本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第5章 3 シェアハウスの誘い
「シェアハウス…どんな物件なんですか?戸建てですか?」
梅キューを食べながら隆司さんに尋ねた。
「いやあ…残念ながら戸建てじゃないんだけど、2LDKのマンションなんだ。一部屋余っているんだよ。そのマンションの住人は出張が多くて、週に3日くらいは部屋を空ける。不在がちになることが多いから気を使う必要もない。マンションは新築だし、錦糸町から徒歩5分の好物件。おまけに当然ルームシェアだから家具家電は全部揃っている。ちなみに空いてる部屋は8畳の洋室。南向きだ」
ペラペラと流暢に話す隆司さんをぼんやり見つめながら私は最後まで話を聞いた。
「…で、どうだい?鈴音。この物件…」
「ええ、すごくいいですね。隆司さんて…不動産関係の仕事だったのですか?」
「いや、商社の営業をしている。不動産関係の仕事は…友人で1人いるよ」
言いながら隆司さんはビールをグイッと飲む。
「そうなんですか。その友人の紹介なんですね?」
手元にあったグレープフルーツサワーに手を伸ばしながら尋ねると、何故か隆司さんは俯いてしまった。
「隆司さん…?どうしましたか?」
「もう、正直に言おう。その物件って…俺のマンションなんだ」
「え…えええっ?!」
私は驚いて隆司さんをまじまじと見つめた。隆司さんはバツが悪そうに視線をそらしていたけれども、やがて私の方を振り向くと言った。
「住む場所に困っているんだろう?俺のマンションへ来いよ。遠慮することはない」
「いやいやいや。それはまずいでしょう?だって恋人同士でもないのに……それではまるで同棲……」
そこで、ハッとなった。何故かそこには傷ついた表情を見せる隆司さんの姿があったからだ。
「隆司さん…?」
「確かに今は他人かもしれないが…かつて、俺たちは恋人同士じゃなかったのか?少なくともあの頃の俺はそう思っていたけど…。鈴音はどうなんだ?」
「あ…わ、私は…」
私はどうだった?隆司さんの事…恋人だと思っていたのかな…?確かに付き合っている時はそれなりに深い関係ではあったけれども…。
答えられずにいると、隆司さんは寂し気に笑った。
「大丈夫だ、安心しろ。俺は月の半分は出張でマンションを留守にするんだ。だから誰かが部屋に住んでくれていた方がマンションを維持できて助かるんだよ。俺の部屋に住んでいる限り鈴音はただの居候として住んでくれてればいい。賃料だっていらない。その間にお金を貯めればいいじゃないか?鈴音の引っ越しの目途がつくまでは好きなだけいてくれて構わないから」
隆司さんはじっと私の目を見つめながら言う。だけど…。
「で、でも…それだと隆司さんを都合よく利用するみたいで…」
「なら…俺がマンションにいるときは…鈴音の手料理を食べさせてもらえないか?それでどうだろう?」
「いえ…でも手料理だけなんて…」
「それなら掃除はどうだ?」
「お掃除ですか…」
すると、とうとう隆司さんは頭を下げてきた。
「頼む!俺は予算を割いて、妙な物件に鈴音を住まわせたくはないんだ。ちゃんと安心できる物件じゃないと。それなりの賃貸に住むなら、そこそこお金もかかる。だから鈴音のお金が貯まるまでの間は俺のマンションに住んでくれっ!それに絶対に鈴音と一緒に暮らす間は手を出さないと誓うから…。もう二度とこの間のような真似はしない。お願いだ、鈴音!」
この間の事…おそらく私にキスしてしまった事を言ってるのかも…。
でも…どうしよう。私は頭を下げっぱなしの隆司さんを見た。
この人は…誠実な男性だ…。
「隆司さん…顔、あげてください」
「鈴音…」
隆司さんは顔をあげた。
