君のスガタ
「ありがとう。きよし。本当にいい奴だね。私、頑張ってみようかな」

 私はきよしに勇気づけられた。

 きよしは不機嫌そうに口を膨らませて、プイとどこかに向けていた。

 松永先輩は私に好意を持ってくれるだけで充分じゃないか。

恋愛対象になってほしいんじゃないと思う。それは、違う。

 そんな特別な感情を持ったら、ダメな気がする。松永先輩に恋心を抱いてはいけないと思うから。多分。

 本人から聞いた訳じゃないから、松永先輩の本心かはわからない。

 自分に言い聞かせた。

 本当はこの感情を知りたい。

 私は学園祭が終盤に差し掛かると、めぐみと一緒に盛り上がった。

 キャンプファイヤーの時に告白すると、一つの願い事が叶うというものはしなかった。

 したとしても、意味がなかったから。

 松永先輩と私の関係は先輩と後輩の関係性から上のステップにはならないことがわかった。

 それが分かったからって、私になにも得るものはないのに。

 本当は叶うとしたら、なにがあっただろうか。

部活のことは必ず願いたい。

でも、それと同時に松永先輩のことを知りたいって気持ちがある。

 めぐみと話をして、笑った。

松永先輩とは何事もなかったみたいに。

 暑い夏が終わって、学校全体は楽しい熱を浴びながら、キャンプファイヤーの炎がぼやぼやと包みこむような優しさで燃えていた。
 
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