本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第18章 1 仕事納め
あれから何日か過ぎ、今日は12月29日。仕事納めの日だった。今日は今年最後の営業日と言う事で、代理店が閉まるのは午後7時。なので全員揃って同じ退勤時間となった。
「ふう~やっと今年も無事終わった~」
全体挨拶も終わり、各々片づけをしていると隣の席に座る井上君が伸びをした。
「うん。終わったね」
帰り支度をしながら相槌を打つ。そこへ太田先輩がやって来た。
「加藤さん」
「あ、太田先輩。お疲れ様です」
椅子から立ち上がって挨拶をすると太田先輩がB6サイズのビニールファスナーケースを手渡して来た。
「はい、これ」
「え? 何ですか?」
不思議に思ってみると、中にUSBが入っている。
「え? 先輩。何ですかこれ?」
井上くんも不思議そうに覗き込んできた。
「俺の可愛いシロの動画が入っている」
「え? 本当ですか? ありがとうございます」
思わず笑みを浮かべると、ますます井上君が首を傾げる。
「え? シロ? シロって?」
「シロは俺の飼っている子猫だ」
「あのね、太田先輩が私によくシロちゃんの動画をメールで送ってくれていたの。それでもっと見てみたいって言ったら、まさか本当に持ってきてくれるなんて……本当にありがとうございます」
改めて頭を下げてお礼を述べた。
「いいって、いいって。ほら、会社も冬休みに入ることだし、じっくり見れるだろう? 約1時間の動画で編集してあるから」
「ええっ!? 1時間分の動画を編集してくれたのですか?」
驚きだ。まさかそこまで長編動画を作ってくれるなんて……。
「はは、驚いただろう?」
太田先輩が笑った、その時――
「驚いたのはこっちですよ! 何ですか!? いつの間に2人はメールを交換するような仲になったんですか!?」
井上くんは随分大袈裟な言い方をする。
「う~んクリスマスイブの日から……かな?」
「そ、そんな……! よりにもよってイブの日に……!」
「うるさいぞ、お前は一々反応が大げさなんだよ」
太田先輩は井上君を小突く真似をすると、肩に手を回した。
「よし、なら今夜はお前の相手をしてやろう。一杯飲んで帰るぞ。ほら早く支度して来いよ。外で待ってるからな?」
「ええ!? 俺、行くなんてまだ一言も……!」
しかし井上君の言葉も聞かず、太田先輩はさっさと外に出て行ってしまった。
「ああ~もう!」
井上くんは椅子に座ると、頭をグシャグシャかいた。
「先輩、行っちゃったよ? 早く後追いかけないと」
「あ、ああ……。あのさ。加藤さんも一緒に……」
井上くんが言いかけたけど、私は即答した。
「ごめんね。無理なんだ」
「えっ!?」
井上くんが私を見る。
「今夜から、実家に戻ることになってるの。だから一度マンションに戻ってから荷物を持って実家に行くから……ごめんね」
本当は年末年始は実家に行っても泊まるつもりは無かったけれども、お姉ちゃんと亮平から強く誘われ、断れなくなってしまった。そこで今日から1月1日まで実家で暮らす事になったのだ。
「そ、そうか……それじゃ仕方ないよな?」
「うん、ごめんね。それじゃ私行くね。良いお年を」
井上くんに挨拶すると、私は他の社員さんや上司に挨拶をするとロッカールームへ移動した――
****
「あれ? 太田先輩、まだここにいたんですか?」
自転車を押して通りに出ると、そこにはコートを羽織った太田先輩が立っていた。
「ああ、そうなんだ。全く井上の奴……」
「もしかすると、係長あたりに掴まってしまったかもしれませんね」
「ああ、そうか。それはあるかもな?」
そして太田先輩は私を見るとポンと頭に手を置いた。
「?」
先輩……?
