本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第13章 27 車内での口論
「そ、そうだったの……知らなかった……」
「あの日、お前が交通事故に遭った直後に忍は酷く取り乱して、血まみれのお前に縋りついて泣き叫んで離れなかったんだ。それで鎮静剤を打たれて、お前が病院に運び込まれた直後に意識を失った。ここまでは前に話したよな?」
「う、うん」
「その後だよ。目が覚めた忍は俺と恋人同士だったって事完全に忘れて、あくまで隣に住む鈴音の幼馴染になっていたんだよ」
「だから、俺も忍の前ではあくまで年下の幼馴染として振る舞ってきた。忍にケースワーカーが付いたのもその頃だ。今ではすっかりあの服部って男に頼り切ってるよ」
亮平は自嘲気味に笑った。
「ね、ねぇ……亮平はお姉ちゃんと元の恋人同士に戻れるように関係改善を試みなかったの?」
「……わけ、無いだろう?」
「え? 今……何て言ったの?」
亮平の最初の言葉が小さすぎて、何を言っているか聞き取れなかった。すると亮平は声を荒げた。
「お前が、意識不明の状態で……そんな真似出来るわけ無いだろうっ!?」
ハンドルをガンッと叩く亮平。
「りょ、亮平……」
「お前……俺の事、一体何だと思っているんだ? お前が生死をさまよっている間、忍といちゃついていられるとでも思っていたのか?お前にとって俺はそれだけの存在なのかよっ!?」
「そ、そこまでの事は言っていないけど……」
「毎日、毎日俺がどんな気持ちで過ごしていたか分るか? 今日は目が覚めたか、それとも心臓が止まってしまったか……そんな気持ちを抱えながら3カ月間! しかも俺とお前はただの幼馴染だ。家族じゃないからICUに面会に行ってお前の無事を確認する事も出来ない! 忍だって……精神を病んでいたし、お前の事故の原因は交差点に立ち入った忍を助ける為に交通事故に遭ったんだ。そんな状態の忍をお前の元へ面会に行かせるわけにいかないだろうっ!?」
「それは……」
亮平はハンドルを強く握りしめ、私の方を見ようともせずに続ける。
「だから、俺は……毎日毎日朝と夕方にICUに電話をかけて鈴音の様子を尋ねてきたんだ……その時の俺の気持ちが分るか……?」
亮平はいつの間にか涙を浮かべている。
「亮平……」
私は胸がつまりそうになった。
「良かった……鈴音は今日も生きていた……って……そんな思いを抱えて毎日生きた心地がしなかったって言うのに……医者の言うタイムリミットの3カ月目に入りそうだった時は……気が狂いそうだった……」
知らなかった……亮平がそこまで私の事を心配してくれていたなんて……。
「なのに……ようやく目が覚めたお前は俺に……忍の所へ行ってくれって……。お前は、俺の気持ちよりも……忍を優先するんだからな……」
亮平はとんでもない事を言い出してきた。
「俺はお前を死ぬほど心配していたのに……目覚めてすぐにそんな事を言われた俺の気持ち、お前には分らないだろうな? どれだけ俺が傷ついたか」
「ち、ちょっと待ってよっ、亮平!」
亮平は果てしない位勘違いしている。亮平こそ私の事何にも分っていない。子供の頃から私がどれだけ亮平の事が好きで、報われない恋にどれだけ苦しんできたのか、少しも分ってくれていない。なのに……どうしてそんな事を言えるの?
