本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第4章 2 姉の変化
私は階段の上から思いがけない光景を目にしてしまった。お姉ちゃんは私に背を向ける形で立っていて、亮平は私の方を向いて目を閉じている。
お姉ちゃん…亮平…!
見てはいけないものを見てしまった私は2人にばれないようにそっと後ろ向きで2階へ戻ろうとしたとき、運悪く亮平が目を開け、私と視線が合ってしまった。
「!」
その瞬間、亮平の目に驚愕の色が宿り、お姉ちゃんをバッと引き離した。私は慌てて2階の廊下に戻ると、階下でお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「亮平君…どうかしたの?」
「あ…い、いや。何でもない。忍さん、それじゃお言葉に甘えて今夜は御馳走になるよ」
「ええ、遠慮しないで沢山食べてね」
2人の楽しそうな会話が聞こえて来る。そして私は気が付いた。亮平はいつの間にかお姉ちゃんに対して敬語を使う事が無くなっていたことに…。でも、考えてみればそれは当然の事なんだ。だって2人は恋人同士なんだから。きっとあの調子なら(仮)恋人関係じゃなくなったんだろうな…。
その時…。
「鈴音ちゃ~ん、ご飯よ~。降りてきてちょうだ~い」
階下からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「はーい、今行くね」
私は平静を装って、これからお姉ちゃんと亮平の前に姿を見せなくてはいけない…。
「よし、頑張ろう」
私は小さく呟くと階段を下りて行った。
ダイニングルームへ行くと、すでにそこには椅子に座っている亮平がいた。
「あ…」
亮平は私を見てバツが悪そうな顔をする。何でそんな顔するの?むしろ私がその顔をするべきなのに…。
「あ、いらっしゃい。亮平、もう来てたんだね」
亮平は一瞬キョトンとした顔で私を見た。まるで、え?お前何言ってるの?って言いたげな表情を見せたけど、すぐに私の話に合わせてきた。
「あ、ああ。つい今さっきな」
するとそこへキッチンにいたお姉ちゃんから声がかかった。
「鈴音ちゃん。料理を運ぶの手伝ってくれる?」
「うん、いいよ」
私は立ち上がってお姉ちゃんの傍に行くと、ハンバーグが乗ったお皿を手渡されて、そっと耳打ちされた。
「鈴音ちゃん…あんまり亮平君とは親しくしないでね」
「!」
私は驚いてお姉ちゃんの顔を見上げた。するとお姉ちゃんはニッコリ笑うと小声で言った。
「私…もうこれ以上大切な人を失いたくないの。鈴音ちゃんならお姉ちゃんの気持ち、分ってくれるわよね?」
「お、お姉ちゃん…」
「はい、それじゃお料理運ぶの手伝ってね」
相変わらず笑顔で言うお姉ちゃん。
「う、うん…。わ、分った」
私はそれだけ言うのが必死だった。何て事だろう。私は一緒に暮らしていてお姉ちゃんの事を今の今まで何一つ分かっていなかったんだ。もう進さんの死から大分立ち直ってくれていたと思っていたけど、実際はそうじゃなかったんだ。私の知っているお姉ちゃんはこんな人じゃなかった。気付かないうちにお姉ちゃんの心は表面上は変わりなかったのに、徐々に心が病んでいったんだ―。
食事をしながらお姉ちゃんの様子を伺う。お姉ちゃんは楽しそうに笑いながら亮平とおしゃべりをしているけど…。お姉ちゃんはもう私の知っているお姉ちゃんじゃない。どうしよう、医者に連れて行くべきなの?でもこうしてみる限り、お姉ちゃんは何所もおかしくないように見える。きっと亮平だってお姉ちゃんの変化に気付いていない。だから相談する事が出来ない…ううん、それ以前にもうお姉ちゃんは私が亮平と話をする事すら許さないのかもしれない。だって…その証拠に今お姉ちゃんは私が目の前に座っているにも関わらず、一度もこちらを見る事も、話しかける事すらしてくれない。
ひょっとすると、凶気に囚われたお姉ちゃんは…亮平に近づく私を快く思っていなかったのかもしれない。なら、私が出来る事はただ一つ。この2人の前では存在を消したように静かにしている事なんだ。
私は暗い気持ちでお姉ちゃんの作ったハンバーグを口に運んだ―。
お姉ちゃん…亮平…!
