本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第16章 22 長い夜
『ああ、そうだな。鈴音、そんなマンションはすぐに出たほうがいい。そしたら実家に戻るんだろう?』
亮平は当然のような言い方をするけど……。
「ううん……戻らない。また何処か安い物件探してそこに住むよ……」
『は? 本気で言ってるのか? 忍はお前が戻ってくるのを待ってるんだぞ!?』
私があの家に戻る事はもう無いだろう。今の状況のお姉ちゃんとなら一緒に住むことも可能だろう。けど、また私と暮らすようになって心の病が再発してしまったら? 私とお姉ちゃんは別々に暮らしたほうがいいに決まっている。
「亮平……お姉ちゃんは私と一緒に暮らしていて心の病気にかかってしまったんだよ。だから私達は離れて暮らしたほうがいいんだよ。お金は……確かに大変だけど何とか切り詰めて……」
『それなら……俺と一緒に住むか?』
「……は?」
亮平はとんでもないことを言ってきた。
『俺もいい加減家を出て暮らすことを考えてもいい年齢だしな』
「ねぇ。何言ってるの? 亮平は今の職場から便利な場所に住んでるじゃない。なのにどうしてわざわざ家を出ることを考えているの?第一私と一緒に暮らすってどう考えてもおかしいじゃない。それとも冗談のつもりなの?」
駄目だ、亮平が何を考えているか分からない。それに……もし今の言葉が冗談なら質が悪すぎる。
『別に冗談でも無いし、本気で考えているぞ? 鈴音が1人暮らしのお金を工面するのが大変だって言うなら、俺が協力してやろうかと思っただけだよ。あ、でも別にこれは同棲とかそんなものじゃないからな? いわゆるシェアルームってやつだ』
「駄目だよ。そんな事出来るはず無いでしょう? 大体亮平はお姉ちゃんの事好きなんでしょう? 2人は恋人同士なんでしょう?」
『あ……あ、ああ。そうだな。そうだったな……だけど、お前は俺にとって大切な……』
「?」
けれど何故かそこで亮平は言葉を切ってしまった。
「亮平……もう電話切ってもいいかな……。今から不動産物件探さないといけないから……」
『ああ、分かったよ。それじゃ俺もお前の為に探しておいてやるよ』
「え? 別にいいよ、そんな事しなくても」
『いや、遠慮するなって。予算はいくら位なんだ』
「それじゃ、5万円位」
もう亮平からの電話を切りたかったから、ありえない金額を言った。
『え? お、おい! いくらなんでもそれは無理だろう!?』
「ね? だから無理なんだからいいってば。じゃあね、おやすみなさい」
まだ受話器越しから亮平は何かを言っていたけれども、強引に電話を切ってしまった。
「ごめんね、亮平……」
電話を切って、ポツリと呟いた。だって、まだ恵利さんとの会話が尾を引きずっていて1人でじっくりこれからの事を考えたかったからだ。
「あ、そうだった……。ディズニーリゾートのホテル……」
立ち上がって雑誌や本などを入れてあるカラーボックスの中から小さな透明のビニールケースを取り出した。中にはホテルのチケットが入っている。
「どうしよう……恵利さんに返すように言われていたのに……もしかして直人さんに頼まれたのかな?」
そこまで考えて私は首を振った。ううん、直人さんはそんな人じゃない。私はあの時の動画の直人さんを信じている。動画の中の直人さんは私へのクリスマスプレゼントだと言った。きっと恵利さんは私がホテルのチケットを持っているのが気に入らないんだ。だから私からチケットを取り上げたかったのだろう。でも恵利さんの元に直人さんから電話がかかってきて……耐えきれずに逃げてしまった。
「きっと……今頃2人は……」
思わず私は直人さんが恵利さんと一緒にいる場面を想像してしまい……膝を抱えて涙した。
今夜も……私にとっての長い夜が始まる――
亮平は当然のような言い方をするけど……。
「ううん……戻らない。また何処か安い物件探してそこに住むよ……」
『は? 本気で言ってるのか? 忍はお前が戻ってくるのを待ってるんだぞ!?』
私があの家に戻る事はもう無いだろう。今の状況のお姉ちゃんとなら一緒に住むことも可能だろう。けど、また私と暮らすようになって心の病が再発してしまったら? 私とお姉ちゃんは別々に暮らしたほうがいいに決まっている。
「亮平……お姉ちゃんは私と一緒に暮らしていて心の病気にかかってしまったんだよ。だから私達は離れて暮らしたほうがいいんだよ。お金は……確かに大変だけど何とか切り詰めて……」
『それなら……俺と一緒に住むか?』
「……は?」
亮平はとんでもないことを言ってきた。
『俺もいい加減家を出て暮らすことを考えてもいい年齢だしな』
「ねぇ。何言ってるの? 亮平は今の職場から便利な場所に住んでるじゃない。なのにどうしてわざわざ家を出ることを考えているの?第一私と一緒に暮らすってどう考えてもおかしいじゃない。それとも冗談のつもりなの?」
駄目だ、亮平が何を考えているか分からない。それに……もし今の言葉が冗談なら質が悪すぎる。
『別に冗談でも無いし、本気で考えているぞ? 鈴音が1人暮らしのお金を工面するのが大変だって言うなら、俺が協力してやろうかと思っただけだよ。あ、でも別にこれは同棲とかそんなものじゃないからな? いわゆるシェアルームってやつだ』
「駄目だよ。そんな事出来るはず無いでしょう? 大体亮平はお姉ちゃんの事好きなんでしょう? 2人は恋人同士なんでしょう?」
『あ……あ、ああ。そうだな。そうだったな……だけど、お前は俺にとって大切な……』
「?」
けれど何故かそこで亮平は言葉を切ってしまった。
「亮平……もう電話切ってもいいかな……。今から不動産物件探さないといけないから……」
『ああ、分かったよ。それじゃ俺もお前の為に探しておいてやるよ』
「え? 別にいいよ、そんな事しなくても」
『いや、遠慮するなって。予算はいくら位なんだ』
「それじゃ、5万円位」
もう亮平からの電話を切りたかったから、ありえない金額を言った。
『え? お、おい! いくらなんでもそれは無理だろう!?』
「ね? だから無理なんだからいいってば。じゃあね、おやすみなさい」
まだ受話器越しから亮平は何かを言っていたけれども、強引に電話を切ってしまった。
「ごめんね、亮平……」
電話を切って、ポツリと呟いた。だって、まだ恵利さんとの会話が尾を引きずっていて1人でじっくりこれからの事を考えたかったからだ。
「あ、そうだった……。ディズニーリゾートのホテル……」
立ち上がって雑誌や本などを入れてあるカラーボックスの中から小さな透明のビニールケースを取り出した。中にはホテルのチケットが入っている。
「どうしよう……恵利さんに返すように言われていたのに……もしかして直人さんに頼まれたのかな?」
そこまで考えて私は首を振った。ううん、直人さんはそんな人じゃない。私はあの時の動画の直人さんを信じている。動画の中の直人さんは私へのクリスマスプレゼントだと言った。きっと恵利さんは私がホテルのチケットを持っているのが気に入らないんだ。だから私からチケットを取り上げたかったのだろう。でも恵利さんの元に直人さんから電話がかかってきて……耐えきれずに逃げてしまった。
「きっと……今頃2人は……」
思わず私は直人さんが恵利さんと一緒にいる場面を想像してしまい……膝を抱えて涙した。
今夜も……私にとっての長い夜が始まる――