本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

第2章 9 二日酔い

「あ~…頭痛い…」

ガンガン痛む頭を押さえつつシリアルを食べていた私は隣のリビングでソファに寝っ転がりながらスマホをいじっている亮平を見た。

「ねえ、亮平」

「何だよ」

亮平はスマホから目をそらさずに返事をする。全く…亮平は私には塩対応ばかり取るんだから…。でも、そんなこと一々気にしていたらこっちの身が持たない。よし、気にしない気にしない…。

「朝ご飯はどうしたの?」

「いや、まだ食っていない」

「シリアルで良ければ食べる?」

「いらん。やっぱり日本人は米と味噌汁だろう?」

「え?じゃあ何でまだここにいるの?もう家に帰ったら?」

「…」

何故か亮平は返事をしない。ははあん…なるほど…。

「そっか、お姉ちゃんにお帰りを言いたいんだね?」

すると亮平はガバッとソファから身を起こすと私を見た。

「ばっ!馬鹿っ!何言ってるんだ!ガキじゃあるまいし…」

亮平の大声が頭に響く。

「ちょっとぉ~…頭痛いんだから…大声出さないでよ…」

ズキズキする頭を押さえ、私はシリアルに掛けていた牛乳を飲み干した。

「二日酔いだろう?自業自得じゃ無いのか?大して強くないくせにガバガバ飲むから…」


「そんな事無いってば。でも元はと言えば田代さんのせいじゃないの?睡眠薬?をアルコールに入れた物を飲まされたんでしょう?」

「フム…それは確かに要因の一つかもしれない…」

腕組みをして妙に納得する亮平。

「そう?分かったなら…今日私の代わりに仕事してきてよ」

「おいっ!鈴音…無理言うなあっ!」

「だから叫ばないでってば…。そう言いたくなる程頭痛が辛いんだもの…」

頭を両手で抱えながら私は言う。

「おい鈴音。お前…そんなに辛いのか?痛み止めとかはあるのか?」

流石に心配してくれるのか、亮平が立ち上ると私の傍へやって来た。

「痛み止め…無い。切らしちゃったんだっけ…」

ポツリと言う私。そんな私の様子を少しだけ亮平は見ていたが、突然無言で玄関へ向かって出て行ってしまった。

「・・・帰ったのかな…?何よ。挨拶位して帰ればいいのに…」

食べ終えた食器を流しに運び、後片付けをしようとしている時に玄関の閉まる音が聞こえた。

「ん?誰だろう?」

するとキッチンに亮平が現れた。

「あれ?帰ったんじゃなかったの?」

「違う、痛み止めを取りに行って来たんだよ」

そう言うと亮平は錠剤を2つテーブルの上に置いて、コップに水を汲んでくれた。

「これは非ピリン系の痛み止めだ。2日酔いの痛み止めとしても有効だから飲んでおけよ」

「うん‥ありがとう」

こういう所は優しいんだよね~。早速痛み止めを取り出して水と一緒に飲み込んだ。

「飲んだな。それじゃ…俺は帰るからな」

玄関に向おうとした亮平を私は引き留めた。

「あ、待ってよ亮平」

「何だよ」

「お姉ちゃんが帰るのを待っていたんじゃないの?」

「何言ってるんだ。お前の様子を見る為に来たんだよ」

「え?そうなの?」

駄目だ、嬉しくて顔が笑ってしまう。

「…何だよ、そのニヤケ面は…気味悪いな」

亮平がしらけ切った目で言う。

「ちょっと!一応乙女に向って気味悪いは無いでしょう?!」

「だ・れ・が、乙女だっ!乙女って言うのはなあ…忍さんみたいな人の事を言うんだよ。それじゃ気を付けて仕事行って来いよ」

「…ねえ、亮平」

「なんだよ」

帰りかけた亮平は振り向いた。

「お願いっ!車で職場まで送って行って!頭痛くて、無理そうなの」

パンと手を叩いて、亮平に頭を下げる。

「おまえなあ…甘ったれんなっ!」




「おい、鈴音。起きろよ」

誰かが私を揺すぶっている。う~ん…もう少し寝かせて…。

「おいっ!遅刻するぞっ!」

ハッ!
そこで私はパチリと目を開け・・運転席を見ると亮平が呆れたように私を見ていた。

「あ…?亮平…?」

すると亮平は呆れたようにハンドルに頭を乗せながら言った。

「おまえなあ…たかだが20分位の距離でよくもそんなに寝てられるよな?」

「あははは…ごめん…でも、有難う。送ってくれて」

「別に、ほら。早く行けよ」

「うん、有難う。それじゃ行ってきます」

ガチャリと車のドアを開け、私は職場へと向かった――
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