本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

第6章 18 修羅場?の3人

「お前…!」

隆司さんは亮平を見ると眉を吊り上げて睨みつけた。そしてすぐに私の傍へ来ると椅子に座る間もなく私の右腕を掴んだ。

「鈴音、帰ろう。俺たちの部屋へ。こんな男の言う事、聞く必要なんかない」

そして無理に立たせようとした。こんな強引な隆司さんを私は知らない。

「ま、待って。隆司さん…今お姉ちゃんの事で話があるって…」

すると亮平が腕組みしながら隆司さんを見た。

「落ち着けよ。鈴音が嫌がってるだろう?とにかく座って話をしないか?他の客に見られてるぞ?」

珍しく落ち着いた態度の亮平。

「・・・」

隆司さんは黙って上着を脱ぐと私の隣に座った。

「お前だろう?何度も何度も鈴音を苦しめてきたのは」

隆司さんは低い声で亮平に尋ねた。

「苦しめた?俺が?いつ鈴音を苦しめてきたって言うんだよ?」

亮平は身を乗り出してきた。

「自分で何の自覚も無いんだな?いつだって自分の都合の良いように鈴音を振り回して、傷つけて…」

「俺はな、20年間鈴音と幼馴染やってきたんだ。お前に俺たちの何が分かるって言うんだよ」

亮平は怒気の含んだ声で隆司さんを睨みつける。

「年数なんか関係ない。お前なんかより俺と鈴音の方が余程深い関係だ。何せ俺たちはかつては恋人同士だったんだからな。そして俺は…今も鈴音の事が好きだ。」

「「えっ?!」」

私と亮平は同時に隆司さんの顔を見た。すると隆司さんは私の方を振り向く。

「鈴音。まさかこの男と一緒に家に帰るつもりじゃないよな?帰ったっていいように利用されるだけだ。俺は…鈴音と結婚を考えてるんだ」

「何だってっ?!結婚だって?!」

何故か言われた私よりも亮平の方が驚いている。顔色が見る見るうちに真っ青になって行くのが見て取れた。

「た、隆司さん…」

私はすっかりうろたえてしまった。

「鈴音…愛してる。俺と結婚してくれ。必ず幸せにするから…!」

隆司さんは私の右手を取ると熱い視線で見つめてきた。そんな…今まで一度もそんな素振りを見せたことが無かったのに…どうしてこんな時に・・・?よりもにもよって亮平の前でそんな話を?も、もしかして昨夜の事がきっかけだったの…?

すると亮平が脇から口を挟んできた。

「鈴音っ!そんな男の言葉信用するなっ!この男はな、鈴音が人のいいところを利用して、お前が断れないような状況を作り出したうえでプロポーズしてるんだ。こんな卑怯な真似をするような男に鈴音を渡せるはずないだろう?!」

「亮平…」

どうしてそんな言い方するの?そんな言い方されたら、亮平は私に気があるのではないかと勘違いしてしまいそうになる。

「お前、ひょっとして鈴音の事が好きなのか?だからそんな言い方をして俺から鈴音を引き離そうとしてるんじゃないのか?」

「俺が?鈴音を好きだって?それは違うな。何故なら俺には大切な恋人がいるからな。その恋人の妹が鈴音なんだ。幼馴染でもあり恋人の妹ともなれば鈴音を心配するのが当然だろう?大体、元カノの関係で鈴音の弱い立場を利用して自分のマンションに囲い込むなんて…とんでもない男だ」

大切な恋人…。そのうえ、囲い込むなんて言い方して…。亮平の言葉に胸がズキリと痛む。

「なっ…!囲い込むだって…っ?!」

これにはさすがの隆司さんも我慢できないようだった。

「おい!誰が鈴音を囲い込んだって言うんだっ?!」

「うるさいっ!さっきだって強引に連れ去ろうとしただろう?!」

2人の喧嘩腰の口調にもう私は我慢できなくなった。

「お、お願い!もうやめてっ!」

すると2人が一斉に私を見た。

「お願い…もうやめて…」

俯きながら私の声が震えてしまう。そうだ…私が全ていけないんだ。いつまでもあきらめきれず亮平を思い続けて、元カレの家に図々しくも同居させて貰って…そのせいで隆司さんを勘違いさせてしまったのも全て私の責任…

「「鈴音…」」

2人が心配そうに私を見た時…突然亮平のスマホに着信が入ってきた。亮平はスマホを見ると、声を上げた。

「え?し、忍っ?!」

え…?お姉ちゃん…?

「もしもし、どうした?忍。…え?何だって?助けてって…おい!忍っ!返事をしてくれっ!」

しかし、その後お姉ちゃんからは応対が無いのか、亮平は真っ青になってスマホをにぎりしめていた。

「亮平…お姉ちゃん、どうかしたの?」

すると突然亮平はハッとした顔になる。

「頼むっ!鈴音っ!俺と一緒に来てくれっ!忍さんが…っ!」

すると隆司さんが反対した。

「駄目だ、行くことはない、鈴音。また…2人に利用されるぞ?」

そして再び私の腕を握り締めてくる。

「隆司さん…。わ、私は…」

すると苦し気に亮平が頭を下げてきた。

「鈴音…頼む。一緒に来てくれ。今の忍の状況をお前に見て欲しいんだ…」

「亮平…」

信じられなかった、こんな亮平を見るのは初めてだった――
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