本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第4章 6 別れの日
朝7時―
目が覚めた私は部屋にあるドレッサーで鏡を覗いてみた。すると瞼は腫れ、目は赤く充血していた。
「やだ・・・酷い顔…」
昨夜は結局泣きながら眠ってしまった。だから頭はぼーっとするし、頭痛はするしで最悪の目覚めだった。それにしても・・・今朝は妙に静かな朝だと思った。
いつもならお姉ちゃんが朝ごはんを作っている時間なのに…。着替えを済ませ、階下に降りてみると驚いた。もうすでにお姉ちゃんは起きていてテレビを観ていた。
「あら、おはよう。鈴音ちゃん」
お姉ちゃんは私を見ると笑顔で挨拶してきた。
「お、おはよう。お姉ちゃん」
ぎこちなく私は挨拶を返した。でも良かった・・・お姉ちゃんが笑ってくれている。昨夜の出来事が嘘みたいだ。やっぱりあれは一過性の物だったのかな…。
でも次の瞬間、私はお姉ちゃんの言葉に凍り付いた。
「鈴音ちゃん。今日から貴女はこの家を出るまではただの同居人として見る事にしたから、食事の支度も洗濯も自分でやってね。お風呂は仕方ないから使わせてあげるわ」
そしてニッコリとほほ笑む。
「う…うん、分ったよ。お姉ちゃん…」
私は無理矢理笑うと、すぐに出かける準備を始めた。駄目だ、こんな生活環境はもう私には耐えられない…。何処かに朝ごはんを食べに行って、すぐに今日から入居できるウィークリーマンションを探さなくちゃ・・・。
そして私はお財布と携帯をミニリュックに詰め込むとお姉ちゃんに言った。
「お姉ちゃん・・・ちょっと出かけて来るね」
「・・・」
だけどお姉ちゃんは聞こえているのかいないのか・・・全く返事をしてくれない。まさか…もう私の声も聞こえないふりをしてしまうの?再び目頭が熱くなってくるのをこらえて、私は逃げるように家を飛び出した―。
***
駅前のオープンカフェでコーヒーを前に私はぼんやり町を行き交人々を眺めていた。もう何も考えたくない・・・。だけど家には戻りにくい。私は一体これからどうすればいいの…?
その時、私は偶然スーツ姿の亮平が駅に向かって歩いて行く姿を見かけた。
亮平―!
亮平にお姉ちゃんの事を相談したい。だけど・・・私は亮平に近づかないようにお姉ちゃんに言われているし、亮平だって私に連絡をくれない。ひょっとするともう2人で話し合いをして、私の存在は無視しようと言う事に決めてしまったのかもしれない…。そんなことをウジウジ考え、再び目頭が熱なってくる。でも・・・こんな人目のつくカフェで泣くなんて事私には出来ない。とにかくお姉ちゃんにこれ以上嫌われる前に私はあの家を出なくてはいけない。亮平には内緒で…。早速スマホで周辺の不動産を検索するとすぐ側にあることが分かった。
「よし、早速行ってみよう」
私は立ち上がるとカフェを後にした―。
****
「家具家電付きで即入居可のマンスリーマンションですか…」
私は不動産会社を訪れ、早速相談に乗ってもらっていた。
「はい。出来れば錦糸町を希望しているのですが…」
私が勤めている代理店は墨田区の錦糸町駅なので、どうせなら錦糸町に住みたい。
「錦糸町はなかなか人気が高い場所ですからね・・・。あ、ご安心下さい。1件見つかりました。マンスリーマンションで家具家電付き・・・駅から徒歩10分ですね。どうされますか?」
担当してくれる男性社員は顔をあげて私を見た。
「もちろんです!今からすぐに行きたいですっ!」
私が一番目を惹かれたのは賃貸契約時に『保証人不要』と書かれていた事だ。お姉ちゃんは私に早く引っ越ししてもらいたいだろうけど、多分保証人にはなってくれないだろうと思っていたから保証人不要というのは願ったり叶ったりだった。
そして私はその場で不動産屋さんに車で物件迄案内してもらい、即決する事にした。
