本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第5章 1 待っていた彼
早いもので私がマンスリーマンションに入居して半月が経過していた。家に置いてあった家具も全て引っ越し業者の人達が運んで、今はトランクルームに収まっている。
「はあ…」
昼休み―
私は持参してきたお弁当を事務所で広げて食事をしながらため息をついた。今、事務所で食事をしている社員は私だけ。他の人達は皆外食に行っている。
「本当にどうしよう…。早いとこ、物件を探さないとお金が…」
ぽつりとつぶやき、家で作って来たおにぎりを口に運んでいるとスマホにメールの知らせの着信が入って来る。
「誰からだろう…?」
スマホをタップして私は目を見開いた。それは隆司さんからだった。
「え?隆司さん…?」
私はメッセージを開いた。
『鈴音、久しぶり。元気にしていたか?また2人で一緒に食事でもしないか?鈴音にとっては迷惑かもしれないが…頼む。会いたいんだ。返事、待ってる』
「隆司さん…」
この時の私は…大分弱っていたのかもしれない。お姉ちゃんに家を出て行くように言われて、追い出され、亮平からは心無い言葉を投げつけられ、挙句に新しい新居は見つからない。
「ちょっとくらい…愚痴を聞いてもらってもいいよね。隆司さんは大人の男性だし…」
私はメッセージを打ち込んだ――
午後9時―
退勤時間になった。今日は遅番なので時間が遅くなってしまった。
「お疲れさまでした」
社員の人達に挨拶をして駅に向かおうとしたとき、井上君に声をかけられた。
「加藤さん、一緒に駅まで帰ろうよ」
「うん、いいよ。帰ろう」
私は笑顔で言うと、井上君も嬉しそうに笑う。一度2人で宅飲みした後、数日は井上君の様子が何となくおかしく、私たちの間で少しギクシャクした空気が流れていたけれども今ではすっかり以前の状態に戻っていた。2人で駅に向かって歩いていると、井上君が尋ねてきた。
「あのさ…加藤さん。その後…どう?」
「どうって…何が?」
歩きながら井上君を見上げた。
「いや、亮平って男から連絡は来てるのかなって…」
「ううん、来てないよ。第一亮平からの連絡は一切着信拒否しているし。それに亮平は私の住んでる場所知らないもの」
「そうか…うん。なら良かった」
井上君は何所か嬉しそうだ。
「え?良かった?」
「いや、何でも無いよ」
そんな会話をしているうちに、もう駅が見えてきた。その時―
「鈴音っ!」
人混みから私を呼ぶ声が聞こえた。
「え…?…」
すると駅の改札付近で手を振るスーツ姿の隆司さんが目に入った。
「た…隆司さん」
「え?隆司さんて…あの…?」
井上君が私を見下ろした。隆司さんは腕を降ろすと、人混みをかき分けるように駆けつけてくる。
「良かった…ここで待っていればひょっとして会えるんじゃないかと思っていたんだけど…。待っていて良かった」
「え…?でもどうしてここで…?」
まさか隆司さんが居るとは思わなかった。
「いや…ほら、今夜は21時にに仕事が終わるってメールをくれただろう?だからここで待っていたんだ」
物凄いことをサラリと言う隆司さんに私は驚いていた。するとその時、隆司さんは隣にいる井上君に気付くと声を掛けてきた。
「ん…?貴方は…?」
「あ、この人は私と同じ旅行代理店の同期なんです」
私が紹介すると、井上君が自分から挨拶した。
「初めまして。井上です」
「初めまして、大川隆司です。鈴音、遅い時間になってしまったけど…これから食事に行かないか?」
隆司さんは優しい声で私に語り掛けて来る。私は隆司さんを見た。
いつ現れるかもしれない私を改札でずっと待っていてくれた元彼…。
「はい、いいですよ?」
返事をすると、隆司さんは笑顔になる。
「良かった。それじゃ、早速行こう」
隆司さんに促され、私は井上君を振り返った。