見てはいけないものを見てしまった私は2人にばれないようにそっと後ろ向きで2階へ戻ろうとしたとき、運悪く亮平が目を開け、私と視線が合ってしまった。
「!」
その瞬間、亮平の目に驚愕の色が宿り、お姉ちゃんをバッと引き離した。私は慌てて2階の廊下に戻ると、階下でお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「亮平君…どうかしたの?」
「あ…い、いや。何でもない。忍さん、それじゃお言葉に甘えて今夜は御馳走になるよ」
「ええ、遠慮しないで沢山食べてね」
2人の楽しそうな会話が聞こえて来る。そして私は気が付いた。亮平はいつの間にかお姉ちゃんに対して敬語を使う事が無くなっていたことに…。でも、考えてみればそれは当然の事なんだ。だって2人は恋人同士なんだから。きっとあの調子なら(仮)恋人関係じゃなくなったんだろうな…。
その時…。
「鈴音ちゃ~ん、ご飯よ~。降りてきてちょうだ~い」
階下からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「はーい、今行くね」
私は平静を装って、これからお姉ちゃんと亮平の前に姿を見せなくてはいけない…。
「よし、頑張ろう」
私は小さく呟くと階段を下りて行った。
ダイニングルームへ行くと、すでにそこには椅子に座っている亮平がいた。
「あ…」
亮平は私を見てバツが悪そうな顔をする。何でそんな顔するの?むしろ私がその顔をするべきなのに…。
「あ、いらっしゃい。亮平、もう来てたんだね」
亮平は一瞬キョトンとした顔で私を見た。まるで、え?お前何言ってるの?って言いたげな表情を見せたけど、すぐに私の話に合わせてきた。
「あ、ああ。つい今さっきな」
するとそこへキッチンにいたお姉ちゃんから声がかかった。
「鈴音ちゃん。料理を運ぶの手伝ってくれる?」
「うん、いいよ」
私は立ち上がってお姉ちゃんの傍に行くと、ハンバーグが乗ったお皿を手渡されて、そっと耳打ちされた。
「鈴音ちゃん…あんまり亮平君とは親しくしないでね」
「!」
私は驚いてお姉ちゃんの顔を見上げた。するとお姉ちゃんはニッコリ笑うと小声で言った。
「私…もうこれ以上大切な人を失いたくないの。鈴音ちゃんならお姉ちゃんの気持ち、分ってくれるわよね?」
「お、お姉ちゃん…」
「はい、それじゃお料理運ぶの手伝ってね」
相変わらず笑顔で言うお姉ちゃん。
「う、うん…。わ、分った」
私はそれだけ言うのが必死だった。何て事だろう。私は一緒に暮らしていてお姉ちゃんの事を今の今まで何一つ分かっていなかったんだ。もう進さんの死から大分立ち直ってくれていたと思っていたけど、実際はそうじゃなかったんだ。私の知っているお姉ちゃんはこんな人じゃなかった。気付かないうちにお姉ちゃんの心は表面上は変わりなかったのに、徐々に心が病んでいったんだ―。
食事をしながらお姉ちゃんの様子を伺う。お姉ちゃんは楽しそうに笑いながら亮平とおしゃべりをしているけど…。お姉ちゃんはもう私の知っているお姉ちゃんじゃない。どうしよう、医者に連れて行くべきなの?でもこうしてみる限り、お姉ちゃんは何所もおかしくないように見える。きっと亮平だってお姉ちゃんの変化に気付いていない。だから相談する事が出来ない…ううん、それ以前にもうお姉ちゃんは私が亮平と話をする事すら許さないのかもしれない。だって…その証拠に今お姉ちゃんは私が目の前に座っているにも関わらず、一度もこちらを見る事も、話しかける事すらしてくれない。
ひょっとすると、凶気に囚われたお姉ちゃんは…亮平に近づく私を快く思っていなかったのかもしれない。なら、私が出来る事はただ一つ。この2人の前では存在を消したように静かにしている事なんだ。
私は暗い気持ちでお姉ちゃんの作ったハンバーグを口に運んだ―。