本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第16章 5 滲んだ月
「鈴音……泣くな。俺が悪かったんだ。お前にあんな不誠実な男を紹介したから……悪かった」
亮平は頭を下げてきた。
「そ、そんな言い方しないでよ……本当に直人さんは良い人だったんだよ……?」
だって、私はあれ程誰かに愛してもらった事は無かったから。
「む、むしろ……感謝してるよ。私みたいなのにあんなに良くしてくれて……思い出も沢山……つ、作れたし……」
ハンカチを取り出すと、零れ落ちる涙を抑えた。
「鈴音! お前……何で自分の事そんな卑下した言い方をするんだよ!」
「だ、だって……」
私は本当に自分に自信が無いのだから。でもそうなったのは好きだった亮平に振り向いて貰えなかった過去がトラウマになっているのかもしれない。
「大丈夫、鈴音。お前は気立てもいいし、何より美人だ。きっとすぐに別の男が見つかるさ。何なら俺が紹介してやるか?」
その言葉に首を振った。
「い、いや……だってまだ振られたかどうか分からないもの……きっと直人さんの事だから別れるにしろ……何か言って来てくれるはずだよ……」
「そ、そうか。まずはそれが先だな。くっそ……あいつ! でもやっぱり許せない! 俺がお前の代わりに問い詰めてやる!」
「ま、待って。亮平、直人さんに何するつもりなのっ!?」
「決まってるだろう!? あいつに鈴音を泣かせた罪を償わせてやる。数発は殴らないと俺の気が収まりそうにないしな。言っておくがこのまま泣き寝入りだけはさせるつもりはないからな!?」
直人さんを殴るなんて、冗談じゃない。
「やめて! 余計な真似はしないでよ!」
思わず声を荒げてしまった。
「だけどお前、それじゃどうするんだよ……」
「じ、自分で確かめるよ……直人さんのマンションを訪ねてみる。仮に出てくれなくてもマンションの鍵は持ってるし……会うのはすごく怖いけど……」
自分の体が震えている。
「分かった。そのときは俺も付きそうよ」
「だ、だけど……! 亮平と一緒に行くのは駄目だよ!」
仮にも恋人の住むマンションに異性の幼馴染と一緒に訪ねるなんて、こんなこと世間から見られたらどんなふうに思われるだろう?
「分かったよ、ならこうしよう。俺は川口のマンションの建物の前で待機している。そしてお前は1人であいつのマンションを訪ねて来い」
「りょ、亮平……」
「大丈夫、俺がお前についててやるから」
「う、うん……あ、ありがとう……」
そして私はまた少しだけ泣いた。
****
「鈴音、お前本当に1人で帰れるのか?」
亮平が心配そうに駅の改札まで見送ってくれた。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう……ところでお姉ちゃんとの交際はどう?」
「あ、ああ。まあまあかな……」
まあまあって事は順調なんだ……。
「そっか。良かったね」
私の恋愛は終わってしまったかもしれないけれど、亮平とお姉ちゃんの恋がうまくいってるなら……私はそれでいい。
「それじゃ行くね、亮平」
改札で手を振ると亮平が声をかけてきた。
「鈴音!」
「何?」
「元気出せよ? 俺がついてるから」
「うん……ありがとう」
そして私は背を向けてホームへと降りていった。
電車を待ちながらスマホをチェックしたけど、やっぱり直人さんからの連絡は一切入ってなかった。
泣きたくなる気持ちをこらえて私は夜空を見上げたけれど、この日の夜空は滲んで見えた――
亮平は頭を下げてきた。
「そ、そんな言い方しないでよ……本当に直人さんは良い人だったんだよ……?」
だって、私はあれ程誰かに愛してもらった事は無かったから。
「む、むしろ……感謝してるよ。私みたいなのにあんなに良くしてくれて……思い出も沢山……つ、作れたし……」
ハンカチを取り出すと、零れ落ちる涙を抑えた。
「鈴音! お前……何で自分の事そんな卑下した言い方をするんだよ!」
「だ、だって……」
私は本当に自分に自信が無いのだから。でもそうなったのは好きだった亮平に振り向いて貰えなかった過去がトラウマになっているのかもしれない。
「大丈夫、鈴音。お前は気立てもいいし、何より美人だ。きっとすぐに別の男が見つかるさ。何なら俺が紹介してやるか?」
その言葉に首を振った。
「い、いや……だってまだ振られたかどうか分からないもの……きっと直人さんの事だから別れるにしろ……何か言って来てくれるはずだよ……」
「そ、そうか。まずはそれが先だな。くっそ……あいつ! でもやっぱり許せない! 俺がお前の代わりに問い詰めてやる!」
「ま、待って。亮平、直人さんに何するつもりなのっ!?」
「決まってるだろう!? あいつに鈴音を泣かせた罪を償わせてやる。数発は殴らないと俺の気が収まりそうにないしな。言っておくがこのまま泣き寝入りだけはさせるつもりはないからな!?」
直人さんを殴るなんて、冗談じゃない。
「やめて! 余計な真似はしないでよ!」
思わず声を荒げてしまった。
「だけどお前、それじゃどうするんだよ……」
「じ、自分で確かめるよ……直人さんのマンションを訪ねてみる。仮に出てくれなくてもマンションの鍵は持ってるし……会うのはすごく怖いけど……」
自分の体が震えている。
「分かった。そのときは俺も付きそうよ」
「だ、だけど……! 亮平と一緒に行くのは駄目だよ!」
仮にも恋人の住むマンションに異性の幼馴染と一緒に訪ねるなんて、こんなこと世間から見られたらどんなふうに思われるだろう?
「分かったよ、ならこうしよう。俺は川口のマンションの建物の前で待機している。そしてお前は1人であいつのマンションを訪ねて来い」
「りょ、亮平……」
「大丈夫、俺がお前についててやるから」
「う、うん……あ、ありがとう……」
そして私はまた少しだけ泣いた。
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「鈴音、お前本当に1人で帰れるのか?」
亮平が心配そうに駅の改札まで見送ってくれた。
「うん、大丈夫だよ。ありがとう……ところでお姉ちゃんとの交際はどう?」
「あ、ああ。まあまあかな……」
まあまあって事は順調なんだ……。
「そっか。良かったね」
私の恋愛は終わってしまったかもしれないけれど、亮平とお姉ちゃんの恋がうまくいってるなら……私はそれでいい。
「それじゃ行くね、亮平」
改札で手を振ると亮平が声をかけてきた。
「鈴音!」
「何?」
「元気出せよ? 俺がついてるから」
「うん……ありがとう」
そして私は背を向けてホームへと降りていった。
電車を待ちながらスマホをチェックしたけど、やっぱり直人さんからの連絡は一切入ってなかった。
泣きたくなる気持ちをこらえて私は夜空を見上げたけれど、この日の夜空は滲んで見えた――