本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第16章 21 涙の電話
「もしもし……」
スマホをタップして電話に出た。
『あ、鈴音! お前からの連絡ずっと待っていたのにどうして電話もメールもしてこなかったんだよ!』
電話越しから聞こえてくる亮平の声は、いつもと何ら変わりなかった。
「うん……色々あって……連絡どころじゃなくてごめんね。心配したかな?」
『したに決まってるだろうっ!? それで? あれから川口の事何か分かったのか?』
亮平の切羽詰まった様子が手に取るように分かった。
「ねえ、亮平は今何処にいるの? 自分の部屋?」
『ああ、勿論そうだ』
「それならな、PCで『川口家電』て会社調べてみてくれる?」
口で説明するより、亮平の目で確認してもらった方が早いだろう。だって私じゃ……説明している最中にまた泣きたくなってきてしまうかもしれないから。
『え……? 川口家電……それって、あの大手家電メーカーのかっ!? まさかっ!』
少しの間沈黙が流れ、やがて亮平の驚愕する声が聞こえた。
『そ、そんな……う、嘘だろう……?』
「嘘じゃないよ、本当の事。そこに直人さんのニュースも出てるんじゃない?」
私はもうネットのニュースなんか目にしたくなかった。
『ああ……書いてあるな。あいつ、社長の息子だったのか? だけど業績不振で倒産寸前だったなんて……それであいつ、身売りしたのか!? 常盤商事の社長令嬢と結婚だって? 恋人のお前を捨てて……何って酷いやつなんだ!』
亮平の声が怒りで震えている。
「やめて! 直人さんをそんな風に言わないで!」
気付けば私は叫んでいた。
『分かってるのか? あいつはお前を捨てて金持ちの社長令嬢と結婚するんだぞ? こんな理不尽な事許せるのか?』
「仕方なかったんだよ……お父さんに泣きつかれたんだから……それでお父さんと2人で常盤商事にお願いに行ったら、偶然居合わせた恵利さんに気に入られて結婚を迫られたんだよ? 社員が路頭に迷ってもいいのかって?」
『……何でそんなに話に詳しいんだよ?』
「直人さんが最後に私に動画のメッセージを残してくれたからだよ……それに直人さんの結婚相手の女性が仕事が終わって帰る途中に待ち伏せしていたんだよ。それでカフェに連れて行かれて……な、直人さんの部屋の合鍵を返せって……100万円渡してきたの……。手切れ金だって……」
目頭が熱くなってきて、気付けば私は泣きながら亮平に語っていた。
『鈴音……! お、お前……そんな辛い目に今夜遭っていたのかよ……』
亮平の声も涙声になっていた。
『くっそ……! 川口も、その社長令嬢も許せねえっ! 一体鈴音を何だと思ってるんだ! こうなったら意地でも居場所を突き止めて……』
「やめて! そんな事しないで!」
私は涙声で訴えた。
『いいのかよ? お前このまま泣き寝入りするつもりか!? 事前に何も言わずにいきなり姿をくらますなんて卑怯じゃないか!』
卑怯? 私は今までそんな風に思ったことは無かった。ただ、直人さんはすごく苦しんでいた。あんなのは演技だと他の人から言われたとしても、私は少しも彼を恨んでいない。むしろ私に沢山愛をくれた。今は悲しくて辛いけれどもいつかは素敵な思い出に変わるかもしれないから。
「亮平……私、直人さんと付き合えてすごく幸せだったよ。だから困らせたくないの……。お願いだから何もしようとしないで……」
ただ……どうしてもやらなければならない事が一つだけある。
『鈴音……』
「亮平、私……このマンション出るよ。もうこれ以上直人さんが住んでいたマンションの隣に住むのは辛すぎて……」
私は涙ながらに自分の今の気持ちを吐露した――
スマホをタップして電話に出た。
『あ、鈴音! お前からの連絡ずっと待っていたのにどうして電話もメールもしてこなかったんだよ!』
電話越しから聞こえてくる亮平の声は、いつもと何ら変わりなかった。
「うん……色々あって……連絡どころじゃなくてごめんね。心配したかな?」
『したに決まってるだろうっ!? それで? あれから川口の事何か分かったのか?』
亮平の切羽詰まった様子が手に取るように分かった。
「ねえ、亮平は今何処にいるの? 自分の部屋?」
『ああ、勿論そうだ』
「それならな、PCで『川口家電』て会社調べてみてくれる?」
口で説明するより、亮平の目で確認してもらった方が早いだろう。だって私じゃ……説明している最中にまた泣きたくなってきてしまうかもしれないから。
『え……? 川口家電……それって、あの大手家電メーカーのかっ!? まさかっ!』
少しの間沈黙が流れ、やがて亮平の驚愕する声が聞こえた。
『そ、そんな……う、嘘だろう……?』
「嘘じゃないよ、本当の事。そこに直人さんのニュースも出てるんじゃない?」
私はもうネットのニュースなんか目にしたくなかった。
『ああ……書いてあるな。あいつ、社長の息子だったのか? だけど業績不振で倒産寸前だったなんて……それであいつ、身売りしたのか!? 常盤商事の社長令嬢と結婚だって? 恋人のお前を捨てて……何って酷いやつなんだ!』
亮平の声が怒りで震えている。
「やめて! 直人さんをそんな風に言わないで!」
気付けば私は叫んでいた。
『分かってるのか? あいつはお前を捨てて金持ちの社長令嬢と結婚するんだぞ? こんな理不尽な事許せるのか?』
「仕方なかったんだよ……お父さんに泣きつかれたんだから……それでお父さんと2人で常盤商事にお願いに行ったら、偶然居合わせた恵利さんに気に入られて結婚を迫られたんだよ? 社員が路頭に迷ってもいいのかって?」
『……何でそんなに話に詳しいんだよ?』
「直人さんが最後に私に動画のメッセージを残してくれたからだよ……それに直人さんの結婚相手の女性が仕事が終わって帰る途中に待ち伏せしていたんだよ。それでカフェに連れて行かれて……な、直人さんの部屋の合鍵を返せって……100万円渡してきたの……。手切れ金だって……」
目頭が熱くなってきて、気付けば私は泣きながら亮平に語っていた。
『鈴音……! お、お前……そんな辛い目に今夜遭っていたのかよ……』
亮平の声も涙声になっていた。
『くっそ……! 川口も、その社長令嬢も許せねえっ! 一体鈴音を何だと思ってるんだ! こうなったら意地でも居場所を突き止めて……』
「やめて! そんな事しないで!」
私は涙声で訴えた。
『いいのかよ? お前このまま泣き寝入りするつもりか!? 事前に何も言わずにいきなり姿をくらますなんて卑怯じゃないか!』
卑怯? 私は今までそんな風に思ったことは無かった。ただ、直人さんはすごく苦しんでいた。あんなのは演技だと他の人から言われたとしても、私は少しも彼を恨んでいない。むしろ私に沢山愛をくれた。今は悲しくて辛いけれどもいつかは素敵な思い出に変わるかもしれないから。
「亮平……私、直人さんと付き合えてすごく幸せだったよ。だから困らせたくないの……。お願いだから何もしようとしないで……」
ただ……どうしてもやらなければならない事が一つだけある。
『鈴音……』
「亮平、私……このマンション出るよ。もうこれ以上直人さんが住んでいたマンションの隣に住むのは辛すぎて……」
私は涙ながらに自分の今の気持ちを吐露した――