本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第6章 15 来店した客
夕方6時―
そろそろ勤務が終わって退勤時間になりかけたところ・・・・。後部座席で新しい旅行の企画案を考えてみるよう上司から支持されていた私はPCとにらめっこをしていた。するとその時自動ドアの開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませ」
窓口に座っていた女性の先輩が声を掛けた。私もどのようなお客が来たのか確認しようと顔をあげたその時…。
心臓が止まりそうになってしまった。何と入ってきたお客というのは亮平だったのだから。ダウンジャケットにジーンズ。スニーカーを履いた亮平は何故かキョロキョロとあたりを見渡している。
え…?どうして亮平がここに…?ひょっとして…ひょっとしなくても私を探しに来たんだよね…?
頭の中に昨日、電話越しに聞こえてきた亮平とお姉ちゃんのことが頭から離れない。そして何故か目覚めたら隆司さんのベッドに裸でいた私…それらの事で頭が混乱しそうになっている今の私に亮平と会話するなんて到底無理。どうかこのまま帰っててくれないかなあ…。私はPC画面で顔を隠すようにして様子をうかがっていた。
が…。
亮平は窓口の女性先輩に声を掛けた。
「すみません。本日加藤さんという女性社員の方は来てますか?」
なんと、私を名指ししてきたのだっ!
「はい、おりますが…」
「あの、旅行のプラン…その女性に相談したいのですけど」
あああっ!亮平の馬鹿っ!先輩社員を差し置いて新人の私を指名するなんて…っ!
「はい、少々お待ちください」
先輩は立ち上がると私の席へとやってくると言った。
「加藤さん。聞こえていたでしょう?ちゃんと対応してあげてね?」
「は、はい…」
立ち上がるとすぐに亮平と目が遭ってしまった。亮平はじっとこちらを見ているけど…何だか不機嫌そうだった。だけど、ここはお店。そして私は仕事中。今は仕事だと思って割り切るしかない。はあ…でも、今日は井上君がお休みで良かった。彼がいたら何となくもめてしまいそうな気がするから。
亮平の待つカウンターへ行くと、声をかけた。
「いらっしゃいませ、お客様。ではまずお掛け下さい」
亮平に椅子を進めると素直に座ったので、私も向かい側の席に座った。
「では、お客様。どのような旅行をご希望ですか?」
「・・・」
すると亮平は何か言いたげな目で私を見ているが、溜息を一ついた。
「1泊2日で温泉旅行を考えているんです。出来れば年末年始辺りで、もしくはその前後の日程を希望しています。場所は箱根です」
「そうですか。箱根は人気スポットですからね…しかも時期がこのように押し迫っているとなかなか難しいですね。人数はお2人様ですよね?」
きっとお姉ちゃんと行くんだろうな…。ズキリとする胸の痛みを隠し、PCで検索しながら私は尋ねた。
「いえ、3人で行きます」
亮平の言葉にピタリと手が止まる。
「3人…ですか?」
「はい、3人です」
「分かりました…」
なんだ…お姉ちゃんと行くのかと思っていたけど、そうじゃなかったのか。
するとぼそりと亮平が小声で言った。
「お前も行くんだよ、鈴音」
「え?」
そこで私は手を止めた。
「・・・」
「何だ?」
「あの、何か良いプランが見つかり次第、ご連絡させて頂きますから」
「・・・分かったよ、じゃあな」
「ありがとうございました」
亮平は溜息をつくと、お店を出て行った。
「ちょっと、加藤さん。どうしたのよ、お客様帰ってしまったわよ?」
先ほど私と窓口業務を変わった女性先輩が慌ててやってきた。
「いえ、いいんです。ただの冷やかしのお客様でした。私の幼馴染だったんです」
「そう?でも次はちゃんと契約までもっていくのよ?」
「はい、すみませんでした…」
「お疲れさまでした。」
亮平のせいで退勤時間を過ぎてしまった。遅番で店舗に残る社員さんたちに挨拶をすると私は裏口から代理店を出て、繁華街を歩き始めた時…。
「鈴音。待ってたぞ」
そこに立っていたのは亮平だった――
そろそろ勤務が終わって退勤時間になりかけたところ・・・・。後部座席で新しい旅行の企画案を考えてみるよう上司から支持されていた私はPCとにらめっこをしていた。するとその時自動ドアの開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませ」
窓口に座っていた女性の先輩が声を掛けた。私もどのようなお客が来たのか確認しようと顔をあげたその時…。
心臓が止まりそうになってしまった。何と入ってきたお客というのは亮平だったのだから。ダウンジャケットにジーンズ。スニーカーを履いた亮平は何故かキョロキョロとあたりを見渡している。
え…?どうして亮平がここに…?ひょっとして…ひょっとしなくても私を探しに来たんだよね…?
