本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第3章 10 私の罰
真夜中の0時―
真っ暗でしんと静まり返った部屋の中で時計の針がカチコチと規則正しくなっている。亮平とお姉ちゃんの姿が頭にちらついて、少しも眠ることが出来ずにいた。車内でお姉ちゃんにキスしていた亮平。眠っているお姉ちゃんをお姫様抱っこして玄関から家の中へ入る亮平。
古代ローマの風習では、新郎新婦が新居に入る時に、花嫁さんが花婿さんに部屋の入り口から室内まで抱きかかえられたまま運ばれ、それが今も外国で行われている事がある。私は亮平がお姉ちゃんを抱きかかえて玄関から中へ入った時に、一瞬2人が新郎新婦に見えてしまった。
「お姉ちゃん…まだソファで眠ったままなのか…?」
だけど今はとてもじゃないけど私の心の余裕が無くなっている。だって今も心がこんなにもズキズキと痛んでいるんだもの。2人が…まさかこんなに早くつき合う事になるなんて思いもしていなかった。亮平以外の誰かを好きになれていれば良かったのに…。
情けない事に私は子供の頃からずっと亮平が好きだった。他の誰かなんて考えられなかった。亮平は知らなかったかもしれないけれど中学生の時も、高校生の時も…そして学生の時も私は何人かの男の子たちに告白されたことがあった。高校と学生時代…お試しでほんの少しだけ交際してみたことがあったけど、やっぱり私は亮平の事しか頭になくて…自分から別れを告げていた。だけど過去に一度だけ相手から別れを告げられたことがあった。それは学生時代に数カ月間お付き合いした男性…。とても良い人だったけど、でもそれだけの感情しか持てなかった。彼は繊細な人で…私にこう言った。
『君の心の中には常に俺以外の誰かがいる。俺はその男の代用品にはなれない。君が俺を通して別の誰かを見ているのは知っている。それがもう耐えられないから別れよう』
そう言われたんだっけ…。2年も前の話なのに、なぜかその人の一語一句がいまだに鮮明に思い出される。私はそうやって今までお付き合いしてきた男の人達を傷つけてきてしまったんだ。だから罰を受けているのかもしれない。一番好きな人からは決して自分の望むものを手に入れることが出来ないという罰を…。
目から一筋の涙がこぼれ落ちてゆく。この先もずっと私は亮平とお姉ちゃんの事で胸を痛め、涙にぬれる日々を何度も何度も繰り返していくのかもしれない。
神様、どうかお願い。
もっと私に強い心を下さい。
そして私はいつしか眠りについていた—。
翌朝―
ベットから起き上がって階下に降りてみるとソファの中はもぬけの殻で、代わりに台所で包丁の音が聞こえてくる。
「お姉ちゃん?」
台所へ行ってみると、そこにはエプロンをして菜っ葉を包丁で切っているお姉ちゃんんの姿があった。台所へ入って行くと、お姉ちゃんが振り向いた。
「あ、おはよう。鈴音ちゃん。昨夜はごめんね。帰り、亮平君の車の中でうっかり眠ってしまって。気づいたらソファの上だったから驚いちゃったわ」
やっぱり昨夜の事、お姉ちゃんは何も知らないんだ。
「あのね、亮平がお姉ちゃんをお姫様抱っこしてソファ迄運んでくれたんだよ?そして私が毛布を掛けてあげたの」
するとお姉ちゃんは頬を赤らめると言った。
「え…?そ、そうだったの?やだ…私ったら恥ずかしい…。あとでメールで亮平君に謝っておかないと。鈴音ちゃんもごめんね、迷惑かけて」
「迷惑なんて全然掛かってないよ。それより今朝も朝ご飯用意してくれてありがとう、お姉ちゃん」
「何言ってるの、私が仕事に出れるようになるまでは全ての家事をするから鈴音ちゃんは家の事、何もしなくていいからね?」
