君のスガタ
「あー、あー、ふぅ」

 私は一人で歩きながら、上を見上げたり、下を向いたりした。

「柚」

 どこから出てきたのかきよしが私に声をかけてきた。

「きよし」

 私は後ろからきよしに仏頂面で聞かれた。

「どうしたの?」

「いや……別になにもないよ」

「……っなんかあっただろう?」

 きよしは上を見上げると、そこには松永先輩が見ていた。

 松永先輩はこちらに気づいていない。

 きよしは確信したかのようにどこかを見つめていた。

「大丈夫…。あ、きよし。これ見ようよ」

 私は作り笑顔できよしに言う。

「柚さ、松永先輩に言われたんでしょ。隠さなくていいから」

 きよしは柚の表情が気になっていた。

 無理して笑って、きよしに話しかけてきた。

「柚」

 急にきよしに左手を握られた。

「な、なに」

 私は目を丸くした。

 急に手を握るなら、私に一言言ってからにしてほしい。

 ほんと、心臓に悪い。

「僕は柚の味方だから。それだけは分かってほしい。僕の気持ちが伝わっていなかったとしても、僕は柚が柚なりに過ごしてもらいたいから」

 きよしは必死に私のことを心配してくれる。

 いい奴だな、きよし。
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