本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第19章 8 正月三が日の過ごし方
翌日――
「ありがとうございましたー」
美容院の店員さんに見送られ、店を出た。ふとショーウィンドウに映る自分の姿を立ち止まって見つめる。今の私の髪は肩につく位の長さに切りそろえられていた。
「うん。これ位の長さが丁度いいかな?」
髪を切ったことで心も軽くなった気がした。腕に掛けて持っているトートバッグからスマホを取り出して時間を確認すると時刻は12時を過ぎていた。
「何処かでお昼でも食べて帰ろうかな」
店の繁華街に向かって歩いていると職場の前を通りかかった。今日は休みなのでお店のシャッターは下りている。
「明日から仕事か……頑張らなくちゃ」
そのままお店の前を通過すると、『ブーランジェリー』のパン屋の前を通りかかった。店内は盛況でお客さんは10人以上は入っているように見えた。
「そうだ、今日はここでお昼を買って部屋で食べようかな」
そこで店内へ入り、バゲットサンドと朝食用に食パンを一斤買って8枚切りにカットしてもらった。ついでにレジ前で売っていたいちごジャムを買うとお店を出た。
「何か飲み物あったかな……?」
丁度目の前にはスーパーがある。そこで私はインスタントスープに牛乳、ヨーグルトと野菜ジュースを買ってお店を出た。
「お……重い……こんな事なら自転車で来れば良かったかな……」
牛乳も野菜ジュースも1Lパックだし、ヨーグルトは無糖の450gパック。ちょっと買いすぎてしまった。何とか駅前まで歩いてくると、不意に背後から声をかけられた。
「鈴音!」
「えっ!?」
驚いて振り返ると、何と目の前には亮平が立っていた。
「りょ、亮平! な、何でここにいるのっ!?」
「何でって、お前が連絡よこさないからだろ?」
「え? 連絡?」
「そうだよ、俺言っただろう? 明日暇なら連絡してきてもいいぞって。どこか遊びに連れて行ってやるつもりだったのに、お前ちっとも連絡よこさないから来てやったんだよ。そしたら丁度運良くお前が重そうにレジ袋持って歩いているのを見つけたんだよ。ほら、荷物貸せよ、持ってやるから」
亮平は私が何か言う前にサッとレジ袋を奪うと私の前を歩き出す。
「鈴音、髪切ったんだな」
「え?」
「うん、いいんじゃないか? 似合ってると思うぞ?」
私は思わず立ち止まってしまった。
「何だよ、その呆けた顔は」
「あ。ううん」
慌てて亮平の後を追う。
「何だか意外だと思って」
「何が意外なんだよ?」
「亮平はあまりそういう事気に掛けないタイプだと思ったけど」
「あのな、昨日会ったばかりなのに気付かないはずないだろう? お前俺が鈍い男だと思ってるのか?」
「う〜ん……別にそういう意味で言ったんじゃないけどな……」
「まぁ、いいや。それより急ぐぞ」
「何で?」
「レジ袋が重みで破けそうなんだよ、ほら急げ」
「え〜?」
亮平が速歩きするから小走りで後を追いかけた――
****
「ごちそーさま。あ〜うまかったな、ここのパン」
「うん、そうだね」
結局亮平は部屋に上がりこんで、私が買ってきたバゲットサンドを半分食べてしまった。それどころか食パンにいちごジャムまで塗って。
「はい、どうぞ」
亮平の目の前にさっき買ってきた無糖ヨーグルトにいちごジャムを掛けたグラスに入ったデザートを置いた。
「お? 気が利くじゃないか」
「もともとこのジャムを買ったのは無糖のヨーグルトに掛けて食べるつもりだったからね」
亮平の向かい側に座り、その後2人でヨーグルトを食べた後は特にする事も無く、亮平はスマホのアプリゲーム、そして私はパソコンで洋画のドラマを観て夕方まで過ごした。
17時――
「う〜ん……よし、そろそろ帰るか」
亮平は伸びをすると床に置きっぱなしにしていた上着を手に取り、玄関へ歩いていく。
「そう? 帰るんだね?」
玄関まで見送る為、私も立った。そしてスニーカーを履いている亮平に声をかけた。
「ねぇ、結局何しに来たわけ?」
「お前なぁ……折角俺が来てやったのにそんな言い方するのかよ?」
亮平は背中で答える。
「だって、何で私のところに来たのか分からないんだもの」
ピタッ
亮平の動きが止まり、振り向きもせずに口を開いた。
「ほんとに分からないのかよ……」
「え?」
そんな事言われたって分かるはずない。
「だって亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう? そして私はただの幼馴染。普通は恋人と過ごすものでしょう? お姉ちゃんの手前もあるし、もうやめなよ」
折角お姉ちゃんと関係が修復され、2人は結婚を決めたくせに。
すると亮平が振り向く。
「忍は知ってるよ。俺がここに来てること」
「え? そうなの?」
そっか…きっとお姉ちゃんに様子を見てくるように言われたのかな?
