本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第3章 14 彼の記憶力
「鈴音、何でも好きなものを飲んでもいいし、食べていいんだぞ?」
隆司さんは落ち着いたトーンの声で私にメニューを渡して来た。
「はい…ありがとうございます」
しかしメニューの金額を見て私は仰天してしまった。カクテル1杯でも1000円以上するものばかり。食事に至っては一番安くても2000円を超えるのだから。
私は慌ててメニューを閉じた。
「どうした?鈴音」
隆司さんは怪訝そうな顔で私を見た。
「た、隆司さん…。で、出ましょう、この店っ!」
私は思わず隆司さんの袖を掴んでいた。
「え?何を突然言い出すんだ?」
「だ、だって高すぎですよっ!こんな高級なお店でなんか飲めませんってば!私みたいな人間は居酒屋で十分なんですから!」
すると隆司さんは真面目な顔で言う。
「鈴音…私みたいな人間って自分を卑下するような言い方をするな。それにどうして自分には合わない店だと思うんだ?」
「こういうお店は落ち着いた雰囲気の…素敵な女性が入ってこそ似合うお店なんですよ。大体…今の私のこの服装では…」
私は自分の来ている服を見て、ため息をついた。春物のニットのグレーのダブついた大き目のセーターに紺色のパンツスタイル、そしてヒールの無いペタンコのローファーというカジュアルスタイル。こんなハイスペックなお店ではTPOに反してしまうのではないだろうか…。
しかし、隆司さんは言った。
「どうしてだい?その服装…とても素敵だよ。」
そして再び私の髪をそっとなでてくる。…おかしい。
隆司さんは私よりは2歳年上の先輩だったけど、こんなんじゃなかった。こ、こんな…大人の色気の漂うような男性では無かったはずなのに…!
「あ、あの…隆司さん。先程から…そ、その…距離が近いですっ!」
隆司さんから離れると私は立ち上がった。
「と、とにかくこの店を出ましょう。もっと…大衆居酒屋的なお店にしましょうよ」
すると隆司さんは私の右手首を掴むと言った。
「鈴音はこの店は嫌なのか?入った時はすごく喜んでいたじゃないか?」
「嫌なはずないじゃないですか。ただ…あまりにも高級で御馳走してもらうのは悪いですから」
「鈴音は水族館が好きだったろう?」
突然の隆司の言葉に私は言葉を失った。
「交際して…初めてのデートの場所はどこがいいか鈴音に聞いた時、鈴音は水族館に行きたいって言っただろう?だからこの店に連れてきたかったんだ」
「隆司さん…そんな2年前の事なのに覚えているんですか?」
「何言ってるんだ?2年しか経っていないだろう?だが、俺にとっては長い2年だった…」
隆司さんの私の手首を握る手に力が籠められ、私を見つめる瞳には熱がこもっているように感じられた。
まさか…隆司さんはひょっとしてまだ私の事を…?