「それではお金が貯まって引越しの目途が付くまでは…そ、その…お世話になっても宜しいでしょうか…?」
「ああ、勿論」
隆司さんは笑顔で頷いた――
梅キューを食べながら隆司さんに尋ねた。
「いやあ…残念ながら戸建てじゃないんだけど、2LDKのマンションなんだ。一部屋余っているんだよ。そのマンションの住人は出張が多くて、週に3日くらいは部屋を空ける。不在がちになることが多いから気を使う必要もない。マンションは新築だし、錦糸町から徒歩5分の好物件。おまけに当然ルームシェアだから家具家電は全部揃っている。ちなみに空いてる部屋は8畳の洋室。南向きだ」
ペラペラと流暢に話す隆司さんをぼんやり見つめながら私は最後まで話を聞いた。
「…で、どうだい?鈴音。この物件…」
「ええ、すごくいいですね。隆司さんて…不動産関係の仕事だったのですか?」
「いや、商社の営業をしている。不動産関係の仕事は…友人で1人いるよ」
言いながら隆司さんはビールをグイッと飲む。
「そうなんですか。その友人の紹介なんですね?」
手元にあったグレープフルーツサワーに手を伸ばしながら尋ねると、何故か隆司さんは俯いてしまった。
「隆司さん…?どうしましたか?」
「もう、正直に言おう。その物件って…俺のマンションなんだ」
「え…えええっ?!」
私は驚いて隆司さんをまじまじと見つめた。隆司さんはバツが悪そうに視線をそらしていたけれども、やがて私の方を振り向くと言った。
「住む場所に困っているんだろう?俺のマンションへ来いよ。遠慮することはない」
「いやいやいや。それはまずいでしょう?だって恋人同士でもないのに……それではまるで同棲……」
そこで、ハッとなった。何故かそこには傷ついた表情を見せる隆司さんの姿があったからだ。
「隆司さん…?」
「確かに今は他人かもしれないが…かつて、俺たちは恋人同士じゃなかったのか?少なくともあの頃の俺はそう思っていたけど…。鈴音はどうなんだ?」
「あ…わ、私は…」
私はどうだった?隆司さんの事…恋人だと思っていたのかな…?確かに付き合っている時はそれなりに深い関係ではあったけれども…。
答えられずにいると、隆司さんは寂し気に笑った。
「大丈夫だ、安心しろ。俺は月の半分は出張でマンションを留守にするんだ。だから誰かが部屋に住んでくれていた方がマンションを維持できて助かるんだよ。俺の部屋に住んでいる限り鈴音はただの居候として住んでくれてればいい。賃料だっていらない。その間にお金を貯めればいいじゃないか?鈴音の引っ越しの目途がつくまでは好きなだけいてくれて構わないから」
隆司さんはじっと私の目を見つめながら言う。だけど…。
「で、でも…それだと隆司さんを都合よく利用するみたいで…」
「なら…俺がマンションにいるときは…鈴音の手料理を食べさせてもらえないか?それでどうだろう?」
「いえ…でも手料理だけなんて…」
「それなら掃除はどうだ?」
「お掃除ですか…」
すると、とうとう隆司さんは頭を下げてきた。
「頼む!俺は予算を割いて、妙な物件に鈴音を住まわせたくはないんだ。ちゃんと安心できる物件じゃないと。それなりの賃貸に住むなら、そこそこお金もかかる。だから鈴音のお金が貯まるまでの間は俺のマンションに住んでくれっ!それに絶対に鈴音と一緒に暮らす間は手を出さないと誓うから…。もう二度とこの間のような真似はしない。お願いだ、鈴音!」
この間の事…おそらく私にキスしてしまった事を言ってるのかも…。
でも…どうしよう。私は頭を下げっぱなしの隆司さんを見た。
この人は…誠実な男性だ…。
「隆司さん…顔、あげてください」
「鈴音…」
隆司さんは顔をあげた。
「それではお金が貯まって引越しの目途が付くまでは…そ、その…お世話になっても宜しいでしょうか…?」
「ああ、勿論」
隆司さんは笑顔で頷いた――