本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

第4章 13 明け方の目覚め

「う~…寒いっ!」

寒さで目を開けた時、何故か私は電気がついた明るい部屋で床の上に転がっていた。

「…?」

一瞬何がどうなっているのか分からず、目をパチクリさせて起き上がるとテーブルの上には空になった缶チューハイの缶と食べ残した料理がそのままになっている。

「あれ…?一体何が…?」

いくら思い出そうとしても、井上君とお酒を飲んでいた途中からの記憶がすっぽり抜け落ちている。

「井上君が帰った後、片付けもしないで寝ちゃったのかな?」

時計を見ると5時半をさしている。立ち上がって部屋の電気を消すと、カーテンの隙間から外が見えた。夜明けが近いのか、外は薄明るくなっている。

「とりあえず片付けしてシャワー浴びなくちゃ」

テーブルの上の空き缶を拾い集め、資源ゴミ用のごみ袋に入れ、私は食べ残した料理と食器の後片付けを始めた。



「フ~さっぱりした…」

シャワーを浴びて部屋に戻ると、室内には太陽の光がさしこみ、すっかり明るくなっていた。

「6時半か…。洗濯でもしようかな」

そして私は次に洗濯機に向かった。

 
 洗濯を回しながら2人掛けの小さなダイニングテーブルの椅子に座り、コーヒーにピザトーストを食べながらリビングのテレビをつけた。

「ふ~ん…かに座の今日の運勢は12位中5位か…」

朝の情報番組の占いコーナーをぼんやり眺めながら食事を終える頃、丁度洗濯機が止まる音が聞こえた。


「…」

洗濯を干す段階で気付いた。

「ベランダに洗濯物干したら、女の一人暮らしって事バレバレだよね…」

そこで私は室内に干す事にした。ありがたいことに、このマンスリーマンションは浴室乾燥機が付いている。浴室のランドリーパイプに洗濯物を干して時計を見た。

「9時か。今日は遅番で10時出勤だからまだぜんぜん余裕があるな…。しかも職場まで歩いて10分だし。うん、余裕余裕」

元気よく言うものの、やっぱり心は晴れない。昨日亮平に会って言われたことがまだ引きずっている。

≪ 結局お前は男と暮らしたくて忍さんを捨てて家を出たんだろうっ?!やっぱり…お前ってそういう女だったんだな? ≫

脳裏に蘇ってくる亮平の心無い言葉。

「亮平…私の事、男の為なら平気でお姉ちゃんを捨てられる人間…って思ってたの…?酷いよ…」

あ、駄目だ。考えたらまた目頭が熱くなってくる。

「もう亮平とお姉ちゃんの事は忘れよう!私は次の引っ越し先を見つけないといけないんだから」

だけど…。

「はあ~…だけど、お金が…」

思わずテーブルに突っ伏してしまった。家具家電付きのマンスリーマンションは、はっきりって割高だ。早く賃貸物件を探さなくてはいけないのに、なかなか私の条件にあう物件は見つからないし、家具家電…その他もろもろ揃えなくちゃならない。

「会社から前借出来ないかなあ…。新人だから無理かなあ…」

とりあえず、PCを立ち上げて、出勤する時間まで私は物件を探し始めた。


****


 朝、職場に向かう為、人込みにまみれながら駅前の繁華街を歩いていると、すぐ前方に井上君の後姿が見えた。

「あ、おはよー。井上君」

駆け寄って、肩をポンと叩く。

「うわあっ!」

井上君は大げさな悲鳴をあげて振り向いた。

「ど、どうしたの?井上君。そんな大きな声を上げて…」

思わず首を傾げると、井上君は明らかに狼狽えながら・・・。

「ごめんっ!加藤さん!」

「な、何?一体どうしたの?」

「お、俺…いくら酔っていたとはいえ、あんな真似を加藤さんに…」

「え?あんな真似って?」

「え?お、覚えていないの?」

「え?何の事?それよりごめんね。昨夜途中で眠っちゃったみたいでさ」

「…」

並んで歩く井上君は無言で話を聞いている。

「何か失礼な事しちゃったかもしれないからまた今度一緒に飲みなおそう?」

そして井上君の肩をポンポンと叩くと、何故か井上君は頬を真っ赤に染めていた――
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