本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
第6章 16 ファミレス
「亮平…」
ダウンジャケットのポケットに両手を突っ込み、クリスマスツリーの傍で立つ亮平は何だか不機嫌そうだった。だけど、私だって今日はとても疲れている。疲れている上に苛立っている亮平を相手になんかしたくない。
「ごめん亮平。私、今日は疲れていてすぐに帰りたいんだ…」
そして亮平のそばを通り抜けようとした時。
「そうか、そんなにすぐにあの男の元へ帰りたいのか?やっぱりあいつは鈴音の恋人なんだろう?」
何故か棘のあるその言い方に私はカチンと来てしまった。
「あのねえ…あの人は確かに2年前は恋人だったけど、今はそんなんじゃないからね?隆司さんは親切で置いてくれているんだから。それに疲れているのは本当の話。」
でも…昨夜はついうっかり身体の関係を持ってしまったけど…あれは不可抗力だもの。
「何が親切だよ。赤の他人である男が何の見返りもなく元カノと暮らすはずないだろう?とにかく今は俺に付き合えよ。忍の事で大事な話があるんだよ。疲れているんなら何か甘いものご馳走してやるから」
そして亮平は私の右袖を掴むと歩き出した。
「ねえ…何処へ行くのよ」
亮平に腕を引かれながら尋ねた。
「まあ…とりあえずはファミレスでいいだろう?ドリンクメニューの品揃えも多いしな」
「ファミレスか…」
どうせならもっとムードのあるお店を選んでくれればいいのに…。
「何だよ、ファミレスじゃ不満か?俺が奢ってやるんだから贅沢言うな」
振り返ると、私を睨んできた。
「はいはい」
別に奢ってもらわなくてもいいんだけどな。でもここでまた余計な事を言えばますます亮平が機嫌を損ねるかもしれないし…。だから私はもう黙って従う事にした。
「お、ここなんかいいんじゃないか?」
亮平が足を止めたのは安くて美味しいイタリアン料理がメインのファミレスだった。ここはフードがメインなので、ドリンク類はあまり種類は多くない。
「え?ちょっと待って。私食事するなんて一言も…」
「いいから、行くぞ」
亮平は私の意見を聞きもせずにさっさと店内へと入ってしまった。
「全く…」
溜息を一つつくと、私は亮平の後を追って店内へと足を踏み入れた。
「鈴音。早く座れよ」
店の中には既に窓際の4人掛けソファのテーブル席に着席している亮平の姿があった。
「もう…本当に強引なんだから…」
だけど、亮平と2人きりでファミレスに来るなんて高校生以来だ。何となく口では文句を言いながらも、心が弾んでいる自分がいた。そんな私の様子に気付いたのか、亮平が笑った。
「何だよ、鈴音。お前、やっぱりここのファミレスに来たかったんだろう?」
「え?ど、どうしてそんなふうに思うの?」
椅子に腰かけながら私は尋ねた。
「だってすごく嬉しそうにしているからさ。ほら。遠慮せずに好きなものを頼めよ」
「・・・」
私は亮平の顔を見た。
「・・・何だよ?」
「ううん…べっつに」
きっと亮平は一生私の気持ちに気付かないんだろうな。でも気づかれても困るんだけどね。
「それじゃ私はホットココアでいいよ」
メニューを見ないで亮平に告げると、また亮平は不機嫌な顔を見せた。
「お前なあ…何だよ。人が折角おごってやるって言ってるのにココアだけなんて…」
「だって今日は日曜日でしょう?だから…」
そこまで言いかけて私は口を閉ざした。しまった…疲れすぎていたから頭も良く回らなかったんだ。土日は隆司さんと2人で夜ご飯を食べる約束をしているって事…危うく口走りそうになってしまった。
「何だよ?日曜だと何かあるのか?あ…鈴音。お前、やっぱり…」
亮平がそこまで言いかけた時、私のスマホが鳴った。
