君のスガタ
「どうって。レシーブもパスも練習した成果でていてよかった。柚らしいスポーツで俺は見ていてすっきりしたよ」

 試合の時に松永先輩がどういう風に私を見ていたのか想像がついた。

 前の方でてすりに頬杖をついて、笑顔で私を見ていた気がする。独り言のように柚頑張れって。

 この人は良くも悪くも素直で、目が離せない。彼は自分のことになると、やけにネガティブになる。

「…ありがとう」

 私は礼をして、またコップを持ち、コーヒーを飲む。

 松永先輩はコーヒーの中身の方に目を向けて、にこやかに笑みを浮かべていた。

「…柚はさ、負けず嫌いだよね」

「そうですね、負けず嫌いではあります。私、聞きたかったんですけど、松永先輩と私って本当に前に会ったことあるんですよね」
 前からずっと聞きたかった。

 会ったような言いぶりやまだ関係性が構築していないのに何かを知っているような感じがした。

「…ないよ。なんでそう思ったの?」

 コップをテーブルに置いて、え? そうなのとまばたきをしてから、私を見た。

 本当にそうなのか。嘘をついているのかさえ思えた。この前聞いてきたことは幻だったのか。
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