本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第18章 14 夢の狭間で
「い、井上君!」
『うわっ! な、何?』
「ごめんね、後で……後で必ず連絡入れるから、一度切るね!」
「何? 今ここで話せよ」
亮平がドンとグラスを置いた。
『あ、ちょ、ちょっと待って……』
プツッ!
井上君が何か言いかけたけど、私は電話を切ってしまった。
「はぁ~……」
深いため息をつくと亮平をジロリと見た。
「亮平……一体どういうつもりなのよ」
「どうって? それはこっちの話しだよ。だから言っただろう? 職場恋愛はやめておけって。今みたいにややこしい事なるんだからな」
亮平はウィスキーのダブルをグイッと飲む。流石に今の台詞は無いと思う。
「ちょっと待って。ややこしい? ややこしくしたのは亮平でしょう?」
「あのなぁお前、分らないのかよ。お前の同期の男。絶対鈴音に気があるぞ!?」
亮平は再びグラスを持ちあげ、口にした。
「え? 気がある? 井上君が私に? まさか。彼はただの同期だよ?」
「ただの同期だと? 本気でそんな事考えているなら、つくづく罪な奴だよ、お前は」
「ちょっと、いくら何でもそんな言い方酷いんじゃないの?」
最悪だ。折角さっきまでは楽しい気分だったのに……。私はテーブルの上に置かれた半分にカットされたグレープフルーツを絞り機で絞ると氷の浮かんだサワーベースのグラスに絞ったグレープフルーツを流し込み、マドラーでカラカラとかき混ぜた。
ゴクゴクゴクッ
それを一気に飲んだ。
「お、おい! 鈴音! そんな一気に飲んだら……!」
ドンッ
空になったグラスをテーブルの上に置く。目の前には呆れた顔で私を見ている亮平がいる。
「ふぅ~……」
一息ついた途端――
グラッ……
目の前の視界が歪み、思わず椅子に寄りかかった。
「ば、馬鹿っ! 一気に飲むからだろう? 大丈夫か?」
アルコールのせいだろうか……亮平の『馬鹿』と言う言葉に妙にカチンときてしまった。
「何よ……亮平……」
瞼が重くなった目で亮平を見た。
「お、おい。鈴音……お前、目が座ってるぞ?」
「いつもいつもすぐに私の事、馬鹿って言って……。お姉ちゃんの恋人のくせに、すぐ私の事に首突っ込んでくるし……」
ああ。何だかすごくむしゃくしゃする。
「鈴音? 大丈夫か?」
「直人さんと別れて……すごく落ち込んでいるのに……元気づけてくれているのかと思えば、すぐに文句言ってくるし……もっと優しくしてくれたっていいでしょう?」
お姉ちゃんには優しいくせに。今まで押し込んでいた気持ちを全て吐きだしたくなってきた。
「俺は十分優しくしているつもりだけど?」
亮平が困った顔でこっちを見ている。
「どこがよ……先輩の告白も何故か私を責めてくるし……井上君に余計な事話すし……」
「それは……お前の事が心配だから……!」
「心配だから? だけど亮平のやってる事は単にかき回してるだけなんだよ。私の為なんて言いながら、私に関わっている男の人達に敵意を向けてるし……これじゃ……私職場にいずらくなるでしょう?」
「べ、別に敵意を向けてるわけじゃないぞ?」
ああ……頭の中がグルグル回る。それに今目の前には2人の亮平が座って見える。
これって……ひょっとして私の見てる夢なのかな? 夢なら……いいよね?
「大体……私がこんな事になったのは……何もかもぜーんぶ亮平のせいだからね?」
「な、何で俺のせいなんだよ!」
「そうだよ……亮平のせい……なんだから……」
ちゃんと座ってられなくなって、椅子からずり落ちそうになる。
「お、おい! しっかりしろよ!」
向かい側の席に座っていた亮平が立ち上がって私の隣に座って来た。
「あーもう! この酔っ払いめ。もう帰ろう、立てるか?」
「う、うん……」
だけど腰が抜けたかのように、立つことが出来ない。
「鈴音……どうするんだよ。こんなに酔っぱらって。捨てていくぞ?」
亮平がため息をついている。
「はい、どうぞ……捨てて下さい」
「は?」
「こんな……酔っ払い女……どうぞ捨てて帰ってよ……グスッ……どうせ……どうせ私はいつも捨てられるんだから……」
何でだろう? 急に悲しくなってきた。思えば私が今まで付き合って来た男の人達……皆向こうから告白してきたのに、何故かいつも私は捨てられてきた。
「お、おい。落ち着け。今のはほんの冗談だから。俺がお前を捨てるはずないだろう?」
「嘘! お付き合いしてきた人達……みーんな私を捨てていったもの。どうせ……どうせ…‥亮平も……他の人達みたいに私を捨てていくんでしょう?」
ズルリ
支えきれなくなって椅子からずり落ちそうになった時、亮平が身体を支えてきたのを感じた。
ドクン
ドクン……
亮平の心臓の音が直人さんの心臓の音と重なって聞こえる。
「お願い……捨てないで……」
直人さん……。
気付けば閉じた目から涙が滲んでいた。
「安心しろ、俺は……お前を捨てたりしないから……。俺は……お前の事が……」
え……?
今の声は誰なのだろう? 最後、何て言ったの?