****
午後1時―
「ただいま・・・・」
引っ越しに関わる全ての手続きを終えた私は疲れ切った身体で帰宅してきた。
するとちょうどお姉ちゃんはダイニングでお昼にサンドイッチを食べているところだった。
「あら、お帰りなさい。鈴音ちゃん。それでいつ引っ越しすることになったのかしら?」
お姉ちゃんはコーヒーを飲みながら尋ねてきた。
「うん。もう・・・今から引っ越し先に行くよ。これからとりあえず新居に持っていける分だけ持って行くから」
「あら、そうなの。ありがとう。鈴音ちゃん。すぐに言う事聞いてくれたのね」
お姉ちゃんは心底嬉しそうに笑顔で私を見た。その笑顔は私の心を傷つけるのに十分だった。
「う・・・うん。それじゃ部屋で準備してくる…から…」
それだけ告げると二階へ上がり、荷造りの準備を始めた。
1時間後―。
「お姉ちゃん。それじゃ・・・私もう行くね・・・」
リビングでテレビを見ているお姉ちゃんに声を掛けた。
「ええ、さよなら」
お姉ちゃんは私を見ようともせず、さよならを言う。涙がこぼれそうになるのをこらえながら言った。
「お姉ちゃん・・・それで私の新しい住所なんだけどね・・・」
言いかけるとお姉ちゃんはくるりとこちらを振り向き、私に言った。
「別に新しい住所聞く必要は無いわ。だって必要ないもの。それで次はいつ荷物を取りに来てくれるの?」
「来週になるんだけど…それまで置いておいてもらえる?どうしても引っ越し業者さんが最短で来週になっちゃったから」
「来週か・・・でも仕方ないわね。それじゃ早く出て行ってね?」
そして二度とお姉ちゃんはこちらを振り向きもしない。
「うん…行くね・・・。さよなら、お姉ちゃん・・・」
そして私はトランクケースを持ち、この日、20年間暮らしてきた我が家と大好きなお姉ちゃんに別れを告げた――
目が覚めた私は部屋にあるドレッサーで鏡を覗いてみた。すると瞼は腫れ、目は赤く充血していた。
「やだ・・・酷い顔…」
昨夜は結局泣きながら眠ってしまった。だから頭はぼーっとするし、頭痛はするしで最悪の目覚めだった。それにしても・・・今朝は妙に静かな朝だと思った。
いつもならお姉ちゃんが朝ごはんを作っている時間なのに…。着替えを済ませ、階下に降りてみると驚いた。もうすでにお姉ちゃんは起きていてテレビを観ていた。
「あら、おはよう。鈴音ちゃん」
お姉ちゃんは私を見ると笑顔で挨拶してきた。
「お、おはよう。お姉ちゃん」
ぎこちなく私は挨拶を返した。でも良かった・・・お姉ちゃんが笑ってくれている。昨夜の出来事が嘘みたいだ。やっぱりあれは一過性の物だったのかな…。
でも次の瞬間、私はお姉ちゃんの言葉に凍り付いた。
「鈴音ちゃん。今日から貴女はこの家を出るまではただの同居人として見る事にしたから、食事の支度も洗濯も自分でやってね。お風呂は仕方ないから使わせてあげるわ」
そしてニッコリとほほ笑む。
「う…うん、分ったよ。お姉ちゃん…」
私は無理矢理笑うと、すぐに出かける準備を始めた。駄目だ、こんな生活環境はもう私には耐えられない…。何処かに朝ごはんを食べに行って、すぐに今日から入居できるウィークリーマンションを探さなくちゃ・・・。
そして私はお財布と携帯をミニリュックに詰め込むとお姉ちゃんに言った。
「お姉ちゃん・・・ちょっと出かけて来るね」
「・・・」
だけどお姉ちゃんは聞こえているのかいないのか・・・全く返事をしてくれない。まさか…もう私の声も聞こえないふりをしてしまうの?再び目頭が熱くなってくるのをこらえて、私は逃げるように家を飛び出した―。
***
駅前のオープンカフェでコーヒーを前に私はぼんやり町を行き交人々を眺めていた。もう何も考えたくない・・・。だけど家には戻りにくい。私は一体これからどうすればいいの…?