お姉ちゃんはいつの間にか大分明るく笑えるようになっていた――
真っ暗でしんと静まり返った部屋の中で時計の針がカチコチと規則正しくなっている。亮平とお姉ちゃんの姿が頭にちらついて、少しも眠ることが出来ずにいた。車内でお姉ちゃんにキスしていた亮平。眠っているお姉ちゃんをお姫様抱っこして玄関から家の中へ入る亮平。
古代ローマの風習では、新郎新婦が新居に入る時に、花嫁さんが花婿さんに部屋の入り口から室内まで抱きかかえられたまま運ばれ、それが今も外国で行われている事がある。私は亮平がお姉ちゃんを抱きかかえて玄関から中へ入った時に、一瞬2人が新郎新婦に見えてしまった。
「お姉ちゃん…まだソファで眠ったままなのか…?」
だけど今はとてもじゃないけど私の心の余裕が無くなっている。だって今も心がこんなにもズキズキと痛んでいるんだもの。2人が…まさかこんなに早くつき合う事になるなんて思いもしていなかった。亮平以外の誰かを好きになれていれば良かったのに…。
情けない事に私は子供の頃からずっと亮平が好きだった。他の誰かなんて考えられなかった。亮平は知らなかったかもしれないけれど中学生の時も、高校生の時も…そして学生の時も私は何人かの男の子たちに告白されたことがあった。高校と学生時代…お試しでほんの少しだけ交際してみたことがあったけど、やっぱり私は亮平の事しか頭になくて…自分から別れを告げていた。だけど過去に一度だけ相手から別れを告げられたことがあった。それは学生時代に数カ月間お付き合いした男性…。とても良い人だったけど、でもそれだけの感情しか持てなかった。彼は繊細な人で…私にこう言った。
『君の心の中には常に俺以外の誰かがいる。俺はその男の代用品にはなれない。君が俺を通して別の誰かを見ているのは知っている。それがもう耐えられないから別れよう』
そう言われたんだっけ…。2年も前の話なのに、なぜかその人の一語一句がいまだに鮮明に思い出される。私はそうやって今までお付き合いしてきた男の人達を傷つけてきてしまったんだ。だから罰を受けているのかもしれない。一番好きな人からは決して自分の望むものを手に入れることが出来ないという罰を…。
目から一筋の涙がこぼれ落ちてゆく。この先もずっと私は亮平とお姉ちゃんの事で胸を痛め、涙にぬれる日々を何度も何度も繰り返していくのかもしれない。
神様、どうかお願い。
もっと私に強い心を下さい。
そして私はいつしか眠りについていた—。
翌朝―
ベットから起き上がって階下に降りてみるとソファの中はもぬけの殻で、代わりに台所で包丁の音が聞こえてくる。
「お姉ちゃん?」
台所へ行ってみると、そこにはエプロンをして菜っ葉を包丁で切っているお姉ちゃんんの姿があった。台所へ入って行くと、お姉ちゃんが振り向いた。
「あ、おはよう。鈴音ちゃん。昨夜はごめんね。帰り、亮平君の車の中でうっかり眠ってしまって。気づいたらソファの上だったから驚いちゃったわ」
やっぱり昨夜の事、お姉ちゃんは何も知らないんだ。
「あのね、亮平がお姉ちゃんをお姫様抱っこしてソファ迄運んでくれたんだよ?そして私が毛布を掛けてあげたの」
するとお姉ちゃんは頬を赤らめると言った。
「え…?そ、そうだったの?やだ…私ったら恥ずかしい…。あとでメールで亮平君に謝っておかないと。鈴音ちゃんもごめんね、迷惑かけて」
「迷惑なんて全然掛かってないよ。それより今朝も朝ご飯用意してくれてありがとう、お姉ちゃん」
「何言ってるの、私が仕事に出れるようになるまでは全ての家事をするから鈴音ちゃんは家の事、何もしなくていいからね?」
お姉ちゃんはいつの間にか大分明るく笑えるようになっていた――