「ああ、そうだよ。鈴音は元気だったって伝えとくよ」
「うん、よろしくね」
「ああ、じゃあな」
そして亮平は扉を開けて帰って行った――
「ありがとうございましたー」
美容院の店員さんに見送られ、店を出た。ふとショーウィンドウに映る自分の姿を立ち止まって見つめる。今の私の髪は肩につく位の長さに切りそろえられていた。
「うん。これ位の長さが丁度いいかな?」
髪を切ったことで心も軽くなった気がした。腕に掛けて持っているトートバッグからスマホを取り出して時間を確認すると時刻は12時を過ぎていた。
「何処かでお昼でも食べて帰ろうかな」
店の繁華街に向かって歩いていると職場の前を通りかかった。今日は休みなのでお店のシャッターは下りている。
「明日から仕事か……頑張らなくちゃ」
そのままお店の前を通過すると、『ブーランジェリー』のパン屋の前を通りかかった。店内は盛況でお客さんは10人以上は入っているように見えた。
「そうだ、今日はここでお昼を買って部屋で食べようかな」
そこで店内へ入り、バゲットサンドと朝食用に食パンを一斤買って8枚切りにカットしてもらった。ついでにレジ前で売っていたいちごジャムを買うとお店を出た。
「何か飲み物あったかな……?」
丁度目の前にはスーパーがある。そこで私はインスタントスープに牛乳、ヨーグルトと野菜ジュースを買ってお店を出た。
「お……重い……こんな事なら自転車で来れば良かったかな……」
牛乳も野菜ジュースも1Lパックだし、ヨーグルトは無糖の450gパック。ちょっと買いすぎてしまった。何とか駅前まで歩いてくると、不意に背後から声をかけられた。
「鈴音!」
「えっ!?」
驚いて振り返ると、何と目の前には亮平が立っていた。
「りょ、亮平! な、何でここにいるのっ!?」
「何でって、お前が連絡よこさないからだろ?」
「え? 連絡?」
「そうだよ、俺言っただろう? 明日暇なら連絡してきてもいいぞって。どこか遊びに連れて行ってやるつもりだったのに、お前ちっとも連絡よこさないから来てやったんだよ。そしたら丁度運良くお前が重そうにレジ袋持って歩いているのを見つけたんだよ。ほら、荷物貸せよ、持ってやるから」
亮平は私が何か言う前にサッとレジ袋を奪うと私の前を歩き出す。
「鈴音、髪切ったんだな」
「え?」
「うん、いいんじゃないか? 似合ってると思うぞ?」
私は思わず立ち止まってしまった。
「何だよ、その呆けた顔は」
「あ。ううん」
慌てて亮平の後を追う。
「何だか意外だと思って」
「何が意外なんだよ?」
「亮平はあまりそういう事気に掛けないタイプだと思ったけど」
「あのな、昨日会ったばかりなのに気付かないはずないだろう? お前俺が鈍い男だと思ってるのか?」
「う〜ん……別にそういう意味で言ったんじゃないけどな……」
「まぁ、いいや。それより急ぐぞ」
「何で?」
「レジ袋が重みで破けそうなんだよ、ほら急げ」
「え〜?」
亮平が速歩きするから小走りで後を追いかけた――
****
「ごちそーさま。あ〜うまかったな、ここのパン」
「うん、そうだね」
結局亮平は部屋に上がりこんで、私が買ってきたバゲットサンドを半分食べてしまった。それどころか食パンにいちごジャムまで塗って。
「はい、どうぞ」
亮平の目の前にさっき買ってきた無糖ヨーグルトにいちごジャムを掛けたグラスに入ったデザートを置いた。
「お? 気が利くじゃないか」
「もともとこのジャムを買ったのは無糖のヨーグルトに掛けて食べるつもりだったからね」
亮平の向かい側に座り、その後2人でヨーグルトを食べた後は特にする事も無く、亮平はスマホのアプリゲーム、そして私はパソコンで洋画のドラマを観て夕方まで過ごした。
17時――
「う〜ん……よし、そろそろ帰るか」
亮平は伸びをすると床に置きっぱなしにしていた上着を手に取り、玄関へ歩いていく。
「そう? 帰るんだね?」
玄関まで見送る為、私も立った。そしてスニーカーを履いている亮平に声をかけた。
「ねぇ、結局何しに来たわけ?」
「お前なぁ……折角俺が来てやったのにそんな言い方するのかよ?」
亮平は背中で答える。
「だって、何で私のところに来たのか分からないんだもの」
ピタッ
亮平の動きが止まり、振り向きもせずに口を開いた。
「ほんとに分からないのかよ……」
「え?」
そんな事言われたって分かるはずない。
「だって亮平はお姉ちゃんの恋人でしょう? そして私はただの幼馴染。普通は恋人と過ごすものでしょう? お姉ちゃんの手前もあるし、もうやめなよ」
折角お姉ちゃんと関係が修復され、2人は結婚を決めたくせに。
すると亮平が振り向く。
「忍は知ってるよ。俺がここに来てること」
「え? そうなの?」
そっか…きっとお姉ちゃんに様子を見てくるように言われたのかな?
「ああ、そうだよ。鈴音は元気だったって伝えとくよ」
「うん、よろしくね」
「ああ、じゃあな」
そして亮平は扉を開けて帰って行った――