慌ててチラリとスマホを見ると着信相手は言うまでも無く、隆司さんからだった――
ダウンジャケットのポケットに両手を突っ込み、クリスマスツリーの傍で立つ亮平は何だか不機嫌そうだった。だけど、私だって今日はとても疲れている。疲れている上に苛立っている亮平を相手になんかしたくない。
「ごめん亮平。私、今日は疲れていてすぐに帰りたいんだ…」
そして亮平のそばを通り抜けようとした時。
「そうか、そんなにすぐにあの男の元へ帰りたいのか?やっぱりあいつは鈴音の恋人なんだろう?」
何故か棘のあるその言い方に私はカチンと来てしまった。
「あのねえ…あの人は確かに2年前は恋人だったけど、今はそんなんじゃないからね?隆司さんは親切で置いてくれているんだから。それに疲れているのは本当の話。」
でも…昨夜はついうっかり身体の関係を持ってしまったけど…あれは不可抗力だもの。
「何が親切だよ。赤の他人である男が何の見返りもなく元カノと暮らすはずないだろう?とにかく今は俺に付き合えよ。忍の事で大事な話があるんだよ。疲れているんなら何か甘いものご馳走してやるから」
そして亮平は私の右袖を掴むと歩き出した。
「ねえ…何処へ行くのよ」
亮平に腕を引かれながら尋ねた。
「まあ…とりあえずはファミレスでいいだろう?ドリンクメニューの品揃えも多いしな」
「ファミレスか…」
どうせならもっとムードのあるお店を選んでくれればいいのに…。
「何だよ、ファミレスじゃ不満か?俺が奢ってやるんだから贅沢言うな」
振り返ると、私を睨んできた。
「はいはい」
別に奢ってもらわなくてもいいんだけどな。でもここでまた余計な事を言えばますます亮平が機嫌を損ねるかもしれないし…。だから私はもう黙って従う事にした。
「お、ここなんかいいんじゃないか?」
亮平が足を止めたのは安くて美味しいイタリアン料理がメインのファミレスだった。ここはフードがメインなので、ドリンク類はあまり種類は多くない。
「え?ちょっと待って。私食事するなんて一言も…」
「いいから、行くぞ」
亮平は私の意見を聞きもせずにさっさと店内へと入ってしまった。
「全く…」
溜息を一つつくと、私は亮平の後を追って店内へと足を踏み入れた。
「鈴音。早く座れよ」
店の中には既に窓際の4人掛けソファのテーブル席に着席している亮平の姿があった。
「もう…本当に強引なんだから…」
だけど、亮平と2人きりでファミレスに来るなんて高校生以来だ。何となく口では文句を言いながらも、心が弾んでいる自分がいた。そんな私の様子に気付いたのか、亮平が笑った。
「何だよ、鈴音。お前、やっぱりここのファミレスに来たかったんだろう?」
「え?ど、どうしてそんなふうに思うの?」
椅子に腰かけながら私は尋ねた。
「だってすごく嬉しそうにしているからさ。ほら。遠慮せずに好きなものを頼めよ」
「・・・」
私は亮平の顔を見た。
「・・・何だよ?」
「ううん…べっつに」
きっと亮平は一生私の気持ちに気付かないんだろうな。でも気づかれても困るんだけどね。
「それじゃ私はホットココアでいいよ」
メニューを見ないで亮平に告げると、また亮平は不機嫌な顔を見せた。
「お前なあ…何だよ。人が折角おごってやるって言ってるのにココアだけなんて…」
「だって今日は日曜日でしょう?だから…」
そこまで言いかけて私は口を閉ざした。しまった…疲れすぎていたから頭も良く回らなかったんだ。土日は隆司さんと2人で夜ご飯を食べる約束をしているって事…危うく口走りそうになってしまった。
「何だよ?日曜だと何かあるのか?あ…鈴音。お前、やっぱり…」
亮平がそこまで言いかけた時、私のスマホが鳴った。
慌ててチラリとスマホを見ると着信相手は言うまでも無く、隆司さんからだった――