その時、私は偶然スーツ姿の亮平が駅に向かって歩いて行く姿を見かけた。
亮平―!
亮平にお姉ちゃんの事を相談したい。だけど・・・私は亮平に近づかないようにお姉ちゃんに言われているし、亮平だって私に連絡をくれない。ひょっとするともう2人で話し合いをして、私の存在は無視しようと言う事に決めてしまったのかもしれない…。そんなことをウジウジ考え、再び目頭が熱なってくる。でも・・・こんな人目のつくカフェで泣くなんて事私には出来ない。とにかくお姉ちゃんにこれ以上嫌われる前に私はあの家を出なくてはいけない。亮平には内緒で…。早速スマホで周辺の不動産を検索するとすぐ側にあることが分かった。
「よし、早速行ってみよう」
私は立ち上がるとカフェを後にした―。
****
「家具家電付きで即入居可のマンスリーマンションですか…」
私は不動産会社を訪れ、早速相談に乗ってもらっていた。
「はい。出来れば錦糸町を希望しているのですが…」
私が勤めている代理店は墨田区の錦糸町駅なので、どうせなら錦糸町に住みたい。
「錦糸町はなかなか人気が高い場所ですからね・・・。あ、ご安心下さい。1件見つかりました。マンスリーマンションで家具家電付き・・・駅から徒歩10分ですね。どうされますか?」
担当してくれる男性社員は顔をあげて私を見た。
「もちろんです!今からすぐに行きたいですっ!」
私が一番目を惹かれたのは賃貸契約時に『保証人不要』と書かれていた事だ。お姉ちゃんは私に早く引っ越ししてもらいたいだろうけど、多分保証人にはなってくれないだろうと思っていたから保証人不要というのは願ったり叶ったりだった。
そして私はその場で不動産屋さんに車で物件迄案内してもらい、即決する事にした。
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午後1時―
「ただいま・・・・」
引っ越しに関わる全ての手続きを終えた私は疲れ切った身体で帰宅してきた。
するとちょうどお姉ちゃんはダイニングでお昼にサンドイッチを食べているところだった。
「あら、お帰りなさい。鈴音ちゃん。それでいつ引っ越しすることになったのかしら?」
お姉ちゃんはコーヒーを飲みながら尋ねてきた。
「うん。もう・・・今から引っ越し先に行くよ。これからとりあえず新居に持っていける分だけ持って行くから」
「あら、そうなの。ありがとう。鈴音ちゃん。すぐに言う事聞いてくれたのね」
お姉ちゃんは心底嬉しそうに笑顔で私を見た。その笑顔は私の心を傷つけるのに十分だった。
「う・・・うん。それじゃ部屋で準備してくる…から…」
それだけ告げると二階へ上がり、荷造りの準備を始めた。
1時間後―。
「お姉ちゃん。それじゃ・・・私もう行くね・・・」
リビングでテレビを見ているお姉ちゃんに声を掛けた。
「ええ、さよなら」
お姉ちゃんは私を見ようともせず、さよならを言う。涙がこぼれそうになるのをこらえながら言った。
「お姉ちゃん・・・それで私の新しい住所なんだけどね・・・」
言いかけるとお姉ちゃんはくるりとこちらを振り向き、私に言った。
「別に新しい住所聞く必要は無いわ。だって必要ないもの。それで次はいつ荷物を取りに来てくれるの?」
「来週になるんだけど…それまで置いておいてもらえる?どうしても引っ越し業者さんが最短で来週になっちゃったから」
「来週か・・・でも仕方ないわね。それじゃ早く出て行ってね?」
そして二度とお姉ちゃんはこちらを振り向きもしない。
「うん…行くね・・・。さよなら、お姉ちゃん・・・」
そして私はトランクケースを持ち、この日、20年間暮らしてきた我が家と大好きなお姉ちゃんに別れを告げた――