頭の中に昨日、電話越しに聞こえてきた亮平とお姉ちゃんのことが頭から離れない。そして何故か目覚めたら隆司さんのベッドに裸でいた私…それらの事で頭が混乱しそうになっている今の私に亮平と会話するなんて到底無理。どうかこのまま帰っててくれないかなあ…。私はPC画面で顔を隠すようにして様子をうかがっていた。
が…。
亮平は窓口の女性先輩に声を掛けた。
「すみません。本日加藤さんという女性社員の方は来てますか?」
なんと、私を名指ししてきたのだっ!
「はい、おりますが…」
「あの、旅行のプラン…その女性に相談したいのですけど」
あああっ!亮平の馬鹿っ!先輩社員を差し置いて新人の私を指名するなんて…っ!
「はい、少々お待ちください」
先輩は立ち上がると私の席へとやってくると言った。
「加藤さん。聞こえていたでしょう?ちゃんと対応してあげてね?」
「は、はい…」
立ち上がるとすぐに亮平と目が遭ってしまった。亮平はじっとこちらを見ているけど…何だか不機嫌そうだった。だけど、ここはお店。そして私は仕事中。今は仕事だと思って割り切るしかない。はあ…でも、今日は井上君がお休みで良かった。彼がいたら何となくもめてしまいそうな気がするから。
亮平の待つカウンターへ行くと、声をかけた。
「いらっしゃいませ、お客様。ではまずお掛け下さい」
亮平に椅子を進めると素直に座ったので、私も向かい側の席に座った。
「では、お客様。どのような旅行をご希望ですか?」
「・・・」
すると亮平は何か言いたげな目で私を見ているが、溜息を一ついた。
「1泊2日で温泉旅行を考えているんです。出来れば年末年始辺りで、もしくはその前後の日程を希望しています。場所は箱根です」
「そうですか。箱根は人気スポットですからね…しかも時期がこのように押し迫っているとなかなか難しいですね。人数はお2人様ですよね?」
きっとお姉ちゃんと行くんだろうな…。ズキリとする胸の痛みを隠し、PCで検索しながら私は尋ねた。
「いえ、3人で行きます」
亮平の言葉にピタリと手が止まる。
「3人…ですか?」
「はい、3人です」
「分かりました…」
なんだ…お姉ちゃんと行くのかと思っていたけど、そうじゃなかったのか。
するとぼそりと亮平が小声で言った。
「お前も行くんだよ、鈴音」
「え?」
そこで私は手を止めた。
「・・・」
「何だ?」
「あの、何か良いプランが見つかり次第、ご連絡させて頂きますから」
「・・・分かったよ、じゃあな」
「ありがとうございました」
亮平は溜息をつくと、お店を出て行った。
「ちょっと、加藤さん。どうしたのよ、お客様帰ってしまったわよ?」
先ほど私と窓口業務を変わった女性先輩が慌ててやってきた。
「いえ、いいんです。ただの冷やかしのお客様でした。私の幼馴染だったんです」
「そう?でも次はちゃんと契約までもっていくのよ?」
「はい、すみませんでした…」
「お疲れさまでした。」
亮平のせいで退勤時間を過ぎてしまった。遅番で店舗に残る社員さんたちに挨拶をすると私は裏口から代理店を出て、繁華街を歩き始めた時…。
「鈴音。待ってたぞ」
そこに立っていたのは亮平だった――