藤さん、もしかして目が覚めた?」
「は……はい……。寝てしまったみたいですね……。私……変なんです……気づけばウトウトしていて……いつの間にか眠ってしまっているんです……」
「交通事故の後遺症かしら?身 体を休ませて早く良くなるように働いているかもしれませんね。18時に先生の回診があるのでその時にお話しして下さい。それよりも実は2名の面会の方が談話室に来ているのですけど、会われますか?」
「え……? 2名?」
誰だろう? さっぱり見当がつかない。
「あの……その方って……」
「加藤さんの彼氏のご両親です」
「彼氏……? あ、その事なんですけど……私と……あの人はただの馴染ですから。彼には別に……恋人がいるんです……」
「あら、そうだったのですか? 私はてっきり……」
「はい……違います……」
「それでは幼馴染のご両親とは会いますか? もう少しだけ待って会えないなら帰るって言われているのですけど?」
「……会います……」
私は返事をした――
「鈴音ちゃんっ!」
病室にはいるなり、おばさんが泣きながら私に駆け寄って来た。
「良かった……本当に目が覚めて……!」
おばさんはボロボロ泣きながら私の痩せ細ってしまった右手を握り締めた。
「鈴音ちゃん……本当に助かって良かったよ……」
おじさんも声を震わせて私を見下ろす。
「おじさん……おばさん……心配かけてごめんなさい……」
「鈴音ちゃん。事故に遭った時の事、覚えてる?」
おばさんが私の枕元に椅子を持ってきて、座ると尋ねてきた。おじさんもその隣に座る。
「お姉ちゃんが……赤信号の交差点を渡り始めたので……私が駆け寄って腕を引きよせた時に転んでしまって……。そこから先は良く覚えていません……」
「そう……。そこまで覚えていたのね……」
おばさんがポツリと言う。
「え……? おばさん……どうしてその話を知ってるんですか……?」
するとおじさんが答えた。
「亮平に聞いたからだよ」
「え……? 亮平が……?」
「あの時、亮平は交差点に入り込んでしまった忍ちゃんを助けに行けなかったそうだ。足がすくんでしまったらしくて……。なのに鈴音ちゃん。君は迷うことなく忍ちゃんを助けに交差点に入って忍ちゃんを助けた代わりに事故に遭ってしまったそうだよ」
「……」
私は黙って聞いていた。
「鈴音ちゃんが事故に遭った直後…忍ちゃんが大変だったらしい。パニック状態になって泣き叫んで血まみれになった鈴音ちゃんの身体にしがみついて離れなかったらしい。亮平が救急車を呼んですぐにこの病院に運び込まれたんだが忍ちゃんもその直後、意識を失って倒れて丸1日意識が戻らなかったそうなんだ」
「そう……だったんですか……?」
お姉ちゃんが私にしがみついて泣き叫んでいた……? お姉ちゃんは私に死んで欲しかったんじゃなかったの……?
「それで、その後忍ちゃんは目が覚めた後に改めて精神鑑定を受けたら、解離性同一性障害だった事が分ったらしい」
叔父さんは難しい病名を言った。
「解離性……同一性……障害……?」
何だろう? 何処かで聞いたことがあるような気がする。
「ああ、この病気はね……かつては多重人格障害と言われていたらしい」
「多重……人格……?」
その病名なら良く知っている。でも……まさかお姉ちゃんがそんな病気を持っていたなんて。
「忍ちゃんの先生の診断だと……彼女には3つの人格があるらしい。鈴音ちゃんをとても大切に思っている姉としての人格と……とても憎む人格、そして幼い子供の人格がずっと共存していたらしいんだ」
「……!」
そ、それじゃ……私を憎んでいたのは……もう1人のお姉ちゃんだったの――?
