本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第5章 2 居酒屋で
「さっきの井上って男と…付き合ってるのか?」
井上君と別れて2人で並んで繁華街を歩き始めるとすぐに隆司さんが尋ねてきた。
「え?まさか!ただの同期仲間ですよ」
「ふ~ん…そうか。鈴音はそういう目で見ているのか。なら安心した」
隆司さんは口元に笑みを浮かべながら私を見下ろす。
「あの…?」
今のはどういう意味なのか尋ねようかと思い、口を開きかけた時。
「鈴音、前回2人で行ったああいう店は俺に遠慮してしまうだろう?そう思って、今夜は居酒屋へ行こうと思っているんだけど…いいか?」
「はい、勿論です。居酒屋…いいですね。私居酒屋大好きです」
「そうか、良かった。なら、さっそく行こう」
「はい!」
そして私は隆司さんに連れられて居酒屋へ向かった。
隆さんが連れてきてくれた居酒屋は北海道をコンセプトにした居酒屋だった。
「いらっしゃいませーっ!!何名様でいらっしゃいますか?!」
ねじり鉢巻きに、紺色のかっぽう着を着た若い男性店員さんがカウンターから声をかけてくる。
「2名でお願いします」
隆司さんは2本指を立てる。
「お座敷がよろしいですか?それともカウンター席がよろしいですか?」
再び店員さんの質問に隆司さんが私に尋ねてきた。
「鈴音はどの席がいい?」
「う~ん…そうですね。ならお座敷で」
「お座敷でお願いします」
「はい!では空いてるお席にご自由にどうぞっ!」
店員さんが示した場所はカウンター席の背後にある畳のお座敷席だった。年季の入った長テーブルは4人掛けになっていてそれぞれ丸い座布団が4枚置かれている。お座敷席は全部で6席あり、すでに2席は埋まっていた。この居酒屋は2階建てになっていて、一番奥のお座敷席の真後ろには階段がある。
「あの一番後ろのお座敷席にしませんか?」
「え…?いいのかい?落ち着かなくないか?階段のすぐ後ろなんて」
「いえ、大丈夫ですよ。それにほら、階段のすぐ後ろって言っても本棚で背後が隠されてるじゃないですか。それに奥の席の方が落ち着くんですよね」
「そうか、鈴音がいいって言うなら、俺はどこの席でも構わないよ。それじゃ座ろうか?」
笑みを浮かべて穏やかに言う隆司さん。
じ~ん…。
思わず胸が熱くなる。本当に優しい人だなあ…。こんな私に親切にしてくれるなんて…。最近つらいことが多すぎたから、人の優しさが身に染みる。
2人で席に着くと、さっそく隆司さんはメニューを差し出してきた。
「ここは前回の店と違って安いから、遠慮なく好きなものを食べたり飲んだりしていいんだぞ?誘ったのは俺だから支払いの心配もするな」
「で、でもそれではあんまりです。そうだ、割り勘!割り勘で行きましょうよ!」
右手で隆司さんの袖をつかむと何故かその手を握りしめられた。
「いいんだ。今夜俺に付き合ってくれた。それだけで俺は十分嬉しいんだ。だからこれは俺からのお礼と思って受け止めてくれ」
熱を込めた目で、右手を強く握りしめられる。
「あ、ありがとうございます…」
俯いて私は返事をした。
北海道をコンセプトにした居酒屋だけあって、このお店はお刺身が充実していた。新鮮なお刺身を口にして、日本酒やサワーを飲んでいると自然に酔いも回ってくる。そして、気づけば私は自分の抱えている賃貸物件についての話になっていた。
「それで…今住んでいるマンスリーマンションは何でも揃ってるんですけど賃貸料がどうしても割高で早々に引っ越ししたいんですけど良い物件が見つからなくて…。家具家電も全部買いそろえるとなるとお金もかかるし…」
「ふ~ん。そうだったのか…。ちっとも知らなかったよ。大丈夫か?」
隆司さんは心配そうに尋ねてくる。
「ええ…正直、困っています。これからどうしようかな…」
グラスを傾け、呟くと隆司さんは少し考えこんでいた。そして……。