そのとき。
キーッ……
車が止まった。
「な、何? 亮平?」
「鈴音、マンションに着いたぞ」
「あ……」
窓の外を見ると、そこはマンションの前だった。
「じゃあな」
亮平は私の方を見ようともしない。
「ま、待ってよ、まだ話終わっていないよ!?」
「早くいけよ……。俺も明日仕事があるし」
そこまで言われれば、私は言う通りにするしかなかった。
「わ、分ったよ……。送ってくれてありがとう」
「ああ…」
相変わらず視線を合わせてもくれない亮平にため息をつきながらシートベルトを外して車から降りた。
「それじゃ……おやすみなさい」
「……お休み」
亮平はそれだけ言うと走り去って行った――
「あの日、お前が交通事故に遭った直後に忍は酷く取り乱して、血まみれのお前に縋りついて泣き叫んで離れなかったんだ。それで鎮静剤を打たれて、お前が病院に運び込まれた直後に意識を失った。ここまでは前に話したよな?」
「う、うん」
「その後だよ。目が覚めた忍は俺と恋人同士だったって事完全に忘れて、あくまで隣に住む鈴音の幼馴染になっていたんだよ」
「だから、俺も忍の前ではあくまで年下の幼馴染として振る舞ってきた。忍にケースワーカーが付いたのもその頃だ。今ではすっかりあの服部って男に頼り切ってるよ」
亮平は自嘲気味に笑った。
「ね、ねぇ……亮平はお姉ちゃんと元の恋人同士に戻れるように関係改善を試みなかったの?」
「……わけ、無いだろう?」
「え? 今……何て言ったの?」
亮平の最初の言葉が小さすぎて、何を言っているか聞き取れなかった。すると亮平は声を荒げた。
「お前が、意識不明の状態で……そんな真似出来るわけ無いだろうっ!?」
ハンドルをガンッと叩く亮平。
「りょ、亮平……」
「お前……俺の事、一体何だと思っているんだ? お前が生死をさまよっている間、忍といちゃついていられるとでも思っていたのか?お前にとって俺はそれだけの存在なのかよっ!?」
「そ、そこまでの事は言っていないけど……」
「毎日、毎日俺がどんな気持ちで過ごしていたか分るか? 今日は目が覚めたか、それとも心臓が止まってしまったか……そんな気持ちを抱えながら3カ月間! しかも俺とお前はただの幼馴染だ。家族じゃないからICUに面会に行ってお前の無事を確認する事も出来ない! 忍だって……精神を病んでいたし、お前の事故の原因は交差点に立ち入った忍を助ける為に交通事故に遭ったんだ。そんな状態の忍をお前の元へ面会に行かせるわけにいかないだろうっ!?」
「それは……」
亮平はハンドルを強く握りしめ、私の方を見ようともせずに続ける。
「だから、俺は……毎日毎日朝と夕方にICUに電話をかけて鈴音の様子を尋ねてきたんだ……その時の俺の気持ちが分るか……?」
亮平はいつの間にか涙を浮かべている。
「亮平……」
私は胸がつまりそうになった。
「良かった……鈴音は今日も生きていた……って……そんな思いを抱えて毎日生きた心地がしなかったって言うのに……医者の言うタイムリミットの3カ月目に入りそうだった時は……気が狂いそうだった……」
知らなかった……亮平がそこまで私の事を心配してくれていたなんて……。
「なのに……ようやく目が覚めたお前は俺に……忍の所へ行ってくれって……。お前は、俺の気持ちよりも……忍を優先するんだからな……」
亮平はとんでもない事を言い出してきた。
「俺はお前を死ぬほど心配していたのに……目覚めてすぐにそんな事を言われた俺の気持ち、お前には分らないだろうな? どれだけ俺が傷ついたか」
「ち、ちょっと待ってよっ、亮平!」
亮平は果てしない位勘違いしている。亮平こそ私の事何にも分っていない。子供の頃から私がどれだけ亮平の事が好きで、報われない恋にどれだけ苦しんできたのか、少しも分ってくれていない。なのに……どうしてそんな事を言えるの?
そのとき。
キーッ……
車が止まった。
「な、何? 亮平?」
「鈴音、マンションに着いたぞ」
「あ……」
窓の外を見ると、そこはマンションの前だった。
「じゃあな」
亮平は私の方を見ようともしない。
「ま、待ってよ、まだ話終わっていないよ!?」
「早くいけよ……。俺も明日仕事があるし」
そこまで言われれば、私は言う通りにするしかなかった。
「わ、分ったよ……。送ってくれてありがとう」
「ああ…」
相変わらず視線を合わせてもくれない亮平にため息をつきながらシートベルトを外して車から降りた。
「それじゃ……おやすみなさい」
「……お休み」
亮平はそれだけ言うと走り去って行った――