本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第4章 11 2人で宅飲み
私は夕日でオレンジ色に染まる町の中を無言で井上君の左手を掴んで速足で歩いていた。そして井上君は黙ってついてきてくれる。やがて繁華街を抜けた一角の住宅街で足を止めた。
「ここが加藤さんの借りているマンションなの?」
井上君が建物を見上げながら尋ねてきた。
「うん、そうだよ。最もここは仮住まいだけどね。家具家電、食器付きのマンスリーマンションだよ。それじゃ行こうか?」
井上君を振り返りながら私は言う。
「う、うん…」
カツンカツンとマンションの階段をのぼりながら私は言う。
「このマンションの3Fが私が借りてる部屋なの。南向きで角部屋だったから、ラッキーだったよ」
「うん…」
何故か井上君の元気がない。でも…仕方ないよね?あんな修羅場?的な目に遭わせちゃったんだから。やがて3Fに辿り着き、私は部屋の鍵を開けると扉を開けた。
「どうぞ、中へ入って。ほとんど物がない部屋だから、広いよ」
先に靴を脱いで部屋に上がって電気をつけると、私は背後にたたずんでいる井上君に声を掛けた。
「それじゃ、お邪魔します…」
井上君は遠慮がちに靴を脱いで上がってきた。
「それじゃそこの座布団にでも座ってて。お酒とかおつまみの準備するから」
「手伝うよ。」
井上君が背後に立ったけれど、私は言った。
「あーいいのいいの、ほら。このキッチン?狭いから。それに井上君はお客様なんだからさあ」
「だけど…」
なおも言い淀む井上君の背中を押して、無理やり座布団の上に座らせるとテレビをつけた。
「ほら、適当にテレビでも観て待っててよ」
「あ、ああ…」
井上君がおとなしく座ってテレビを観るのを見届けると、早速準備にかかった。買ってきた揚げ物をオーブントースターであっためて、サラダを別の食器に移し替える。プチトマトを洗って、サラダに添えて、ちょっと乾き物としてスナックや珍味をお皿に開けている内にオーブントースターがチーンとなった。
「はい、お待たせ~」
大きなトレーに缶チューハイや、揚げ物、サラダ、乾き物をのっけて井上君の元へ運び、次々と料理を並べていく。
「うわあ~!すっげー。ご馳走だ!旨そうだなっ!」
井上君は大喜びだけど…。
「ねえ…これ、全部スーパーのお惣菜だけど…?」
「いいって、いいって。それじゃ、乾杯しようぜ」
井上君が生ビールのプルタブを開けながら言う。
「う、うん。そうだね。乾杯…しようか?」
私も生ビールのプルタブを開けた。
「「かんぱーい」」
そして2人で乾杯し、ささやかな飲み会が始まった。
その後は2人で1時間程、仕事の話や同期の話で盛り上がり、料理もお酒も半分程無くなった頃…。
「なあ…加藤さん」
思いつめた顔で井上君が声を掛けてきた。
「何?」
「嫌なら…無理に聞き出したりはしないけど、どうして急に…しかもマンスリーマンションに引っ越してきたんだ?」
「井上君…」
私は飲み終わった缶チューハイをテーブルの上に置いた。
「こんな…家具家電付きのマンスリーマンションに引っ越したって事は、今回の引っ越しがあまりにも急に決まったって事だろう?それに加藤さんの家は錦糸町からだってそれほど遠くは無かったじゃないか。しかもあんなに大きな家だったのに…」
「そ、それは…」
井上君の言う事は最もだ。誰だって家を出る必要は無いと思うに決まっている。
「あいつか?さっきスーパーの前で会った…あの亮平とかいう、加藤さんのお幼馴染のせいで一人暮らしする事になったのか?!」
「え…?」
私が家を出たのはお姉ちゃんに追い出されたからなんだけど…それには亮平が絡んでいる…。
思わず俯くと、井上君が再び声を掛けてきた。
「加藤さん…?」
どうしよう…。井上君になら同期の職場の仲間として話を聞いてもらう…?