「どうだ?鈴音。シェアハウスに住んでみないか?」
「え?シェアハウス…?」
私はじっと隆司さんの顔を見つめた――
井上君と別れて2人で並んで繁華街を歩き始めるとすぐに隆司さんが尋ねてきた。
「え?まさか!ただの同期仲間ですよ」
「ふ~ん…そうか。鈴音はそういう目で見ているのか。なら安心した」
隆司さんは口元に笑みを浮かべながら私を見下ろす。
「あの…?」
今のはどういう意味なのか尋ねようかと思い、口を開きかけた時。
「鈴音、前回2人で行ったああいう店は俺に遠慮してしまうだろう?そう思って、今夜は居酒屋へ行こうと思っているんだけど…いいか?」
「はい、勿論です。居酒屋…いいですね。私居酒屋大好きです」
「そうか、良かった。なら、さっそく行こう」
「はい!」
そして私は隆司さんに連れられて居酒屋へ向かった。
隆さんが連れてきてくれた居酒屋は北海道をコンセプトにした居酒屋だった。
「いらっしゃいませーっ!!何名様でいらっしゃいますか?!」
ねじり鉢巻きに、紺色のかっぽう着を着た若い男性店員さんがカウンターから声をかけてくる。
「2名でお願いします」
隆司さんは2本指を立てる。
「お座敷がよろしいですか?それともカウンター席がよろしいですか?」
再び店員さんの質問に隆司さんが私に尋ねてきた。
「鈴音はどの席がいい?」
「う~ん…そうですね。ならお座敷で」
「お座敷でお願いします」
「はい!では空いてるお席にご自由にどうぞっ!」
店員さんが示した場所はカウンター席の背後にある畳のお座敷席だった。年季の入った長テーブルは4人掛けになっていてそれぞれ丸い座布団が4枚置かれている。お座敷席は全部で6席あり、すでに2席は埋まっていた。この居酒屋は2階建てになっていて、一番奥のお座敷席の真後ろには階段がある。
「あの一番後ろのお座敷席にしませんか?」
「え…?いいのかい?落ち着かなくないか?階段のすぐ後ろなんて」
「いえ、大丈夫ですよ。それにほら、階段のすぐ後ろって言っても本棚で背後が隠されてるじゃないですか。それに奥の席の方が落ち着くんですよね」
「そうか、鈴音がいいって言うなら、俺はどこの席でも構わないよ。それじゃ座ろうか?」
笑みを浮かべて穏やかに言う隆司さん。
じ~ん…。
思わず胸が熱くなる。本当に優しい人だなあ…。こんな私に親切にしてくれるなんて…。最近つらいことが多すぎたから、人の優しさが身に染みる。
2人で席に着くと、さっそく隆司さんはメニューを差し出してきた。
「ここは前回の店と違って安いから、遠慮なく好きなものを食べたり飲んだりしていいんだぞ?誘ったのは俺だから支払いの心配もするな」
「で、でもそれではあんまりです。そうだ、割り勘!割り勘で行きましょうよ!」
右手で隆司さんの袖をつかむと何故かその手を握りしめられた。
「いいんだ。今夜俺に付き合ってくれた。それだけで俺は十分嬉しいんだ。だからこれは俺からのお礼と思って受け止めてくれ」
熱を込めた目で、右手を強く握りしめられる。
「あ、ありがとうございます…」
俯いて私は返事をした。
北海道をコンセプトにした居酒屋だけあって、このお店はお刺身が充実していた。新鮮なお刺身を口にして、日本酒やサワーを飲んでいると自然に酔いも回ってくる。そして、気づけば私は自分の抱えている賃貸物件についての話になっていた。
「それで…今住んでいるマンスリーマンションは何でも揃ってるんですけど賃貸料がどうしても割高で早々に引っ越ししたいんですけど良い物件が見つからなくて…。家具家電も全部買いそろえるとなるとお金もかかるし…」
「ふ~ん。そうだったのか…。ちっとも知らなかったよ。大丈夫か?」
隆司さんは心配そうに尋ねてくる。
「ええ…正直、困っています。これからどうしようかな…」
グラスを傾け、呟くと隆司さんは少し考えこんでいた。そして……。
「どうだ?鈴音。シェアハウスに住んでみないか?」
「え?シェアハウス…?」
私はじっと隆司さんの顔を見つめた――