本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第20章 1 お別れ会はまた後日
1月末――
あれから少しの時が流れ、係長の話で太田先輩がバリ支店へ旅立ったことを聞かされた。その話を朝礼で聞かされた時、井上くんが意味深な目で私を見ていた。
「あーあ……太田君バリ島に行ってしまったのね……」
「いいなぁ……よし、今度バリ島に行って太田に会いに行ってやるか」
会社の先輩たちの交わす会話を、私は複雑な思いで聞いていた――
18時――
退勤時間になったので支店の人達に小声で挨拶を済ませた後、着がえをする為にロッカールームへ行こうとした時に社員通用口に井上君が立っていた。
「あれ、どうしたの? こんなところで」
「あ……いや、ほら。太田先輩バリ島へ旅立ってしまっただろう? だから2人でお別れ会しないかなーと思って……」
井上君が頭を掻きながら話しかけて来た。でも……。
「う~ん……ごめんね。今夜は無理なんだ」
「え……ええっ!? な、なんでっ!?」
随分悲観的な声をあげる井上君。
「何でって言われても……明日明後日は仕事がお休みだから実家へ帰ることになってるの」
「あ……そ、そうか……うん。言われてみればそうだったよな……」
「うん、ごめんね。折角誘ってくれたのに。またの機会にしてくれる?」
「あー。い、いや! 全っ然っ! 気にしてないからね? ほんとほんと! そ、それじゃ俺先に帰るよ。お疲れ様っ!」
そして井上君はバタバタと走り去ってしまった。
「一体どうしたんだろう……?」
何故あんなに慌てていたのだろうか?
「ま、別にいっか……」
そして私はロッカールームへと向かった――
****
ガタンゴトン
ガタンゴトン……
一度帰宅した後、外泊用の荷物を持って電車に揺られながらスマホをチェックしていると、亮平からメールの着信が入っていた。
『鈴音。今夜は直帰だったから今駅に着いたところなんだ。お前も今日は早番だろう? 一緒に飯食って帰ろうぜ。駅の改札で待ってる』
そっか亮平は駅にもう着いているのか。だけど、お姉ちゃんに悪いな。食事だって用意してくれているのに。そこまで考えた時、再びスマホにメールの着信が入ってきた。
『鈴音ちゃん、今夜は亮平君と食べてから帰るんでしょう? あまり遅くならないようにね』
え……? そっか……お姉ちゃんには既に連絡入れてあったのか。なら、別にいいかな。
そして私はスマホをバッグにしまった――
19時05分――
駅の改札を潜り抜けると、既に到着していた亮平が改札の付近でスマホをチェックしていた。
「亮平、お待たせ」
近くまで行って声をかけると亮平が私を見た。
「おう、来たか。よし、それじゃ飯食いに行くか」
亮平はスマホをコートの中に突っ込む。
「うん、それは構わないけど……でも何所に食べに行くの?」
「別に駅前のファミレスでいいだろう? 何だってあるんだし」
「そうだね。それでいっか」
特に食べたい店の希望も無かった。そこで私は亮平の後をついてファミレスへ向かった。
「お? 今夜は平日だから空いてるな」
自動ドアが開いて店の中に足を踏み入れると店内のお客さんはまばらで、来店客はほんの数人だった。
「これなら空いているから注文頼んでもすぐに料理を運んでくれそうだな。鈴音、どこに座る?」
亮平が振り返って尋ねて来た。
「う~ん、そうだな。やっぱり窓際の席がいいかな?」
「窓際だな、よし。あそこに座るか」
亮平が指示した場所は窓際のお店の入り口の丁度真ん中あたりのボックス席だった。
「うん、いいよ」
そして私と亮平はボックス席に座ると、すぐに亮平は、メニュー表を広げた。私も亮平に習ってメニュー表を広げて見ていると、店員さんがお水を持ってきてくれた。
「いらっしゃいませ」
その声に何となく聞覚えがあったので顔を上げると、そこに立っていたのは何度か会った事のある、あの彼だった――