私は顔をあげて井上君を見た。
「聞いてくれる…?私の話…」
井上君は大きく頷いた――
「ここが加藤さんの借りているマンションなの?」
井上君が建物を見上げながら尋ねてきた。
「うん、そうだよ。最もここは仮住まいだけどね。家具家電、食器付きのマンスリーマンションだよ。それじゃ行こうか?」
井上君を振り返りながら私は言う。
「う、うん…」
カツンカツンとマンションの階段をのぼりながら私は言う。
「このマンションの3Fが私が借りてる部屋なの。南向きで角部屋だったから、ラッキーだったよ」
「うん…」
何故か井上君の元気がない。でも…仕方ないよね?あんな修羅場?的な目に遭わせちゃったんだから。やがて3Fに辿り着き、私は部屋の鍵を開けると扉を開けた。
「どうぞ、中へ入って。ほとんど物がない部屋だから、広いよ」
先に靴を脱いで部屋に上がって電気をつけると、私は背後にたたずんでいる井上君に声を掛けた。
「それじゃ、お邪魔します…」
井上君は遠慮がちに靴を脱いで上がってきた。
「それじゃそこの座布団にでも座ってて。お酒とかおつまみの準備するから」
「手伝うよ。」
井上君が背後に立ったけれど、私は言った。
「あーいいのいいの、ほら。このキッチン?狭いから。それに井上君はお客様なんだからさあ」
「だけど…」
なおも言い淀む井上君の背中を押して、無理やり座布団の上に座らせるとテレビをつけた。
「ほら、適当にテレビでも観て待っててよ」
「あ、ああ…」
井上君がおとなしく座ってテレビを観るのを見届けると、早速準備にかかった。買ってきた揚げ物をオーブントースターであっためて、サラダを別の食器に移し替える。プチトマトを洗って、サラダに添えて、ちょっと乾き物としてスナックや珍味をお皿に開けている内にオーブントースターがチーンとなった。
「はい、お待たせ~」
大きなトレーに缶チューハイや、揚げ物、サラダ、乾き物をのっけて井上君の元へ運び、次々と料理を並べていく。
「うわあ~!すっげー。ご馳走だ!旨そうだなっ!」
井上君は大喜びだけど…。
「ねえ…これ、全部スーパーのお惣菜だけど…?」
「いいって、いいって。それじゃ、乾杯しようぜ」
井上君が生ビールのプルタブを開けながら言う。
「う、うん。そうだね。乾杯…しようか?」
私も生ビールのプルタブを開けた。
「「かんぱーい」」
そして2人で乾杯し、ささやかな飲み会が始まった。
その後は2人で1時間程、仕事の話や同期の話で盛り上がり、料理もお酒も半分程無くなった頃…。
「なあ…加藤さん」
思いつめた顔で井上君が声を掛けてきた。
「何?」
「嫌なら…無理に聞き出したりはしないけど、どうして急に…しかもマンスリーマンションに引っ越してきたんだ?」
「井上君…」
私は飲み終わった缶チューハイをテーブルの上に置いた。
「こんな…家具家電付きのマンスリーマンションに引っ越したって事は、今回の引っ越しがあまりにも急に決まったって事だろう?それに加藤さんの家は錦糸町からだってそれほど遠くは無かったじゃないか。しかもあんなに大きな家だったのに…」
「そ、それは…」
井上君の言う事は最もだ。誰だって家を出る必要は無いと思うに決まっている。
「あいつか?さっきスーパーの前で会った…あの亮平とかいう、加藤さんのお幼馴染のせいで一人暮らしする事になったのか?!」
「え…?」
私が家を出たのはお姉ちゃんに追い出されたからなんだけど…それには亮平が絡んでいる…。
思わず俯くと、井上君が再び声を掛けてきた。
「加藤さん…?」
どうしよう…。井上君になら同期の職場の仲間として話を聞いてもらう…?
私は顔をあげて井上君を見た。
「聞いてくれる…?私の話…」
井上君は大きく頷いた――