「アハハ…まさか…ね」
私は首を振った。
「どうした?鈴音」
「いえ、何でもありません。でも…そういう事でしたら、こちらのお店で今夜はご馳走になります。どうも有難うございます」
「そうか?なら良かった」
隆司さんはと途端に笑顔になると、次から次へとアルコールやら料理をし始めたけど…不思議とそのどれもが私の好きなカクテルや料理ばかりだった。そして一通り注文を終えると、少しの間私と隆司さんの間に沈黙が降り…しばらくの間2人で美しいアクアリウムを見つめていた。
「失礼致します」
ふいに店員の男性が現れて、私たちのテーブルの前にカクテルを置いた。
私にはカルーアミルク。そして隆司さんはギムレットだ。
「鈴音はこのカクテルが好きだっただろう?」
隆司さんは自分のグラスを取ると言った。
「はい、そうです。…覚えていてくれたんですね」
「そうだよ。俺は一度も鈴音の事を忘れたことは無かった…」
隆司さんは私を見つめながら意味深なセリフを口にした――
隆司さんは落ち着いたトーンの声で私にメニューを渡して来た。
「はい…ありがとうございます」
しかしメニューの金額を見て私は仰天してしまった。カクテル1杯でも1000円以上するものばかり。食事に至っては一番安くても2000円を超えるのだから。
私は慌ててメニューを閉じた。
「どうした?鈴音」
隆司さんは怪訝そうな顔で私を見た。
「た、隆司さん…。で、出ましょう、この店っ!」
私は思わず隆司さんの袖を掴んでいた。
「え?何を突然言い出すんだ?」
「だ、だって高すぎですよっ!こんな高級なお店でなんか飲めませんってば!私みたいな人間は居酒屋で十分なんですから!」
すると隆司さんは真面目な顔で言う。
「鈴音…私みたいな人間って自分を卑下するような言い方をするな。それにどうして自分には合わない店だと思うんだ?」
「こういうお店は落ち着いた雰囲気の…素敵な女性が入ってこそ似合うお店なんですよ。大体…今の私のこの服装では…」
私は自分の来ている服を見て、ため息をついた。春物のニットのグレーのダブついた大き目のセーターに紺色のパンツスタイル、そしてヒールの無いペタンコのローファーというカジュアルスタイル。こんなハイスペックなお店ではTPOに反してしまうのではないだろうか…。
しかし、隆司さんは言った。
「どうしてだい?その服装…とても素敵だよ。」
そして再び私の髪をそっとなでてくる。…おかしい。
隆司さんは私よりは2歳年上の先輩だったけど、こんなんじゃなかった。こ、こんな…大人の色気の漂うような男性では無かったはずなのに…!
「あ、あの…隆司さん。先程から…そ、その…距離が近いですっ!」
隆司さんから離れると私は立ち上がった。
「と、とにかくこの店を出ましょう。もっと…大衆居酒屋的なお店にしましょうよ」
すると隆司さんは私の右手首を掴むと言った。
「鈴音はこの店は嫌なのか?入った時はすごく喜んでいたじゃないか?」
「嫌なはずないじゃないですか。ただ…あまりにも高級で御馳走してもらうのは悪いですから」
「鈴音は水族館が好きだったろう?」
突然の隆司の言葉に私は言葉を失った。
「交際して…初めてのデートの場所はどこがいいか鈴音に聞いた時、鈴音は水族館に行きたいって言っただろう?だからこの店に連れてきたかったんだ」
「隆司さん…そんな2年前の事なのに覚えているんですか?」
「何言ってるんだ?2年しか経っていないだろう?だが、俺にとっては長い2年だった…」
隆司さんの私の手首を握る手に力が籠められ、私を見つめる瞳には熱がこもっているように感じられた。
まさか…隆司さんはひょっとしてまだ私の事を…?
「アハハ…まさか…ね」
私は首を振った。
「どうした?鈴音」
「いえ、何でもありません。でも…そういう事でしたら、こちらのお店で今夜はご馳走になります。どうも有難うございます」
「そうか?なら良かった」
隆司さんはと途端に笑顔になると、次から次へとアルコールやら料理をし始めたけど…不思議とそのどれもが私の好きなカクテルや料理ばかりだった。そして一通り注文を終えると、少しの間私と隆司さんの間に沈黙が降り…しばらくの間2人で美しいアクアリウムを見つめていた。
「失礼致します」
ふいに店員の男性が現れて、私たちのテーブルの前にカクテルを置いた。
私にはカルーアミルク。そして隆司さんはギムレットだ。
「鈴音はこのカクテルが好きだっただろう?」
隆司さんは自分のグラスを取ると言った。
「はい、そうです。…覚えていてくれたんですね」
「そうだよ。俺は一度も鈴音の事を忘れたことは無かった…」
隆司さんは私を見つめながら意味深なセリフを口にした――