本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第17章 7 亮平へのお願い
「よし、飯も食ったことだし鈴音のマンションへ行くか」
亮平がテーブルの上の伝票を取った。
「あ、待って。私の分も支払うから」
財布を出そうとすると亮平が止めた。
「何言ってるんだ? お前から金取るはずないだろう? 大体引っ越しするんだから金だって無いじゃないか」
「う、うん……」
正直な話し、亮平の言ってることは当たっている。私はまだ社会人になって1年目。なのに、すでに引っ越しは2回目だ。隆史さんの事も含めると3回目になってしまう。
「ありがとう、余裕ができたら今度何か奢らせてもらうよ」
「別にいいよ、奢ってもらおうなんてこれっぽちも思っていないから」
「う〜ん……でもそれじゃやっぱり悪いよ」
「そっか? ならそこまで言うなら……そうだな、なんか今度飯作ってくれよ、新しい引越し先に行ったらさ」
亮平は新しく引っ越したマンションに遊びに来るつもりなのかな? そうだ。今度の引越し先はお姉ちゃんも呼んであげようかな?
「うん、分かった。それじゃお姉ちゃんと一緒に遊びに来て」
「え? 忍もか?」
意外そうな顔で私を見る。
「うん、そうだけど?」
「う〜ん……まあ別にいいか。分かったよ。よし、それじゃ行くか」
亮平は伝票とダンボール箱の束を持つと立ち上がった――
****
自転車にダンボールを積んで、亮平が自転車を押してくれている。
「自転車も引越し先に持っていくんだろう?」
住宅街を2人で歩きながら亮平が話しかけてきた。
「うん、当たり前じゃない。今度のマンションの方が家から近いけど自転車はあれば便利だし。何より自転車で職場まで通えるんだよ?」
「そうか、それはいいよな。やっぱり俺も1人暮らし考えるかな? いい加減いつまでも親元で暮らしているのも何だし」
全く亮平は気楽なものだ。実家ならお金だって然程かからないから貯金だって出来るのに。
「亮平、前にも言ったけど実家から通えるならそれに越したことは無いよ?」
「う〜ん……でもなあ……そう言えば鈴音のマンションはどのくらいの広さなんだ?」
「え!? まさか私の新居に居候するつもりなの?」
「いや、居候って言い方は良くないな。シェアルームっていうのどうだ?」
「あの部屋に2人で住むなんて無理に決まっているでしょう? 1DKのマンションなんだから。独立を考えているなら、お姉ちゃんと結婚してあげて」
「!」
亮平の肩がピクリと動いた。
「お姉ちゃんをやっぱり1人にしておくのは心配だから。本当は私が一緒に暮らせばいいのかもしれないけど、せっかく良くなってきた精神状態がまたおかしくなったらまずいでしょ? 亮平とお姉ちゃんは恋人同士なんだから結婚してあの家で一緒に暮らすのが一番なんじゃないかな?」
「お前、よほど忍の事心配なんだな」
「まあね。たった1人のお姉ちゃんだし」
血はつながっていないけども……。
そんな話をしているうちに、マンションに到着した。
「よし、自転車止めておくから鈴音は先に部屋に戻ってろよ」
「うん、分かった」
自転車は亮平にお願いして、私は自分の部屋へ向かうことにした。部屋へ行く時、ついいつもの癖で直人さんがかつて住んでいた部屋を見てしまう。……相変わらず部屋の窓は真っ暗だった。
「直人さん……」
思わずポツリと口に出してその名を呼ぶ。きっと今頃直人さんは恵利さんと一緒に過ごしているだろうな。あの夜、私は恵利さんに直人さんを幸せにしてあげて下さいとお願いした。その言葉を聞いた時、驚いたように目を見開いて恵利さんは私を見ていた。直人さんには幸せになって貰いたい。だって私は直人さんのお陰で短かったけど幸せな時間を過ごすことが出来たから。
「早く荷造り済ませなくちゃ」
マンションの階段を登って私は自分の部屋を目指した――
亮平がテーブルの上の伝票を取った。
「あ、待って。私の分も支払うから」
財布を出そうとすると亮平が止めた。
「何言ってるんだ? お前から金取るはずないだろう? 大体引っ越しするんだから金だって無いじゃないか」
「う、うん……」
正直な話し、亮平の言ってることは当たっている。私はまだ社会人になって1年目。なのに、すでに引っ越しは2回目だ。隆史さんの事も含めると3回目になってしまう。
「ありがとう、余裕ができたら今度何か奢らせてもらうよ」
「別にいいよ、奢ってもらおうなんてこれっぽちも思っていないから」
「う〜ん……でもそれじゃやっぱり悪いよ」
「そっか? ならそこまで言うなら……そうだな、なんか今度飯作ってくれよ、新しい引越し先に行ったらさ」
亮平は新しく引っ越したマンションに遊びに来るつもりなのかな? そうだ。今度の引越し先はお姉ちゃんも呼んであげようかな?