交通事故の後遺症のせいか入院中、私はウトウトしている時間が多かった。
16時になってバイタルチェックをする為に看護師さんが部屋に入ってくる気配で私は目が覚めた。
「ん……」
思わず口から言葉が漏れると、看護師さんが声をかけてきた。
「あら? 加藤さん、もしかして目が覚めた?」
「は……はい……。寝てしまったみたいですね……。私……変なんです……気づけばウトウトしていて……いつの間にか眠ってしまっているんです……」
「交通事故の後遺症かしら?身 体を休ませて早く良くなるように働いているかもしれませんね。18時に先生の回診があるのでその時にお話しして下さい。それよりも実は2名の面会の方が談話室に来ているのですけど、会われますか?」
「え……? 2名?」
誰だろう? さっぱり見当がつかない。
「あの……その方って……」
「加藤さんの彼氏のご両親です」
「彼氏……? あ、その事なんですけど……私と……あの人はただの馴染ですから。彼には別に……恋人がいるんです……」
「あら、そうだったのですか? 私はてっきり……」
「はい……違います……」
「それでは幼馴染のご両親とは会いますか? もう少しだけ待って会えないなら帰るって言われているのですけど?」
「……会います……」
私は返事をした――
「鈴音ちゃんっ!」
病室にはいるなり、おばさんが泣きながら私に駆け寄って来た。
「良かった……本当に目が覚めて……!」
おばさんはボロボロ泣きながら私の痩せ細ってしまった右手を握り締めた。
「鈴音ちゃん……本当に助かって良かったよ……」
おじさんも声を震わせて私を見下ろす。
「おじさん……おばさん……心配かけてごめんなさい……」
「鈴音ちゃん。事故に遭った時の事、覚えてる?」
おばさんが私の枕元に椅子を持ってきて、座ると尋ねてきた。おじさんもその隣に座る。
「お姉ちゃんが……赤信号の交差点を渡り始めたので……私が駆け寄って腕を引きよせた時に転んでしまって……。そこから先は良く覚えていません……」
「そう……。そこまで覚えていたのね……」
おばさんがポツリと言う。
「え……? おばさん……どうしてその話を知ってるんですか……?」
するとおじさんが答えた。
「亮平に聞いたからだよ」
「え……? 亮平が……?」
「あの時、亮平は交差点に入り込んでしまった忍ちゃんを助けに行けなかったそうだ。足がすくんでしまったらしくて……。なのに鈴音ちゃん。君は迷うことなく忍ちゃんを助けに交差点に入って忍ちゃんを助けた代わりに事故に遭ってしまったそうだよ」
「……」
私は黙って聞いていた。
「鈴音ちゃんが事故に遭った直後…忍ちゃんが大変だったらしい。パニック状態になって泣き叫んで血まみれになった鈴音ちゃんの身体にしがみついて離れなかったらしい。亮平が救急車を呼んですぐにこの病院に運び込まれたんだが忍ちゃんもその直後、意識を失って倒れて丸1日意識が戻らなかったそうなんだ」
「そう……だったんですか……?」
お姉ちゃんが私にしがみついて泣き叫んでいた……? お姉ちゃんは私に死んで欲しかったんじゃなかったの……?
「それで、その後忍ちゃんは目が覚めた後に改めて精神鑑定を受けたら、解離性同一性障害だった事が分ったらしい」
叔父さんは難しい病名を言った。
「解離性……同一性……障害……?」
何だろう? 何処かで聞いたことがあるような気がする。
「ああ、この病気はね……かつては多重人格障害と言われていたらしい」
「多重……人格……?」
その病名なら良く知っている。でも……まさかお姉ちゃんがそんな病気を持っていたなんて。
「忍ちゃんの先生の診断だと……彼女には3つの人格があるらしい。鈴音ちゃんをとても大切に思っている姉としての人格と……とても憎む人格、そして幼い子供の人格がずっと共存していたらしいんだ」
「……!」
そ、それじゃ……私を憎んでいたのは……もう1人のお姉ちゃんだったの――?