あれから少しの時が流れ、係長の話で太田先輩がバリ支店へ旅立ったことを聞かされた。その話を朝礼で聞かされた時、井上くんが意味深な目で私を見ていた。
「あーあ……太田君バリ島に行ってしまったのね……」
「いいなぁ……よし、今度バリ島に行って太田に会いに行ってやるか」
会社の先輩たちの交わす会話を、私は複雑な思いで聞いていた――
18時――
退勤時間になったので支店の人達に小声で挨拶を済ませた後、着がえをする為にロッカールームへ行こうとした時に社員通用口に井上君が立っていた。
「あれ、どうしたの? こんなところで」
「あ……いや、ほら。太田先輩バリ島へ旅立ってしまっただろう? だから2人でお別れ会しないかなーと思って……」
井上君が頭を掻きながら話しかけて来た。でも……。
「う~ん……ごめんね。今夜は無理なんだ」
「え……ええっ!? な、なんでっ!?」
随分悲観的な声をあげる井上君。
「何でって言われても……明日明後日は仕事がお休みだから実家へ帰ることになってるの」
「あ……そ、そうか……うん。言われてみればそうだったよな……」
「うん、ごめんね。折角誘ってくれたのに。またの機会にしてくれる?」
「あー。い、いや! 全っ然っ! 気にしてないからね? ほんとほんと! そ、それじゃ俺先に帰るよ。お疲れ様っ!」
そして井上君はバタバタと走り去ってしまった。
「一体どうしたんだろう……?」
何故あんなに慌てていたのだろうか?
「ま、別にいっか……」
そして私はロッカールームへと向かった――
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ガタンゴトン
ガタンゴトン……
一度帰宅した後、外泊用の荷物を持って電車に揺られながらスマホをチェックしていると、亮平からメールの着信が入っていた。
『鈴音。今夜は直帰だったから今駅に着いたところなんだ。お前も今日は早番だろう? 一緒に飯食って帰ろうぜ。駅の改札で待ってる』
そっか亮平は駅にもう着いているのか。だけど、お姉ちゃんに悪いな。食事だって用意してくれているのに。そこまで考えた時、再びスマホにメールの着信が入ってきた。
『鈴音ちゃん、今夜は亮平君と食べてから帰るんでしょう? あまり遅くならないようにね』
え……? そっか……お姉ちゃんには既に連絡入れてあったのか。なら、別にいいかな。
そして私はスマホをバッグにしまった――
19時05分――
駅の改札を潜り抜けると、既に到着していた亮平が改札の付近でスマホをチェックしていた。
「亮平、お待たせ」
近くまで行って声をかけると亮平が私を見た。
「おう、来たか。よし、それじゃ飯食いに行くか」
亮平はスマホをコートの中に突っ込む。
「うん、それは構わないけど……でも何所に食べに行くの?」
「別に駅前のファミレスでいいだろう? 何だってあるんだし」
「そうだね。それでいっか」
特に食べたい店の希望も無かった。そこで私は亮平の後をついてファミレスへ向かった。
「お? 今夜は平日だから空いてるな」
自動ドアが開いて店の中に足を踏み入れると店内のお客さんはまばらで、来店客はほんの数人だった。
「これなら空いているから注文頼んでもすぐに料理を運んでくれそうだな。鈴音、どこに座る?」
亮平が振り返って尋ねて来た。
「う~ん、そうだな。やっぱり窓際の席がいいかな?」
「窓際だな、よし。あそこに座るか」
亮平が指示した場所は窓際のお店の入り口の丁度真ん中あたりのボックス席だった。
「うん、いいよ」
そして私と亮平はボックス席に座ると、すぐに亮平は、メニュー表を広げた。私も亮平に習ってメニュー表を広げて見ていると、店員さんがお水を持ってきてくれた。
「いらっしゃいませ」
その声に何となく聞覚えがあったので顔を上げると、そこに立っていたのは何度か会った事のある、あの彼だった――