本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第5章 4 引っ越し
7月の良く晴れた土曜日―
この日、わたしは仕事のお休みを貰って朝から引っ越し作業をしていた。と言っても私が持ってきていた荷物はトランクケースたった2つ分だけ。
「鈴音。本当に荷物これだけしかなかったのか?」
隆司さんがトランクケースを見ると言った。
「はい、お恥ずかしながら…それだけです」
何せ、引っ越し先を決めてすぐにあの家を逃げるように飛び出してしまったから、取る物も取らずに来てしまったのでの荷物が少ないのは当然なのだけど。
「そうか…。それじゃこれから色々買い揃えないといけないな。食器とか…2人でお揃いもいいかもしれないな…」
隆司さんは顔を赤らめながら小声で言ったけど、私にはばっちり聞こえてしまった。う~ん…ひょっとすると隆司さん…私の事同居人としてではなく、同棲相手として見てたりして…。
「アハハハ…まっさかね~」
私は部屋の後片付けをしながら、今の隆司さんの台詞を聞かなかった事にした。
朝6時に起床して、自分の私物を全てトランクケースに詰めて今までお世話になったマンスリーマンションを綺麗に掃除を終えた頃には太陽が真上に昇っていた。
「もうお昼になってしまったみたいだけど…食事はどうする?取り合えず俺のマンションに荷物を置いてから何処かへ食べに行こうか?」
掃除機を片付けている私の元へ戸締りを終えた隆司さんが声をかけてきた。
「そうですねえ…。早めに不動産屋さんにこの部屋の鍵を返したいのでこの部屋の片づけを終えて、隆司さんのマンションへ行った後でもいいですか?」
「よし、それじゃ鈴音の言う通りにしよう」
隆司さんは笑顔で言うと、私のトランクケース2つを軽々と手に持った。
「あ、重いですから私も一つ持ちますよ」
慌てて隆司さんから荷物を受け取ろうとしたけれども、隆司さんは笑顔で答える。
「いいんだよ、女の子には重い荷物、持たせられないからな」
「あ…ありがとうございます」
思わず顔が赤らむ。これだ…隆司さんは2年前と少しも変わらない。私をちゃんと女性扱いしてくれて…だから他の人達よりも長く交際が続いたけど、結局隆司さんから私に別れを告げてきた。だけど私は振られたのに少しも悲しくは無かった。それはやっぱり私が心のどこかで亮平の事を好きだったから…。むしろあの時、隆司さんを傷つけてしまったのは私の方なのに、未だにこんなに親切にしてくれる。それを思うと申し訳ない気持ちで一杯だ。
「よし、それじゃ行こうか?」
荷物を持った隆司さんが振り返った。
「はい。行けます」
私は笑顔で返し…約1カ月お世話になったマンスリーマンションを後にした。
駅から徒歩5分のマンション―
「ほ、本当に…隆司さんはここに住んでるんですか…?」
私は目の前のマンションを呆然と見つめた。
「ああ、そうだけど?どうかしたのか?」
隣に立つ隆司さんが不思議そうな顔で尋ねてくる。
「ど、どうかしたも何も…こ、これってタワーマンションじゃないですかっ!」
「ああ、そうだ。タワーマンションだけど?よし、それじゃ中へ入ろう」
隆司さんは私が気後れしている事に気付かず、ホールに設置してあるオートロックに鍵を指しこむとドアを開けて、私に声をかけた。
「鈴音。どうしたんだ?中へ入らないのか?」
「あ、い、今行きますっ!」
慌てて隆司さんの後に続き、中へ入った。
「俺の部屋は7階にあるんだ。一番角部屋の701号室だから分かりやすいだろう?」
エレベーターホールの前で隆司さんは言う。
「あ…は、はい。そうですね」
私は辺りを見渡し、あまりにも高級感漂うマンションに早くも腰が引けている。一体…家賃いくらなんだろう…。すぐにエレベーターが開き、乗り込むと隆司さんは7のボタンを押した。そしてドアが閉じられると私に話しかけてきた。
「後で一緒に不動産屋へ行って、鍵をもう一つ作ってもらおう」
「はい、お願いします」
すると隆司さんは笑顔で私を見つめる。う…そ、それにしても隆司さんの態度には困る。だって…まるで私を恋人の様に扱うから…。私たちはそんな関係じゃないのに…。
