本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第19章 6 亮平に諭されたこと
21時――
「鈴音ちゃん。またいつでも来てね。ここは貴女の家なんだから」
お姉ちゃんが詰めてくれたおせち料理の詰め合わせが入ったバックを手渡してきたので受け取った。
「うん、ありがとう」
「それじゃ、亮平君。鈴音ちゃんをよろしくね」
「ええ。大丈夫ですよ」
「……変な事しちゃ駄目よ?」
「な、何言ってるんですかっ!? そんな事するはずないでしょうっ!?」
「そうだよ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは一体何を言ってるのだろう? 亮平はお姉ちゃんの恋人なのに……あ、もしかして嫉妬して言ってるのかな? それなら非常にまずいことをしているかもしれない。
「私、やっぱり1人で帰るよ。考えてみれば亮平、ラムレーズンのアイス食べてるじゃない」
「まぁ。あのアイス亮平くんが食べちゃったの?」
お姉ちゃんが少しだけ非難めいた目で亮平を見た。
「あ、あれはついその……鈴音がいらないって言うので……」
は? 私はそんな事一言も言っていないけど? でも亮平の名誉の為にここは黙っていてあげよう。
「でも、あれくらいのアイスなら平気だ。アルコール分0.7%しかないからな」
「それで大丈夫なの?」
「何だよ、鈴音は知らないのか? アルコール分1%以上の飲み物を「酒類」と定めているんだぞ? だから平気なんだよ」
亮平は鼻高々に言う。そっか。なら問題ないのか。
「よし、なら行くか」
「うん」
助手席に乗り込み、窓を開けた。
「またね、鈴音ちゃん」
お姉ちゃんが助手席の方に回ってきた。
「うん。またね」
お姉ちゃんが後ろに下がると亮平がハンドルを握りしめた。
「行くぞ」
「うん」
窓を閉めてお姉ちゃんに手を振ると、お姉ちゃんも手を振ってきた。亮平はエンジンをかけるとアクセルを踏んだ――
車の中ではカーラジオが流れていた。
「珍しいね。クラシックが流れているなんて」
「ああ、ニューイヤーコンサートじゃないか?」
「あ、そうか……。新年だものね」
窓の外を流れる景色を眺めていると不意に亮平が声をかけてきた。
「なぁ……鈴音」
「何?」
「お前、まだ川口の事忘れられないのか?」
「え?」
突然直人さんの事を持ち出されて驚いて亮平を振り向いた。
「ど、どうしたの? 突然」
「別に、突然てわけじゃないが……どうなんだよ?」
「それはまだ忘れられないよ。だけど、もう諦めなくちゃいけない人だから……」
そう、どんなに思っても二度と私は直人さんとやり直すことも、連絡も叶わない。それに仮に会ったり、声を聞いてしまえば私は離れられなくなってしまうかもしれないから。
「そうか……」
「うん……」
「あのさ」
「何?」
「もし、まだ川口の事忘れられないなら……誰とも交際しないほうがいいぞ」
「え?」
「お前、職場の先輩に告白されてるんだろう?」
「え? そ、そうだけど……」
「なら悪いことは言わない。まだ忘れられない男がいるなら……断ったほうがいい」
「亮平……どうして……?」
どうしてそういう事言うの? いくら待っても直人さんはもう二度と付き合うことも出来ないのに?
そう尋ねようと思ったけど、ハンドルを握って前を見る亮平の顔が、何だか思いつめたような、真剣な顔で前を向いているから聞けなかった。
「だけどさ……その人を忘れる為に新しい恋愛をする人もいるんじゃないかな……?」
「そうかも知れないが、そんなの相手の男に不誠実みたいで悪いと思わないか?」
そこまで言われてしまえば、私はもう何も言えなかった。
そこから少しの間、2人の間に沈黙が下りた。
車の中ではエルガーの『威風堂々』の曲が流れていた――
「鈴音ちゃん。またいつでも来てね。ここは貴女の家なんだから」
お姉ちゃんが詰めてくれたおせち料理の詰め合わせが入ったバックを手渡してきたので受け取った。
「うん、ありがとう」
「それじゃ、亮平君。鈴音ちゃんをよろしくね」
「ええ。大丈夫ですよ」
「……変な事しちゃ駄目よ?」
「な、何言ってるんですかっ!? そんな事するはずないでしょうっ!?」
「そうだよ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんは一体何を言ってるのだろう? 亮平はお姉ちゃんの恋人なのに……あ、もしかして嫉妬して言ってるのかな? それなら非常にまずいことをしているかもしれない。
「私、やっぱり1人で帰るよ。考えてみれば亮平、ラムレーズンのアイス食べてるじゃない」
「まぁ。あのアイス亮平くんが食べちゃったの?」
お姉ちゃんが少しだけ非難めいた目で亮平を見た。
「あ、あれはついその……鈴音がいらないって言うので……」
は? 私はそんな事一言も言っていないけど? でも亮平の名誉の為にここは黙っていてあげよう。
「でも、あれくらいのアイスなら平気だ。アルコール分0.7%しかないからな」
「それで大丈夫なの?」
「何だよ、鈴音は知らないのか? アルコール分1%以上の飲み物を「酒類」と定めているんだぞ? だから平気なんだよ」
亮平は鼻高々に言う。そっか。なら問題ないのか。
「よし、なら行くか」
「うん」
助手席に乗り込み、窓を開けた。
「またね、鈴音ちゃん」
お姉ちゃんが助手席の方に回ってきた。
「うん。またね」
お姉ちゃんが後ろに下がると亮平がハンドルを握りしめた。
「行くぞ」
「うん」
窓を閉めてお姉ちゃんに手を振ると、お姉ちゃんも手を振ってきた。亮平はエンジンをかけるとアクセルを踏んだ――
車の中ではカーラジオが流れていた。
「珍しいね。クラシックが流れているなんて」
「ああ、ニューイヤーコンサートじゃないか?」
「あ、そうか……。新年だものね」
窓の外を流れる景色を眺めていると不意に亮平が声をかけてきた。
「なぁ……鈴音」
「何?」
「お前、まだ川口の事忘れられないのか?」
「え?」
突然直人さんの事を持ち出されて驚いて亮平を振り向いた。
「ど、どうしたの? 突然」
「別に、突然てわけじゃないが……どうなんだよ?」
「それはまだ忘れられないよ。だけど、もう諦めなくちゃいけない人だから……」
そう、どんなに思っても二度と私は直人さんとやり直すことも、連絡も叶わない。それに仮に会ったり、声を聞いてしまえば私は離れられなくなってしまうかもしれないから。
「そうか……」
「うん……」
「あのさ」
「何?」
「もし、まだ川口の事忘れられないなら……誰とも交際しないほうがいいぞ」
「え?」
「お前、職場の先輩に告白されてるんだろう?」
「え? そ、そうだけど……」
「なら悪いことは言わない。まだ忘れられない男がいるなら……断ったほうがいい」
「亮平……どうして……?」
どうしてそういう事言うの? いくら待っても直人さんはもう二度と付き合うことも出来ないのに?
そう尋ねようと思ったけど、ハンドルを握って前を見る亮平の顔が、何だか思いつめたような、真剣な顔で前を向いているから聞けなかった。
「だけどさ……その人を忘れる為に新しい恋愛をする人もいるんじゃないかな……?」
「そうかも知れないが、そんなの相手の男に不誠実みたいで悪いと思わないか?」
そこまで言われてしまえば、私はもう何も言えなかった。
そこから少しの間、2人の間に沈黙が下りた。
車の中ではエルガーの『威風堂々』の曲が流れていた――