溺愛は復讐の始まり
私は涙を拭いて、スッと立ち上がった。

「副社長の三上を呼んで。」

「どうなさるのですか?」

渡辺が淡々と尋ねる。

「会社の今後の事を、話合うのよ。」


その時だった。

「その必要はないね。」

聞いた事のない男の声。

振り向くと、私よりも年下の男が、黒いスーツで近づいて来た。

「初めまして、姉さん。」

「姉さん?私、弟はいないけれど?」

よく見ると、写真で見たパパの若い頃に似ている。


「渡辺さん、まだ話してないの?」

「申し訳ございません、旦那様。」

私は渡辺を見た。

あのパパを大事にしてきた渡辺が、パパ以外の人を旦那様と呼んだ?

「どういう事?」

すると男の代わりに渡辺が、口を開いた。

「新しくこの家と会社を継がれる英様でいらっしゃいます。」
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