隆司さんは好きなだけ居てくれていいと言ってくれているけど、やっぱり早めにここを出て行こうと心に決めた――
この日、わたしは仕事のお休みを貰って朝から引っ越し作業をしていた。と言っても私が持ってきていた荷物はトランクケースたった2つ分だけ。
「鈴音。本当に荷物これだけしかなかったのか?」
隆司さんがトランクケースを見ると言った。
「はい、お恥ずかしながら…それだけです」
何せ、引っ越し先を決めてすぐにあの家を逃げるように飛び出してしまったから、取る物も取らずに来てしまったのでの荷物が少ないのは当然なのだけど。
「そうか…。それじゃこれから色々買い揃えないといけないな。食器とか…2人でお揃いもいいかもしれないな…」
隆司さんは顔を赤らめながら小声で言ったけど、私にはばっちり聞こえてしまった。う~ん…ひょっとすると隆司さん…私の事同居人としてではなく、同棲相手として見てたりして…。
「アハハハ…まっさかね~」
私は部屋の後片付けをしながら、今の隆司さんの台詞を聞かなかった事にした。
朝6時に起床して、自分の私物を全てトランクケースに詰めて今までお世話になったマンスリーマンションを綺麗に掃除を終えた頃には太陽が真上に昇っていた。
「もうお昼になってしまったみたいだけど…食事はどうする?取り合えず俺のマンションに荷物を置いてから何処かへ食べに行こうか?」
掃除機を片付けている私の元へ戸締りを終えた隆司さんが声をかけてきた。
「そうですねえ…。早めに不動産屋さんにこの部屋の鍵を返したいのでこの部屋の片づけを終えて、隆司さんのマンションへ行った後でもいいですか?」
「よし、それじゃ鈴音の言う通りにしよう」
隆司さんは笑顔で言うと、私のトランクケース2つを軽々と手に持った。
「あ、重いですから私も一つ持ちますよ」
慌てて隆司さんから荷物を受け取ろうとしたけれども、隆司さんは笑顔で答える。
「いいんだよ、女の子には重い荷物、持たせられないからな」
「あ…ありがとうございます」
思わず顔が赤らむ。これだ…隆司さんは2年前と少しも変わらない。私をちゃんと女性扱いしてくれて…だから他の人達よりも長く交際が続いたけど、結局隆司さんから私に別れを告げてきた。だけど私は振られたのに少しも悲しくは無かった。それはやっぱり私が心のどこかで亮平の事を好きだったから…。むしろあの時、隆司さんを傷つけてしまったのは私の方なのに、未だにこんなに親切にしてくれる。それを思うと申し訳ない気持ちで一杯だ。
「よし、それじゃ行こうか?」
荷物を持った隆司さんが振り返った。
「はい。行けます」
私は笑顔で返し…約1カ月お世話になったマンスリーマンションを後にした。
駅から徒歩5分のマンション―
「ほ、本当に…隆司さんはここに住んでるんですか…?」
私は目の前のマンションを呆然と見つめた。
「ああ、そうだけど?どうかしたのか?」
隣に立つ隆司さんが不思議そうな顔で尋ねてくる。
「ど、どうかしたも何も…こ、これってタワーマンションじゃないですかっ!」
「ああ、そうだ。タワーマンションだけど?よし、それじゃ中へ入ろう」
隆司さんは私が気後れしている事に気付かず、ホールに設置してあるオートロックに鍵を指しこむとドアを開けて、私に声をかけた。
「鈴音。どうしたんだ?中へ入らないのか?」
「あ、い、今行きますっ!」
慌てて隆司さんの後に続き、中へ入った。
「俺の部屋は7階にあるんだ。一番角部屋の701号室だから分かりやすいだろう?」
エレベーターホールの前で隆司さんは言う。
「あ…は、はい。そうですね」
私は辺りを見渡し、あまりにも高級感漂うマンションに早くも腰が引けている。一体…家賃いくらなんだろう…。すぐにエレベーターが開き、乗り込むと隆司さんは7のボタンを押した。そしてドアが閉じられると私に話しかけてきた。
「後で一緒に不動産屋へ行って、鍵をもう一つ作ってもらおう」
「はい、お願いします」
すると隆司さんは笑顔で私を見つめる。う…そ、それにしても隆司さんの態度には困る。だって…まるで私を恋人の様に扱うから…。私たちはそんな関係じゃないのに…。
隆司さんは好きなだけ居てくれていいと言ってくれているけど、やっぱり早めにここを出て行こうと心に決めた――