本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第17章 16 井上君は挙動不審
翌朝――
今日は早番だった。早番の日は8時半には代理店に行って開店準備をしなくてはいけない。
「さて、そろそろ出勤しようかな?」
朝の支度を終えてエプロンを外しながら時計を見ると8時10分になろうとしている。
職場が近いって本当にいいな。だって自転車に乗って5分で職場についてしまうんだから。通勤時間がかからない分、時間が取れるようになったから来年あたりは何か習い事でも始めてみようかな?
戸締まりをするとマンションを出た――
****
自転車に乗って代理店に到着すると、時刻は8時20分だった。
「フフ、余裕で到着」
代理店の駐車場スペースの空いている場所に自転車を止めると、シャッターの鍵を開けて店内へと入っていった。
ロッカールームで制服に着替えると店舗へ入るとまず最初に店内の電気をつけて自分のPCの電源をいれる。自動ドアの鍵を解除した店の外へ出てほうきで外掃除をしていると、同じ早番の井上君がやってきた。
「おはよう、井上君」
「おはよう、加藤さん随分早いな。すぐに手伝うよ」
井上くんは私が出勤して、もう外回りの掃除をしているのを見て慌てている。
「いいよ別に気にしなくても。早めに着いたから勝手に始めていただけなんだから」
「いやいや、そんな訳にいかないって。待っててくれ。荷物置いたらすぐに手伝うから俺の仕事残しておいてくれよ」
「うん。分った」
井上くんの言い方が何だかおかしくて、クスリと笑って返事をすると彼は急いで店の奥へと姿を消して行った。
塵取りではいたゴミをかき集めていた頃、井上君が水の入ったバケツを持ってやってきた。
「お待たせ」
「あ、お水汲んで来てくれたんだね? ありがとう」
「ああ」
言いながら井上君が水をまいたので、排水溝にほうきで水を掃流していていると不意に声をかけられた。
「あのさ……加藤さん」
「何?」
そのまま下を向いて掃除をしていると再び井上君が尋ねて来た。
「最近、太田先輩と仲いいよね」
「は?」
その言葉に顔を上げると、何故か真剣な目で私を見ている井上君がいた。
「ど、どうしたの? 急に?」
余りの突然の言葉に固まってしまった。
「だって最近よく一緒にお昼を食べに行ってるみたいだし……」
「え? まだ2回しか行ってないよ? それを言うなら井上君との方が沢山行ってるけど?」
箒と塵取りを片付ける為に店の倉庫に向かって歩き出すと、バケツを持った井上君も後からついて来た。
「加藤さんはさ、太田先輩の事どう思ってる?」
「太田先輩か……頼りがいのある良い先輩だよね。井上君もそう思わない?」
「そりゃ、俺だって思うよ。だって俺達と殆ど年齢違わないのに、錦糸町店の営業成績トップだもんな」
「うん。人当たりが良い先輩だものね。だから尊敬してるよ」
箒と塵取りを掃除用具入れにしまうと、今度は2人で店舗へ足を向ける。
昨夜片付けたパンフレットが入ったラックを井上君と外に並べる作業をしていると今度はクリスマスの日の事を尋ねてきた。
「加藤さん。クリスマス……デートだったんだろう? 楽しかったかい?」
「デート……」
不意に直人さんの事が思い出されて、胸がチクリと痛んだ。職場の人達はクリスマスに私がデートしたものとばかり思っている。でも井上君には本当の事話したほうがいいかな? 私の事大分心配してくれていたし。
「あ、あのね……私、彼とは別れたの。だからデートはしていないんだ」
「えっ!? そ、そうだったのか!? それで太田先輩が……!」
「太田先輩がどうかした?」
井上くんは何が言いたいのだろう。
「あ、いや。何でもない! それじゃ今、フリーなんだな?」
「うん。そうだけど」
でも、私当分恋愛は……。
「よし、分った!」
突然井上君が大声を出すと言った。
「加藤さん、来年同期仲間と新年会やろうぜ!」
「新年会かぁ……うん、楽しそうだね。やりたい」
「よっしゃ! 俺が皆に声をかけとくよ! やっぱり同期は同期同士で仲良くするべきだもんな!」
井上くんは妙に嬉しそうに開店準備を続けている。
一体井上君は突然どうしたのだろう……? 何だかちょっとだけ挙動不審に見える。
私は首を傾げながらパンフレットの補充準備を始めた――
今日は早番だった。早番の日は8時半には代理店に行って開店準備をしなくてはいけない。
「さて、そろそろ出勤しようかな?」
朝の支度を終えてエプロンを外しながら時計を見ると8時10分になろうとしている。
職場が近いって本当にいいな。だって自転車に乗って5分で職場についてしまうんだから。通勤時間がかからない分、時間が取れるようになったから来年あたりは何か習い事でも始めてみようかな?