「それじゃ、井上君。また明日ね」
そして手を振る。
「あ、ああ…また明日」
井上君は私に手を振ったけど…その姿はどこか寂し気に見えた――
「はあ…」
昼休み―
私は持参してきたお弁当を事務所で広げて食事をしながらため息をついた。今、事務所で食事をしている社員は私だけ。他の人達は皆外食に行っている。
「本当にどうしよう…。早いとこ、物件を探さないとお金が…」
ぽつりとつぶやき、家で作って来たおにぎりを口に運んでいるとスマホにメールの知らせの着信が入って来る。
「誰からだろう…?」
スマホをタップして私は目を見開いた。それは隆司さんからだった。
「え?隆司さん…?」
私はメッセージを開いた。
『鈴音、久しぶり。元気にしていたか?また2人で一緒に食事でもしないか?鈴音にとっては迷惑かもしれないが…頼む。会いたいんだ。返事、待ってる』
「隆司さん…」
この時の私は…大分弱っていたのかもしれない。お姉ちゃんに家を出て行くように言われて、追い出され、亮平からは心無い言葉を投げつけられ、挙句に新しい新居は見つからない。
「ちょっとくらい…愚痴を聞いてもらってもいいよね。隆司さんは大人の男性だし…」
私はメッセージを打ち込んだ――
午後9時―
退勤時間になった。今日は遅番なので時間が遅くなってしまった。
「お疲れさまでした」
社員の人達に挨拶をして駅に向かおうとしたとき、井上君に声をかけられた。
「加藤さん、一緒に駅まで帰ろうよ」
「うん、いいよ。帰ろう」
私は笑顔で言うと、井上君も嬉しそうに笑う。一度2人で宅飲みした後、数日は井上君の様子が何となくおかしく、私たちの間で少しギクシャクした空気が流れていたけれども今ではすっかり以前の状態に戻っていた。2人で駅に向かって歩いていると、井上君が尋ねてきた。
「あのさ…加藤さん。その後…どう?」
「どうって…何が?」
歩きながら井上君を見上げた。
「いや、亮平って男から連絡は来てるのかなって…」
「ううん、来てないよ。第一亮平からの連絡は一切着信拒否しているし。それに亮平は私の住んでる場所知らないもの」
「そうか…うん。なら良かった」
井上君は何所か嬉しそうだ。
「え?良かった?」
「いや、何でも無いよ」
そんな会話をしているうちに、もう駅が見えてきた。その時―
「鈴音っ!」
人混みから私を呼ぶ声が聞こえた。
「え…?…」
すると駅の改札付近で手を振るスーツ姿の隆司さんが目に入った。
「た…隆司さん」
「え?隆司さんて…あの…?」
井上君が私を見下ろした。隆司さんは腕を降ろすと、人混みをかき分けるように駆けつけてくる。
「良かった…ここで待っていればひょっとして会えるんじゃないかと思っていたんだけど…。待っていて良かった」
「え…?でもどうしてここで…?」
まさか隆司さんが居るとは思わなかった。
「いや…ほら、今夜は21時にに仕事が終わるってメールをくれただろう?だからここで待っていたんだ」
物凄いことをサラリと言う隆司さんに私は驚いていた。するとその時、隆司さんは隣にいる井上君に気付くと声を掛けてきた。
「ん…?貴方は…?」
「あ、この人は私と同じ旅行代理店の同期なんです」
私が紹介すると、井上君が自分から挨拶した。
「初めまして。井上です」
「初めまして、大川隆司です。鈴音、遅い時間になってしまったけど…これから食事に行かないか?」
隆司さんは優しい声で私に語り掛けて来る。私は隆司さんを見た。
いつ現れるかもしれない私を改札でずっと待っていてくれた元彼…。
「はい、いいですよ?」
返事をすると、隆司さんは笑顔になる。
「良かった。それじゃ、早速行こう」
隆司さんに促され、私は井上君を振り返った。
「それじゃ、井上君。また明日ね」
そして手を振る。
「あ、ああ…また明日」
井上君は私に手を振ったけど…その姿はどこか寂し気に見えた――