もう一度言ってよ……。
ぼやけていく意識のまま、私は眠りに落ちた――
『うわっ! な、何?』
「ごめんね、後で……後で必ず連絡入れるから、一度切るね!」
「何? 今ここで話せよ」
亮平がドンとグラスを置いた。
『あ、ちょ、ちょっと待って……』
プツッ!
井上君が何か言いかけたけど、私は電話を切ってしまった。
「はぁ~……」
深いため息をつくと亮平をジロリと見た。
「亮平……一体どういうつもりなのよ」
「どうって? それはこっちの話しだよ。だから言っただろう? 職場恋愛はやめておけって。今みたいにややこしい事なるんだからな」
亮平はウィスキーのダブルをグイッと飲む。流石に今の台詞は無いと思う。
「ちょっと待って。ややこしい? ややこしくしたのは亮平でしょう?」
「あのなぁお前、分らないのかよ。お前の同期の男。絶対鈴音に気があるぞ!?」
亮平は再びグラスを持ちあげ、口にした。
「え? 気がある? 井上君が私に? まさか。彼はただの同期だよ?」
「ただの同期だと? 本気でそんな事考えているなら、つくづく罪な奴だよ、お前は」
「ちょっと、いくら何でもそんな言い方酷いんじゃないの?」
最悪だ。折角さっきまでは楽しい気分だったのに……。私はテーブルの上に置かれた半分にカットされたグレープフルーツを絞り機で絞ると氷の浮かんだサワーベースのグラスに絞ったグレープフルーツを流し込み、マドラーでカラカラとかき混ぜた。
ゴクゴクゴクッ
それを一気に飲んだ。
「お、おい! 鈴音! そんな一気に飲んだら……!」
ドンッ
空になったグラスをテーブルの上に置く。目の前には呆れた顔で私を見ている亮平がいる。
「ふぅ~……」
一息ついた途端――
グラッ……
目の前の視界が歪み、思わず椅子に寄りかかった。
「ば、馬鹿っ! 一気に飲むからだろう? 大丈夫か?」
アルコールのせいだろうか……亮平の『馬鹿』と言う言葉に妙にカチンときてしまった。
「何よ……亮平……」
瞼が重くなった目で亮平を見た。
「お、おい。鈴音……お前、目が座ってるぞ?」
「いつもいつもすぐに私の事、馬鹿って言って……。お姉ちゃんの恋人のくせに、すぐ私の事に首突っ込んでくるし……」
ああ。何だかすごくむしゃくしゃする。
「鈴音? 大丈夫か?」
「直人さんと別れて……すごく落ち込んでいるのに……元気づけてくれているのかと思えば、すぐに文句言ってくるし……もっと優しくしてくれたっていいでしょう?」
お姉ちゃんには優しいくせに。今まで押し込んでいた気持ちを全て吐きだしたくなってきた。
「俺は十分優しくしているつもりだけど?」
亮平が困った顔でこっちを見ている。
「どこがよ……先輩の告白も何故か私を責めてくるし……井上君に余計な事話すし……」
「それは……お前の事が心配だから……!」
「心配だから? だけど亮平のやってる事は単にかき回してるだけなんだよ。私の為なんて言いながら、私に関わっている男の人達に敵意を向けてるし……これじゃ……私職場にいずらくなるでしょう?」
「べ、別に敵意を向けてるわけじゃないぞ?」
ああ……頭の中がグルグル回る。それに今目の前には2人の亮平が座って見える。
これって……ひょっとして私の見てる夢なのかな? 夢なら……いいよね?
「大体……私がこんな事になったのは……何もかもぜーんぶ亮平のせいだからね?」
「な、何で俺のせいなんだよ!」
「そうだよ……亮平のせい……なんだから……」
ちゃんと座ってられなくなって、椅子からずり落ちそうになる。
「お、おい! しっかりしろよ!」
向かい側の席に座っていた亮平が立ち上がって私の隣に座って来た。
「あーもう! この酔っ払いめ。もう帰ろう、立てるか?」
「う、うん……」
だけど腰が抜けたかのように、立つことが出来ない。
「鈴音……どうするんだよ。こんなに酔っぱらって。捨てていくぞ?」
亮平がため息をついている。
「はい、どうぞ……捨てて下さい」
「は?」
「こんな……酔っ払い女……どうぞ捨てて帰ってよ……グスッ……どうせ……どうせ私はいつも捨てられるんだから……」
何でだろう? 急に悲しくなってきた。思えば私が今まで付き合って来た男の人達……皆向こうから告白してきたのに、何故かいつも私は捨てられてきた。
「お、おい。落ち着け。今のはほんの冗談だから。俺がお前を捨てるはずないだろう?」
「嘘! お付き合いしてきた人達……みーんな私を捨てていったもの。どうせ……どうせ…‥亮平も……他の人達みたいに私を捨てていくんでしょう?」
ズルリ
支えきれなくなって椅子からずり落ちそうになった時、亮平が身体を支えてきたのを感じた。
ドクン
ドクン……
亮平の心臓の音が直人さんの心臓の音と重なって聞こえる。
「お願い……捨てないで……」
直人さん……。
気付けば閉じた目から涙が滲んでいた。
「安心しろ、俺は……お前を捨てたりしないから……。俺は……お前の事が……」
え……?
今の声は誰なのだろう? 最後、何て言ったの?
もう一度言ってよ……。
ぼやけていく意識のまま、私は眠りに落ちた――