「俺だったら……別れたりしないのにな」
「え?」
「じゃあな。加藤さん。良いお年を」
「あ、はい。良いお年を。失礼します」
頭を下げて自転車を押すと私は歩き始めた。少しだけ歩いて太田先輩を振り向くと、私の方を見つめ、手を振ってきた。
「先輩……」
一度だけ会釈すると、私は自転車にまたがりマンション目指して夜の町中を漕ぎだした――
「ふう~やっと今年も無事終わった~」
全体挨拶も終わり、各々片づけをしていると隣の席に座る井上君が伸びをした。
「うん。終わったね」
帰り支度をしながら相槌を打つ。そこへ太田先輩がやって来た。
「加藤さん」
「あ、太田先輩。お疲れ様です」
椅子から立ち上がって挨拶をすると太田先輩がB6サイズのビニールファスナーケースを手渡して来た。
「はい、これ」
「え? 何ですか?」
不思議に思ってみると、中にUSBが入っている。
「え? 先輩。何ですかこれ?」
井上くんも不思議そうに覗き込んできた。
「俺の可愛いシロの動画が入っている」
「え? 本当ですか? ありがとうございます」
思わず笑みを浮かべると、ますます井上君が首を傾げる。
「え? シロ? シロって?」
「シロは俺の飼っている子猫だ」
「あのね、太田先輩が私によくシロちゃんの動画をメールで送ってくれていたの。それでもっと見てみたいって言ったら、まさか本当に持ってきてくれるなんて……本当にありがとうございます」
改めて頭を下げてお礼を述べた。
「いいって、いいって。ほら、会社も冬休みに入ることだし、じっくり見れるだろう? 約1時間の動画で編集してあるから」
「ええっ!? 1時間分の動画を編集してくれたのですか?」
驚きだ。まさかそこまで長編動画を作ってくれるなんて……。
「はは、驚いただろう?」
太田先輩が笑った、その時――
「驚いたのはこっちですよ! 何ですか!? いつの間に2人はメールを交換するような仲になったんですか!?」
井上くんは随分大袈裟な言い方をする。
「う~んクリスマスイブの日から……かな?」
「そ、そんな……! よりにもよってイブの日に……!」
「うるさいぞ、お前は一々反応が大げさなんだよ」
太田先輩は井上君を小突く真似をすると、肩に手を回した。
「よし、なら今夜はお前の相手をしてやろう。一杯飲んで帰るぞ。ほら早く支度して来いよ。外で待ってるからな?」
「ええ!? 俺、行くなんてまだ一言も……!」
しかし井上君の言葉も聞かず、太田先輩はさっさと外に出て行ってしまった。
「ああ~もう!」
井上くんは椅子に座ると、頭をグシャグシャかいた。
「先輩、行っちゃったよ? 早く後追いかけないと」
「あ、ああ……。あのさ。加藤さんも一緒に……」
井上くんが言いかけたけど、私は即答した。
「ごめんね。無理なんだ」
「えっ!?」
井上くんが私を見る。
「今夜から、実家に戻ることになってるの。だから一度マンションに戻ってから荷物を持って実家に行くから……ごめんね」
本当は年末年始は実家に行っても泊まるつもりは無かったけれども、お姉ちゃんと亮平から強く誘われ、断れなくなってしまった。そこで今日から1月1日まで実家で暮らす事になったのだ。
「そ、そうか……それじゃ仕方ないよな?」
「うん、ごめんね。それじゃ私行くね。良いお年を」
井上くんに挨拶すると、私は他の社員さんや上司に挨拶をするとロッカールームへ移動した――
****
「あれ? 太田先輩、まだここにいたんですか?」
自転車を押して通りに出ると、そこにはコートを羽織った太田先輩が立っていた。
「ああ、そうなんだ。全く井上の奴……」
「もしかすると、係長あたりに掴まってしまったかもしれませんね」
「ああ、そうか。それはあるかもな?」
そして太田先輩は私を見るとポンと頭に手を置いた。
「?」
先輩……?
「俺だったら……別れたりしないのにな」
「え?」
「じゃあな。加藤さん。良いお年を」
「あ、はい。良いお年を。失礼します」
頭を下げて自転車を押すと私は歩き始めた。少しだけ歩いて太田先輩を振り向くと、私の方を見つめ、手を振ってきた。
「先輩……」
一度だけ会釈すると、私は自転車にまたがりマンション目指して夜の町中を漕ぎだした――