戸締まりをするとマンションを出た――
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自転車に乗って代理店に到着すると、時刻は8時20分だった。
「フフ、余裕で到着」
代理店の駐車場スペースの空いている場所に自転車を止めると、シャッターの鍵を開けて店内へと入っていった。
ロッカールームで制服に着替えると店舗へ入るとまず最初に店内の電気をつけて自分のPCの電源をいれる。自動ドアの鍵を解除した店の外へ出てほうきで外掃除をしていると、同じ早番の井上君がやってきた。
「おはよう、井上君」
「おはよう、加藤さん随分早いな。すぐに手伝うよ」
井上くんは私が出勤して、もう外回りの掃除をしているのを見て慌てている。
「いいよ別に気にしなくても。早めに着いたから勝手に始めていただけなんだから」
「いやいや、そんな訳にいかないって。待っててくれ。荷物置いたらすぐに手伝うから俺の仕事残しておいてくれよ」
「うん。分った」
井上くんの言い方が何だかおかしくて、クスリと笑って返事をすると彼は急いで店の奥へと姿を消して行った。
塵取りではいたゴミをかき集めていた頃、井上君が水の入ったバケツを持ってやってきた。
「お待たせ」
「あ、お水汲んで来てくれたんだね? ありがとう」
「ああ」
言いながら井上君が水をまいたので、排水溝にほうきで水を掃流していていると不意に声をかけられた。
「あのさ……加藤さん」
「何?」
そのまま下を向いて掃除をしていると再び井上君が尋ねて来た。
「最近、太田先輩と仲いいよね」
「は?」
その言葉に顔を上げると、何故か真剣な目で私を見ている井上君がいた。
「ど、どうしたの? 急に?」
余りの突然の言葉に固まってしまった。
「だって最近よく一緒にお昼を食べに行ってるみたいだし……」
「え? まだ2回しか行ってないよ? それを言うなら井上君との方が沢山行ってるけど?」
箒と塵取りを片付ける為に店の倉庫に向かって歩き出すと、バケツを持った井上君も後からついて来た。
「加藤さんはさ、太田先輩の事どう思ってる?」
「太田先輩か……頼りがいのある良い先輩だよね。井上君もそう思わない?」
「そりゃ、俺だって思うよ。だって俺達と殆ど年齢違わないのに、錦糸町店の営業成績トップだもんな」
「うん。人当たりが良い先輩だものね。だから尊敬してるよ」
箒と塵取りを掃除用具入れにしまうと、今度は2人で店舗へ足を向ける。
昨夜片付けたパンフレットが入ったラックを井上君と外に並べる作業をしていると今度はクリスマスの日の事を尋ねてきた。
「加藤さん。クリスマス……デートだったんだろう? 楽しかったかい?」
「デート……」
不意に直人さんの事が思い出されて、胸がチクリと痛んだ。職場の人達はクリスマスに私がデートしたものとばかり思っている。でも井上君には本当の事話したほうがいいかな? 私の事大分心配してくれていたし。
「あ、あのね……私、彼とは別れたの。だからデートはしていないんだ」
「えっ!? そ、そうだったのか!? それで太田先輩が……!」
「太田先輩がどうかした?」
井上くんは何が言いたいのだろう。
「あ、いや。何でもない! それじゃ今、フリーなんだな?」
「うん。そうだけど」
でも、私当分恋愛は……。
「よし、分った!」
突然井上君が大声を出すと言った。
「加藤さん、来年同期仲間と新年会やろうぜ!」
「新年会かぁ……うん、楽しそうだね。やりたい」
「よっしゃ! 俺が皆に声をかけとくよ! やっぱり同期は同期同士で仲良くするべきだもんな!」
井上くんは妙に嬉しそうに開店準備を続けている。
一体井上君は突然どうしたのだろう……? 何だかちょっとだけ挙動不審に見える。
私は首を傾げながらパンフレットの補充準備を始めた――