本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第14章 15 抱擁の後
「か、川口さん……?」
一体何を……?
「……しないでくれ……」
川口さんは私の髪に顔をうずめて震えながら小声で何か言った。
「え……?」
私は川口さんの胸に無理やり顔を押し付けられるような形で抱きしめられ、彼の心臓のドクドク言う音と、小声だったことで何と言ったか聞き取れなかった。彼は一体何と言ったのだろう? 息が詰まるような強い抱擁が苦しい。
「あ、あの……か、川口さん……」
そこで、ビクリと彼の身体が動いて慌てて私の身体を離すと謝ってきた。
「ご、ごめんっ! いきなり抱きしめたりして……! その……驚いたよね……?」
「う、うん……確かに驚きはしたけど……。でもどうしたの? 急にあんな……」
川口さんは私の質問に、一瞬バツが悪そうな顔を見せた。
「加藤さんが泣いていたから……俺だったら……そんな悲し気な顔させないのにって思って……つい、気付いて見ればあんなことを……本当にごめん」
「川口さん……」
ひょっとし彼は私が亮平を好きなことに気づいているのではないだろうか? だから友達でもいいからって……?
「本当にごめん……もう今後は加藤さんの許可なく勝手に触れたりしないから……これからも会ってくれるかな……?」
まるで捨てられた子犬のような眼で私を見つめてくる。そんな彼を無下にすることは出来なかった。
「うん、いいよ……それじゃ、私もう行くから。お休みなさい」
「うん、お休み」
川口さんは私に手を振ってきた。そこで私も手を振ると、背中を向けてマンションの階段を昇って行った――
――ガチャリ
カギを開けてドアを開けると、真っ暗な部屋が私を出迎える。
「ただいま……」
誰に言うともなしに、靴を脱いで部屋に上がると壁についているスイッチで部屋の明かりをつけた。壁に掛けてある時計を見ると時間はもう21時になろうとしている。
「今夜は早めに寝なくちゃ……」
ポツリと呟くと、タンスからパジャマを出してバスルームへと向かった。
シャーッ……
「……」
湯気の立つ熱いシャワーを頭からかぶり、今夜起きた出来事を思い出していた。食事中にかかってきた亮平からの電話……まさかその電話を無視したら川口さんにかけてくるなんて。一体亮平は川口さんの事を何だと思っているのだろう。
キュッキュッ
シャワーのお湯を止めながら思った。
このままではいけない。亮平に連絡をして川口さんにはもう迷惑をかけないでと伝えなければ……。そして私は川口さんの事を真剣に考える為にも、亮平への思いを断ち切るのだと。
その為には……。
「亮平とお姉ちゃんの中を取り持って恋人同士に戻さないと……」
バスルームのドアノブを握り締めると、私はドアを開けた――
濡れた髪をバスタオルでぬぐいながら、扇風機の前にいた。少しの間センターテーブルに置いたスマホをじっと見つめていけれども思い切って手を伸ばし……亮平の電話番号をタップした。
トゥルルルルル……
受話器の向こうでコール音が鳴っている。でも5コール目になっているにも関わらず、亮平は電話に出る気配がない。
もう切ろうかな……?
そう思った矢先。
『もしもしっ!? 鈴音だなっ!?』
突如、切羽つまったかのような声が受話器越しから聞こえてきた――
一体何を……?
「……しないでくれ……」
川口さんは私の髪に顔をうずめて震えながら小声で何か言った。
「え……?」
私は川口さんの胸に無理やり顔を押し付けられるような形で抱きしめられ、彼の心臓のドクドク言う音と、小声だったことで何と言ったか聞き取れなかった。彼は一体何と言ったのだろう? 息が詰まるような強い抱擁が苦しい。
「あ、あの……か、川口さん……」
そこで、ビクリと彼の身体が動いて慌てて私の身体を離すと謝ってきた。
「ご、ごめんっ! いきなり抱きしめたりして……! その……驚いたよね……?」
「う、うん……確かに驚きはしたけど……。でもどうしたの? 急にあんな……」
川口さんは私の質問に、一瞬バツが悪そうな顔を見せた。
「加藤さんが泣いていたから……俺だったら……そんな悲し気な顔させないのにって思って……つい、気付いて見ればあんなことを……本当にごめん」
「川口さん……」
ひょっとし彼は私が亮平を好きなことに気づいているのではないだろうか? だから友達でもいいからって……?
「本当にごめん……もう今後は加藤さんの許可なく勝手に触れたりしないから……これからも会ってくれるかな……?」
まるで捨てられた子犬のような眼で私を見つめてくる。そんな彼を無下にすることは出来なかった。
「うん、いいよ……それじゃ、私もう行くから。お休みなさい」
「うん、お休み」
川口さんは私に手を振ってきた。そこで私も手を振ると、背中を向けてマンションの階段を昇って行った――
――ガチャリ
カギを開けてドアを開けると、真っ暗な部屋が私を出迎える。
「ただいま……」
誰に言うともなしに、靴を脱いで部屋に上がると壁についているスイッチで部屋の明かりをつけた。壁に掛けてある時計を見ると時間はもう21時になろうとしている。
「今夜は早めに寝なくちゃ……」
ポツリと呟くと、タンスからパジャマを出してバスルームへと向かった。
シャーッ……
「……」
湯気の立つ熱いシャワーを頭からかぶり、今夜起きた出来事を思い出していた。食事中にかかってきた亮平からの電話……まさかその電話を無視したら川口さんにかけてくるなんて。一体亮平は川口さんの事を何だと思っているのだろう。
キュッキュッ
シャワーのお湯を止めながら思った。
このままではいけない。亮平に連絡をして川口さんにはもう迷惑をかけないでと伝えなければ……。そして私は川口さんの事を真剣に考える為にも、亮平への思いを断ち切るのだと。
その為には……。
「亮平とお姉ちゃんの中を取り持って恋人同士に戻さないと……」
バスルームのドアノブを握り締めると、私はドアを開けた――
濡れた髪をバスタオルでぬぐいながら、扇風機の前にいた。少しの間センターテーブルに置いたスマホをじっと見つめていけれども思い切って手を伸ばし……亮平の電話番号をタップした。
トゥルルルルル……
受話器の向こうでコール音が鳴っている。でも5コール目になっているにも関わらず、亮平は電話に出る気配がない。
もう切ろうかな……?
そう思った矢先。
『もしもしっ!? 鈴音だなっ!?』
突如、切羽つまったかのような声が受話器越しから聞こえてきた――