「うん、分かった。それじゃお姉ちゃんと一緒に遊びに来て」
「え? 忍もか?」
意外そうな顔で私を見る。
「うん、そうだけど?」
「う〜ん……まあ別にいいか。分かったよ。よし、それじゃ行くか」
亮平は伝票とダンボール箱の束を持つと立ち上がった――
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自転車にダンボールを積んで、亮平が自転車を押してくれている。
「自転車も引越し先に持っていくんだろう?」
住宅街を2人で歩きながら亮平が話しかけてきた。
「うん、当たり前じゃない。今度のマンションの方が家から近いけど自転車はあれば便利だし。何より自転車で職場まで通えるんだよ?」
「そうか、それはいいよな。やっぱり俺も1人暮らし考えるかな? いい加減いつまでも親元で暮らしているのも何だし」
全く亮平は気楽なものだ。実家ならお金だって然程かからないから貯金だって出来るのに。
「亮平、前にも言ったけど実家から通えるならそれに越したことは無いよ?」
「う〜ん……でもなあ……そう言えば鈴音のマンションはどのくらいの広さなんだ?」
「え!? まさか私の新居に居候するつもりなの?」
「いや、居候って言い方は良くないな。シェアルームっていうのどうだ?」
「あの部屋に2人で住むなんて無理に決まっているでしょう? 1DKのマンションなんだから。独立を考えているなら、お姉ちゃんと結婚してあげて」
「!」
亮平の肩がピクリと動いた。
「お姉ちゃんをやっぱり1人にしておくのは心配だから。本当は私が一緒に暮らせばいいのかもしれないけど、せっかく良くなってきた精神状態がまたおかしくなったらまずいでしょ? 亮平とお姉ちゃんは恋人同士なんだから結婚してあの家で一緒に暮らすのが一番なんじゃないかな?」
「お前、よほど忍の事心配なんだな」
「まあね。たった1人のお姉ちゃんだし」
血はつながっていないけども……。
そんな話をしているうちに、マンションに到着した。
「よし、自転車止めておくから鈴音は先に部屋に戻ってろよ」
「うん、分かった」
自転車は亮平にお願いして、私は自分の部屋へ向かうことにした。部屋へ行く時、ついいつもの癖で直人さんがかつて住んでいた部屋を見てしまう。……相変わらず部屋の窓は真っ暗だった。
「直人さん……」
思わずポツリと口に出してその名を呼ぶ。きっと今頃直人さんは恵利さんと一緒に過ごしているだろうな。あの夜、私は恵利さんに直人さんを幸せにしてあげて下さいとお願いした。その言葉を聞いた時、驚いたように目を見開いて恵利さんは私を見ていた。直人さんには幸せになって貰いたい。だって私は直人さんのお陰で短かったけど幸せな時間を過ごすことが出来たから。
「早く荷造り済ませなくちゃ」
マンションの階段を登って私は自分の部屋を目指した――